119番とトリッキーな電話の発信方法
(トップ画像はFile:BellWesternElectricRotaryPhoneA.jpg - Wikimedia Commonsより。)
日本では、火災・救急は119番、警察は110番に電話を発信することになっている(ちなみに、世界的には112番か911番が多い。)
この理由の俗説として、昔のダイヤル式電話機では1番が最短で回して発信できるが、発信者(通報者)の心を落ちつかせるため、あえて最後の3桁目は最も遠い9番または0番とした、という話がある。私もテレビか人づてか忘れたが、真偽は怪しいと思いながらも、そういう風に教わった。これが本当なら分かりやすいしホッコリする話だが。
NTT技術史料館の電話技術者OBの人が言うには、真実は違うらしい。
現在の電話機の発信方法は、ダイヤル式ならパルス信号、プッシュ式ならトーン信号の2種類がある。最古の方式は受話器を上げると電話局の交換手に直接繋がるものであったが、電話局に自動交換機としてステップ・バイ・ステップ交換機が導入された際にダイヤル式電話機が登場した。プッシュ式電話機が登場するのは交換機の改良が進んだ1960年代末期のことだ。
ダイヤル式電話機(パルス信号)
ダイヤル式電話機はダイヤルが回るときに発するパルス信号(オン・オフが連続する回数)で発信する。119番なら1回-1回-9回のパルス信号が発することになる。ところが、ダイヤル式電話機では受話器を掛けるスイッチを叩くだけでパルスが発生するらしい。つまり、意図しようがしまいが、スイッチを適当に3回叩けばそれだけで111番に発信されてしまう。これでは誤報が絶えないということで当初は112番だったようだが、それでも誤報があったため119番になったとか。9番に掛けるにはスイッチを素早く9回(0.1秒間隔で)叩く必要があり、これなら意図せず掛かることはないだろうという算段だ。
プッシュ式電話機(トーン信号)
プッシュ式電話機の場合、ボタンを押したときに発する2つの音の周波数(トーン)の組み合わせで番号が決まる。この音は可聴帯域であり、楽器のみならず人の声でも代用可能。
昔のテレビ番組で、絶対音感に自信がある声楽のプロを複数人招いて、受話器越しにトーン信号と同じ声を出して電話が掛かるかという実験をして成功した例がある。成功すれば面白いとはいえ、誰もができるわけではなく、難易度は高そうだ。
IP電話なら間違いは起きないだろうが、こういった遊びがなくなるのは寂しいかもしれない。