Image: 配電盤・制御盤で使われる塗装色の標準と補修用塗料

※この記事は興味本位から調べて書いたものであり、恐らく正確性を欠いています。

タッチアップ塗装をする上で色合わせが景観に響くのはもちろん、特に電気設備の場合は色が統一されているだけに正確に合わせておきたい。しかし、どの色を用意すればいいのか。以前、受変電設備の工事をやっていた時は新旧色んな設備を見ていたので自然と気づいたことだが、およそ1980年代以前に製作された古い盤は塗装色が青緑っぽいグレーで、1990年代以降はベージュになっている。この色はいつからどのようにして決まったのか。

2色ある現行の業界標準

種々の図書に盤の塗装色は日本電機工業会(JEMA)標準とすると記載されており、そのJEMAのサイト(資料1)には以下のように記載されている。

配電盤・制御盤及びその取付器具の色彩については、JEM 1135『配電盤・制御盤及びその取付器具の色彩』にて1977年にマンセル値5Y7/1を標準色彩として規定し、その後の改正にて盤表面の鏡面光沢度(つや)の基準及び、測定方法を明確に規定しております。

また、受変電設備機器の色彩についても、JEM 1387『受変電設備機器の色彩』にて配電盤・制御盤との色彩との調和も考慮し、1980年にマンセル値5Y7/1を標準色彩として規定しております。5Y7/1が規定される以前、受変電設備機器においては3種類の異なる色彩が適用されており、構成機器が並列される中、隣り合う機器同士で色彩が異なるという状態がありました。

つまり、JEMAの標準規格では1977年以降5Y7/1(ベージュ)がJEM標準色となっている。しかし、具体的な時期や元々の理由は不明だが、これと同等以上に業界で広く使われている色に2.5Y9/1(クリーム色)がある。また、1977年改正以前のJEM標準色だった7.5BG6/1.5(青灰色)があり、こちらは電気設備で見ることは少なくなってきているが、大型送風機などの他の産業機器では現役の所がある。

私の印象としては、7.5BG6/1.5はさすがに寒色系と分かるが、5Y7/1と2.5Y9/1はどっちも暖色系で似ていて記憶上はよく混同する。でも、こうして色を並べてみると随分違って見える。(※写真やトップの画像は私のディスプレイ上の見た目に近づけて色補正している。)

Image: 盤塗装色

メーカーによって扱いは様々で、片方だけを標準色とするところもあれば、この2色を標準色とするところもあり、屋内は2.5Y9/1で屋外は5Y7/1と使い分ける例もある。じゃあ屋内で5Y7/1は使われないかというとそうでもなく、むしろ高圧以上の分野ではJEM標準色として普及している。

私の印象としては、白基調の空間では2.5Y9/1の方が威圧感が小さく調和が取れているように感じられる。屋外ではすすやサビなどの汚れが付くと目立つので、景観の維持には手入れが一層必要になる。この薄いベージュ系の色はテーブルや棚などの什器で見慣れてしまっているので「軽い」印象があり、5Y7/1の方が電気設備っぽくはある。

屋外では柱上設備を中心にN7(ライトグレー)が広く使われている。キュービクルでの使用例も仮設用で見かけたことはあるけど、無骨な印象が強い。

補修用塗料の入手性

2.5Y9/1の補修塗料は市販の他にエスコやオレンジブックのような総合カタログにも載っていて最も容易に手に入る。5Y7/1はそれよりややマイナーだが、オレンジブックにはあったかな。モノタロウでも安くないけど売ってる。

7.5BG6/1.5はあまり見当たらないが、日東工業からBP81-91S-ZNとしてスプレーが出ている。1本300mlで標準価格1,650円とあるが、私が電材屋を通して買った時は1000円しなかったと思う。


せっかくなのでJEM 1135の成立経緯を軽く調べてみた。

かつての標準色は7.5BG6/1.5(青灰色)だった

これについては資料2から経緯を追うことができる。

電機工業会では、受変電設備に色彩調節を取り入れ、それより先に国鉄電化協会で行っていた変電所内の色彩調節を継承し1958年にJEM 1135「配電盤、制御盤およびその、取付器具の色彩」として色彩の標準化を図り同一受変電所に何社からか納入される盤の色彩の統一を行ってきた。

1950年代の国鉄の電化に伴って変電所の建設が進められた際、無事故の徹底と仕様を統一するための一環として色彩の調節が行われたことがきっかけのようだ。これについて資料3に次のように書かれている。

戦後生産能率の向上、傷害事故の防止のために外国では工場の色彩調節の研究が活發に行われ着着その成果を納めており、わが国に於ても最近ぼつぼつこれに対する関心が高まっている。変電所の色彩調節は、変電所錯誤操作の絶滅、傷害事故の防止、機器の保守の完璧、従業員環境の改善を目的とするもので、鉄道電化協会ではこのために特別に調査研究委員会を設け、斯界の権威者によってこの4月以来研究が続けられている。

その研究成果の報告については1953年(昭和28年)の電気鉄道(資料4)に記載されている。

I. 本委員会研究の目的

変電所勤務の完全な遂行に適した作業環境を実現することを目途とし、下記の諸事項を念頭に置いた。

  1. 勤務員の疲労を軽減する。
  2. 感電による危険を防止する。
  3. 事故の際に冷静な処置をとりやすくする。
  4. 機械及び設備の維持状態を高める。
  5. 変電所の完全な機能を保証する。

II. 変電所機器の色彩

標準色番号 マンセル記号 色名 目的
No.1 7.5BG6/1.5 淡灰青緑色 配電盤面等屋内機器一般
No.2 7.5BG4/1.5 淡青緑色 計器、継電器等枠
No.3 N7/0 灰色 屋外機器一般
No.4 2.5YR4/5 茶色 操作ハンドル等フェノールレジンを材料とするもの
No.5 2.5Y8.53 クリーム色 焦点色、注意を表示するもの

また、資料5より、すぐ後の発電所の新設にこの基準が参考にされたことが書かれている。

仂く意慾と能率は環境の物的条件に支配される。明るさが不十分であったり、同色ばかり使ってあったりすると目が緊張して、その疲れが神経を通じて身体全体が疲れる。所内の環境が単調で陰気であると気分が沈滞するものであるが、色彩により目の緊張が緩和され、注意力が喚起されて、気分は冷静活溌となり機に応じて迅速的確な制御が行えるようになる。配電盤の色彩調節は色の機能的応用という面からは多少離れるきらいはあるが、種々考察研究の結果次の彩色が最も適当なものとして推奨出来る。この彩色は鉄道協会の推奨するものと一致している。

配電盤 7.5BG6/1.5(淡灰色)
計器枠 7.5BG4/1.5(青灰色)
計器目盛板 (銀梨子地に黒文字)
継電器枠 7.5BG4/1.5(青灰色)
操作把手 2.5YR4/5(茶色)
銘板 (クローム梨地に黒文字)
他盤面取付のもの 7.5BG4/1.5(青灰色)

少し気になったのが操作レバーの2.5YR4/5(茶色)ということ。今の標準色はN1.5(黒)。古い盤で緑は見たことがあるけど、茶色は多分見たことない。この色になった理由は資料4から読み取れる。

許容誤差は色相±1、明度±0.25、彩度±0.5と定めた。但しNo.4はフェノールレジンの材料そのまゝを使うことを考慮して定めたものであるからこの誤差範囲に入れる必要がなく、なるべく上表標準色に近い色の材料を用いればよい。

つまり、素材の色が茶色だったからそのままその色を使ったということだろうか。

新標準色アイボリー(5Y7/1)へ

1977年に新標準色として5Y7/1が制定された経緯は資料2に詳細が記載されている。やや長いので省くが、製造技術者の意見だけでなく色彩設計者(デザイナー)が推奨する将来色の意見を取り入れて10色に絞り込み、最終的には総合評価(物性、作業性、展開性、着実性、心理情緒、感覚、調和、保守、展望)で決定したとある。

新旧比較の研究があり、資料6では以下のようにまとめられている。

以上まとめると、制盤色としては、グリーン系(7.5BG6/1.5)よりも暗めのアイボリー系(5Y7/1)の方が良く、暗めのアイボリー系の制御盤色には、床色がベージュ系の場合評価が高い。ベージュ系の濃淡については、照明状態と勘案して決定すればよい。全体に暗い照明の場ならば、明るいベージュ、逆の場合は暗めのベージュを使い全体のバランスを保つことが大切である。制御盤に暗めのアイボリー、床色にベージュ系色を使い、同系統色でまとめることは、人間工学の面ばかりでなく、監視室の統一感、デザイン面からも最適である。

オフィスの什器も昔はグレー系のものが多かったのが、今はベージュや白が一般的になってきている。その辺りの変化も調べていくと関連性が見つかるかもしれない。

参考資料

  1. 標準色見本(JEM-TR 111,2021年版)販売開始のお知らせ│国内規格関連情報│規格・標準化│JEMA 一般社団法人 日本電機工業会
  2. 塗装の色合わせ色彩と色彩管理について - J-STAGE/実務表面技術/26巻 (1979) 2号
  3. 最近に於ける電鉄の諸問題 - J-STAGE/電氣學會雜誌/73巻 (1953) 772号
  4. 変電所色彩調節の研究報告概要 - 電気鉄道 7巻 (1953) 3号 (※国立国会図書館デジタルライブラリーで閲覧可能)
  5. 日立評論1953年EX4:合理化された火力発電所の制御装置 - 1953_ex_04_10.pdf
  6. 監視室に関する研究(その1) : 監視室色彩調査(第31回研究発表大会) - J-STAGE/デザイン学研究/1984 巻 (1984) 48 号

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