Image: 特高需要家構内系統における抵抗接地方式

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ここでは特高需要家構内で用いられる10Aクラスの抵抗接地方式について考えてみる。

※この記事は興味本位から調べて書いたものであり、恐らく正確性を欠いています。

10Aクラス(5A~30A)接地系の設備構成

特高需要家構内系統における地絡保護方式はトップの画像にある通りになる。40年前の古い文献なのでGPT=接地型計器用変圧器とあるが、現在はEVTと呼ぶことが多いので、以下EVTとする。昔は計器用変圧器のことをPT (Potential Transformer) と呼んでいたが、今はVT (Voltage Transformer) と呼ばれることが多い気がする。PDも同様。

受電側の保護方式は高圧需要家と同様、上位系統の送配電事業者との協調を要する。構内側は変圧器により零相回路が分離されるため、EVTを設置して独自の方式をとることが可能。通常は非接地方式をとるが、広域構内を持つ需要家では抵抗接地系とする場合がある。

100A接地系は特高送配電網と同様に、母線の中性点を中性点接地抵抗器 (NGR) で接地して各フィーダはOCGで地絡を検出している。理屈は上で述べた高抵抗接地方式と同じなので、この節では考慮しないことにする。

10A接地系は接地変圧器 (GTr) の二次側をオープンデルタ(Δ)として、開路した箇所に制限抵抗器 (CLR) を挿入している。この抵抗値0.955ΩをGTrの一次側に換算すると、

$$ R_n = \frac{n^2}{9}r_n = \frac{1}{9} \cdot ( \frac{\frac{6600}{\sqrt{3}}}{\frac{190}{3}} )^{2} \cdot 0.955 = 384 \; \mathrm{[\Omega]} $$

※一次側換算時の等価中性点抵抗の公式や算出方法については次が詳しい。

1線地絡計算 | 電験3種「理論」最速合格
https://lese1026.xsrv.jp/2019/01/29/1sentiraku/

Image: 配電系統 抵抗接地方式

Image: 一線地絡時の等価回路

一線地絡の等価回路から静電容量 C (上図ではC1+C2) と接地点抵抗 Rg を無視すると、一線地絡電流は約10Aとなる。

$$ I_g = \frac{V}{\sqrt{3}} \cdot \frac{1}{R_n} = \frac{6600}{\sqrt{3}} \cdot \frac{1}{384} = 9.92 \; \mathrm{[A]} $$

実際は10A接地系の充電電流は無視できないほど大きく、一線地絡電流はこれより多少大きくなる(前回記事を参照)。

トップの図では地絡方向継電器 (DG) を67、地絡過電圧継電器 (OVG) を64としている(JEM-1093 交流変電所用自動制御器具番号)。誘導型(アナログ)継電器の中でもDGは特に感度が高いことから、外部からの機械的衝撃で接点が閉路することがあるので、昔はOVGと併用された。現在はデジタルが主流なのでその影響を考える必要はないが、OVGとAND条件を組めるマルチリレーは存在する。

設置スペースやコスト節約の観点からGTrやCLRは30秒または60秒定格の容量になっている。万が一地絡電流がそれ以上継続して流れると、GTr中性点接地線の電流を監視するOCGが動作し、その上位にある遮断器 (CB) をトリップさせてGTrを母線から切り離す。

NGRとCLRはどう違うのかという話だが、NGRは数百Aという大電流に耐える通電・放熱能力と高電圧に耐える絶縁能力を備える必要があり、大がかりな装置になる。一方、CLRはそれ自体は20W形蛍光灯くらいの大きさの抵抗器が並列に数個繋がったもので、放熱器も小型で、それほど場所を取らない。これとは別にGTrが必要になるが、これは数十kVAの比較的小型の変圧器になる。

10Aクラス(5A~30A)接地系の意義

非接地系ではなくこれらを採用する利点は何だろう。文献1には次の場合が挙げられている。

  1. ケーブルの各相対地容量にアンバランスがあり、常時零相残留電が大きい場合
  2. 保護器が電動機などで起動電流による零相変流器残留電流による誤動作防止(起動中の他回線地絡時)
  3. 構内系統の構成上接地型計器用変圧器の多重設置が必要な系統
  4. 非接地系より更に高信頼度を求める場合

下図は地絡抵抗別に地絡電流をプロットしている。青は非接地系(Rn=8000Ω)で橙は10A接地系(Rn=382Ω)。

Image: 地絡抵抗別零相電流

非接地系では800Ω以下 (2A以上) あたりから地絡電流の伸びが悪くなる。一方、10A接地系では完全地絡(10A)まで順調に上昇している。ZCT残留電流が大きくて継電器のタップを高めに整定する場合、10A接地系の方が信頼できる。ただ、地絡電流に対して残留電流がそこまで大きくなることがあるのか疑問がある。

ところで、この直前に零相電圧の影響について書かれている。「充電電流の影響が大きい非接地系統では、ケーブル対地容量による検出感度の変動分を確認し、場合によっては静止型の高感度型継電方式とする必要がある。」とあるのだが、これは当時の誘導型(アナログ)継電器では検出精度に不安があるので静止型(トランジスタ回路)が望ましいという話であって、接地方式を10A接地や100A接地にしたところで改善されるわけではないと思う。

1から4のどの理由も決め手に欠けるというか、ピンとこない。数少ない文献の中で色々調べているうちに、別の答えを見つけた。以下、文献4より。

GTRは,EVTと同様に特別高圧受変電設備の高圧側に使用され,二次側をオープンΔ結線して,開路した箇所に制限抵抗器が接続されています。空港施設や大規模な工場・プラントなどでは,高圧配電線に使用される高圧ケーブル亘長が長い場合もあり,ケーブルの静電容量に起因する対地充電電流が大きくなることから,EVTを用いるとEVTの定格容量不足となるおそれがあります。このため一線地絡時に大きな地絡電流が流れることになり,異常電圧の発生やEVTの焼損事故などに至るおそれがあるので,一線地絡時に比較的大きな地絡電流を供給できるようGTRが用いられます。

つまり、系統の対地充電電流が大きいと一線地絡時にEVTに大きな地絡電流が流れ、絶縁破壊を起こす恐れがあるため、比較的低抵抗のGTrを並列に接地して分流させることで、EVTに大電流が流れることを防いでいるようだ。上の等価回路で言うと、C1, C2, Rnに対して並列にEVTの中性点接地抵抗(実際は三次巻線のCLRで、一次側換算で数kΩ以上)が接続されていることになる。

EVTの定格容量とは何だろうか。東芝の参考資料によれば、EVTの三次負担は3×200VAとなっているが、これが関係あるだろうか。また、主回路の雷サージや二次側の過負荷などで高圧巻線が絶縁破壊した時の保護のため、一次側にヒューズが付いているタイプがあるとなっている。ヒューズの定格電流は1Aとなっている。

前ページの一次側換算時等価中性点抵抗の算出方法から、EVT一次側の各相には中性点電流の1/3の電流が流れることになる。言い換えると、中性点電流に3A以上が流れるとEVT一次側各相のヒューズ定格電流1Aを超えてしまう。中性点電流が最大3Aになるような対地静電容量は、60Hzの場合、4μFくらいになる(計算は地絡点抵抗が絡んで複雑なので省略)。これはCVT 100sqで亘長3kmに相当する。10A接地系にすれば、EVTに流れる電流を0.5A以下に抑えることができる。

参考文献

トップ画像は文献2より。文中の画像は文献1より。グラフ画像は自作。

  1. 中山 敬造(編)『最新制御システムシリーズ 第6巻 保護継電システム』, 電気書院, 1974年.
  2. 宮川 義夫, 市川 博昭『産業用受変電設備の保護方式』, 日立評論, Vol.57, No.7, 1975年, pp.33-36.
  3. 『モールド形 東芝計器用変成器』, 東芝産業機器システム, 2019年, pp.41-46.
  4. 接地形計器用変圧器(EVT)と接地変圧器(GTR)の違いを教えて下さい。 - 連載 FAQ』, 電気設備学会誌, Vol.36, No.5, 2016年.

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