前回の電気設備年次点検から早くも1年が過ぎようとしている。近々やる特高受電設備の点検に備えて、キュービクルで操作手順の確認と操作禁止箇所のマークをした。常用線予備線受電の受電回路片側ずつの点検で、館内は通常営業なので操作を誤って全館停電させたらクレームどころじゃない、賠償問題となることもあり得る。

ここでは受電回路に電力メーター用VCTをバイパスする断路器が付いていて、VCT周りを点検するときはバイパスの断路器を投入することになる。この断路器は単独通電中では開閉できないが、VCT側が繋がっているときだけ通電中も開閉操作できるらしい。メーカーがそう言うなら間違いないのだろうけど、これがどういうものなのか気になる。スイッチギヤの説明書を読むと、真空断路器 (VDS) というものが使われているらしい。構造はVCBとほぼ同じようだが、詳しい説明がない。ネットで調べても資料が少なく、電力機器メーカーが発行する技報の中で簡単な説明が出てくるだけ。

「DSの主要性能はより確実な電源の切り離しであり,高い絶縁信頼性と安全性が要求される。このため,DSは遮断器と比較して絶縁レベルが15%高く規定されている。」(日立評論2009年3月号 p.68より)というのは遮断器との違いの説明としてなるほど分かりやすいのだけど、通電中の断路については依然分からなかった。

電験三種でも学ぶとおり、断路器 (DSまたはLS) は負荷電流を遮断する能力が無いため、断路器の投入・開放操作をするには先に遮断器 (CB) を切る必要がある。これらを制御盤のスイッチ表示に使われる電気制御器具番号で表せば、遮断器は52、断路器は89。89にはもう一つ、負荷開閉器 (LBS) という意味がある。負荷開閉器の場合、事故発生時の大電流を遮断する能力は無いが、定格の負荷電流を遮断することはできる。89が断路器か負荷開閉器というのはなかなか紛らわしい。番号でなく機器名称の略称で DS (Disconnecting Switch) と LBS (Load Break Switch) をもじれば分かりやすいのに。

電力会社の発変電設備では断路器か遮断器しかないので分かりやすい。命名法則の一例を挙げると、断路器は甲母線(甲ブス)側が甲712、乙ブス側なら乙712、線路(ライン)側はL712。遮断器は接頭辞を付けず712とするか、CB712となる。数字の1桁目は電圧を表し、77kVなら7、33kVなら3になる。2桁目は行き先によって順次番号を割り当てる。3桁目は回線の番号で1号線なら2、2号線なら4。700など0が付くと母線連絡線(ブスタイ)。こうして法則が分かってくると理解しやすい。

需要家構内ではLBSとDSが混在しているので、同じ89の番号を付けられるとわかりにくい。


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