公共施設での災害等における案内放送について英語バージョンを作ろうとしているのだけど、これが少し手こずっている。

英語を日本語に訳すのは難しくない。高校英語で習う英文法をしっかり身につけていれば、後は未知の単語・熟語を英和辞典で調べるだけ。Google翻訳は複雑な英文法や長文だと正確な日本語にならない場合が多いが、単語や熟語の意味さえ分かれば、語順や文法の誤りは脳内補完で何とかなる。理解したことを日本語の文章として書き出すとなると大変だが、これは「日本語力」の問題だろう。

日本語から英語への翻訳はかなり難しい。

語順の違い

日本語はSOV、英語はSVOとよく言われるように、日本語は動詞が最後で、英語は動詞が主語の次に来る。例えば、ウィキペディアのNintendo Switchの記事での導入文は次の通り(一部省略)。

日本語
Nintendo Switchは、任天堂より2017年3月3日に発売されたハイブリッドゲーム機(です)。
英語
The Nintendo Switch is a video game console developed by Nintendo and was released on March 3, 2017.
英語の語順を維持しつつ日本語に置き換えた場合
Nintendo Switchは ゲーム機 開発され によって 任天堂 そして された 発売 に 2017年3月3日。
上の文をより日本語として通じるよう工夫した場合
Nintendo Switchはゲーム機です。任天堂によって開発され、そして2017年3月3日に発売されました。

英語は前から順に話の重要な事柄から並んでいくが、日本語の場合は中間に補足の説明を挟んで、一番最後に動詞で完結する。この語順の違いは文法を学んでもすぐ身につくものではなく、初めのうちは入れ替えを意識して和訳していたと思う。英文を読み上げた順でそのまま理解できるレベルになるまでには、英語の文献に慣れる必要がある。このレベルに到達しないうちは和訳・英訳に大変な労力と時間が掛かっていた。

省略された主語

日本語は主語を省くことを好むが、英語で主語を省略できる場合は非常に限られている。(逆に、It is (形容詞) to do…やIt seems…のように形式主語という使い方もある。)

先の私の文章では「英訳に大変な労力と時間が掛かっていた。」の主語は「私 (I)」になるが、もし「英訳に大変な労力と時間が掛かるだろう。」としたら主語は「皆さん (You)」になるかもしれない。これは書き手の意図次第になる。

省略された主語について考える前に「英訳」行為自体を主語にして済ませることは、素人にありがちだ。実際、Google翻訳でもこの文を単独で翻訳させると “English translation will cost a lot of effort and time.” と出る。だがこれは文法的に合っていても、前の文との繋がりは無視したものになってしまっている。ダメな例だ。

フレーズ

「英訳には大変な労力と時間が掛かるだろう。」に相当する英文をいくつか考えてみる。

  • You’ll spend a lot of effort and time for English translation.
  • You’ll cost a lot of effort and time for English translation.
  • It will take a lot of effort and time for English translation.

どれが最善の表現か。spend, cost, takeのそれぞれを英和辞典で調べてみて、逆に「掛かる」を和英辞典で調べてみて、それでも分からなければ、実際の使用例を調べ上げるしかない。

あなたの友人が日本に到着して「ここはどこですか?」の問いに対する答えとしての「ここは日本です。」を英訳してみる。

  • Here is Japan. →英語で使われない表現。
  • This is Japan. →地図上で日本を指して言っているのであればこれが最善。
  • We are in Japan. →この場合の最善の答え。

和英辞典はその日本語にピンポイントで対応する英単語しか提案しないことが多い。実際は原文の意図を崩さない範囲で色んな言い回しが考えられるのだが、それを正しく・効率良く考えるには英語の様々な単語や慣用句を知っておく必要がある。その中でも一般的(よく使われる・好まれる)表現を掴むには、ひたすら多くの英語メディアやコミュニケーションに触れて知っていくしか無い。

「翻訳」よりも自分の言葉で文章を作ってみる

日本語の語順や表現をそのまま英語に持ち込もうとすると非常に苦労する。文レベルでなく文章レベルで、自分が理解したことを元に自分の言葉で英文を組み立てていくと、意外とすんなり英語の訳文になるかもしれない。元の日本語の文章よりも平易で読みやすい文章が作れる場合もある。英語の表現は周りから似ている文を流用したっていい。

翻訳機はある程度の参考になるが、頼りにしてはいけない。自分の言葉で表現しようと努力することが大事。


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