Image: 各種抵抗接地方式と地絡保護

この1週間この事ばかり考えていたんだけど、思った以上に資料が少なくて自分の理解が進まなかった。

栄の丸善で電力関係の書籍は一通り目を通したけども、ほとんどは高圧受電に関する本で、送配電会社の高圧配電系統では一般的に非接地方式がとられるので、これとの連系の話が多かった。抵抗接地方式となると特高の送配電分野の話になる。これに関しては電験二種の本に載っているような概要程度で、具体的な解説や例が全然出てこない。数十冊読んだ本の中で1冊だけ「100A接地系」という単語が出てきたが、これも本当に「そういう方式もある」という程度の話だけで、単語だけ出して説明にはなっていない。保護継電器に関する本でようやく他より具体的な説明が出てくるものの、1・2ページほどしか触れられていないことと、そういった保護継電器をメインに取り上げた本が数冊しかない(専門書と言って差し支えないマニアックな分野)ので、私が理解するには不十分だった。

各種抵抗接地方式

Image: 抵抗接地方式

抵抗接地関係の話では「○○A接地系」という言葉が出てくるが、あまりにも解説がなさ過ぎて、まずその意味を知るところから苦労した。いくつかの文献を読んで分かったことは、この「○○A」は一線完全地絡電流を意味するらしい。100A接地系であれば、一線完全地絡時に100Aの地絡電流が流れるよう中性点接地抵抗器 (NGR) の値を設定している。

抵抗接地方式は低抵抗接地方式と高抵抗接地方式に分けられる。何アンペアを境に区別するかは文献によって差があり、数字による絶対的な区分はないようだが、一説では低抵抗接地方式は400A以上、高抵抗接地方式は100Aから300A(高圧では5Aや10Aなど)に制限される。ただ、数字による区分は電圧階級などの環境によっても左右するので、それよりもその性質・特徴を押さえて見るべき。

低抵抗接地方式

低抵抗接地方式における一線完全地絡電流(地絡電流の最大値)は系統の計器用変流器 (CT) の一次側定格電流に近いアンペア数になるよう設計されている。ただ、事故時に送電線を併走する通信線に電磁誘導障害を引き起こすため、日本ではあまり採用されていない。

高抵抗接地方式

高抵抗接地方式は地絡電流を充電電流と同等か少し大きい程度になるよう制限し、誘導障害や事故点から離れた場所でのフェランチ効果による電圧上昇を抑制している。

都市部の地中送電網など静電容量が特に大きい系統では、NGRで電流を制限しても静電容量分の電流が大きいため、地絡時に過渡的な突入電流が流れるほか、誘導障害やフェランチ効果などの異常現象の影響が大きくなる。これを軽減するため、NGRと並列に補償リアクトルを設置し、地絡電流中の充電電流をリアクトルの遅れ電流で相殺している。

高抵抗接地方式の中でも特に抵抗値が高いものに関しては非接地方式と同様の性質を持つ。非接地方式自体、非接地と言いながらも実際はEVTで4kΩ以上の高い抵抗値で接地している。

消弧リアクトル接地方式 (PC接地)

消弧リアクトル接地方式は中性点をリアクトル単独で接地して地絡アークを消弧する方式。発明者の名前 Petersen とリアクトル (Coil) から「PC接地」とも呼ばれる。地絡電流は最も小さくなるが、一線地絡事故が継続すると健全相の対地電圧が√3倍に上昇する欠点があるので、抵抗接地方式に切り替えられるようにしている。つまり、NGRを並列に接続して遮断器で投入または開放できるようにしている。

高抵抗接地方式における地絡保護

Image: 配電系統 抵抗接地方式

Image: 一線地絡時の等価回路

100A以上の抵抗接地系統における地絡保護には地絡過電流継電器 (OCG) が使用される。線路の充電電流が相対的に十分小さい場合、一線完全地絡電流 (Ig) は対地電圧をNGRの抵抗値 (Rn) で割るだけの簡単な計算になる。また、不完全地絡として地絡点に抵抗 (Rg) が生じてもRnとRgの直列抵抗になるだけなので、一線地絡電流の計算は単純な式になる。

$$ I_g = \frac{V}{\sqrt{3}} \cdot \frac{1}{R_n + R_g} \; \mathrm{[A]} $$

非接地系や10A接地系など、線路の充電電流が無視できないレベルになると、NGRのコンダクタンス (1/Rn) と線路の対地静電容量によるサセプタンス (jωC) の並列回路で考えて、一線完全地絡電流はNGR (Rn) による有効分電流ベクトルと線路の充電電流ベクトルとの合成ベクトルになる。不完全地絡であれば直列の地絡点抵抗 (Rg) も考えなければならない。

Image: 零相電圧と地絡電流のベクトル関係

$$ \dot{I_g} = \frac{V}{\sqrt{3}} \cdot \frac{1}{R_g + \frac{1}{\frac{1}{R_n} + j \omega C}} \; \mathrm{[A]} $$

他回線地絡時に自回線の充電電流がZCTを流れるため、OCGでは選択遮断(事故点を判別してその系統のみを遮断すること)が難しくなる。そのため、10A接地系や非接地系では地絡方向継電器 (DG) が使われる。

次 →特高受変電設備における抵抗接地方式 - Diary on wind

参考文献

トップ画像は文献3より。文中画像は文献1より。

  1. 中山 敬造(編)『最新制御システムシリーズ 第6巻 保護継電システム』, 電気書院, 1974年.
  2. 林 武志『保護継電器読本(第3版)』, オーム社, 2004年.
  3. Choong-Koo Chang, Full article: Optimal neutral ground resistor rating of the medium voltage systems in power generating stations, Journal of International Council on Electrical Engineering Volume 5, Issue 1, 2015.
  4. Neutral Earthing Resistor - Post Glover Registers https://www.postglover.com/neutral-earthing-resistor/

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