近々、2種電気主任免状取得に向けた面談があるので、何か知識をつけておこうという試み。

オフィスビルやホテル、複合商業施設などで受変電設備が地上階に設けられるようになったのはここ10年くらいの話で、2000年代以前に建てられた建物の図面を見ると、受変電室はだいたい地下か屋上に施設されている。これはなぜだろう。

建築計画において有効スペースの利用価値を追求すると、機械室や電気室は地下駐車場やバックヤードの端に配置されるのは当然だ。例えばデパートなら、地下1階に食品売り場、1階や2階にハイブランドショップ、最上階に催事売り場や飲食街が配置されるが、これは客の動線や購買心理を考えた結果だろう。その延長で考えると機械室は優先度が一番低い。

現在、防災と言えば火災、地震だけでなく、津波、台風、洪水、落雷などあらゆる自然災害、場合によってはテロなどその他の脅威までも対象に意識されるが、建築でこれらへ配慮するようになったのはBCP(事業継続計画)意識の高まりによる影響が大きいのだろう。

日本では1960年代から70年代は火災対策、1980年代から90年代は地震対策への技術開発が進んだ。水害対策については、オンラインシステムの中枢やデータセンターなど重要な情報設備を置くところでは床の高上げなどを考慮する場合があったが、基本的には行政の地域的な治水事業任せだった。BCPが注目されるようになったのは2000年代中期。2001年の同時多発テロや2003年の北米東部における大規模停電をきっかけに、米国の銀行業界を中心にBCPへの関心が高まり、日本でも情報産業やインフラ分野で注目されるようになった。

2008年には総務省から「地方公共団体におけるICT部門の業務継続計画(BCP)策定に関するガイドライン」が公開された。これはあくまでICT部門を対象にした資料になっている。

「地方公共団体ICT部門用BCPガイドライン」公表|リスク管理Navi [コラム]

本当にBCP意識が浸透してきたのは、やはり2011年の東日本大震災がきっかけだろう。これを期に新築の建物だけでなく、既存建築物においても防潮板を設置するといった浸水対策が進んだ。また、2000年代後半から局地的大雨による被害が増え、ニュースでたびたび報道されたことの影響も大きい。2008年の「ユーキャン新語・流行語大賞 トップ10」に「ゲリラ豪雨」が入っている。

震災以降に設計されたビルは浸水被害を想定して、受変電設備や非常用発電設備を2階以上の低層階に設けるようになった。(耐荷重や搬入経路の都合上、高層階への設置は難易度が高いと思われる。)2020年には国土交通省と経済産業省の連名で「建築物における電気設備の浸水対策ガイドライン」が公開された。

建築:建築物における電気設備の浸水対策のあり方に関する検討会 - 国土交通省

建物は設計・建築で終わりではない。施設した設備を維持するにはビルメンによる点検・整備計画とオーナーからの予算計画への理解が必要だし、緊急時の対応をスムーズに行うには管理者、PM、BMで事前に想定リスクへの対応方針を策定し、訓練することが重要だろう。


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