配電盤・制御盤の銘板で使われる書体(フォント)
機械設備の銘板や安全標識の書体は視認性が重視されるということで、長らく丸ゴシック体や角ゴシック体が使われてきた。これは1955年に制定された日本産業規格 JIS Z 8304「銘板の設計基準」の影響が大きいと思われる。
5. 書体
5.1 漢字と仮名文字 漢字と仮名文字は、角ゴシック体又は丸ゴシック体とするのがよい。
5.2 アラビア数字 アラビア数字は、角ゴシック体又は丸ゴシック体とするのがよい。
5.3 ローマ字 ローマ字は、ゴシック体とするのがよい。ただし、単位記号として用いるローマ字は、4.6による記号を直立のゴシック体とする。
5.4 機械彫刻銘板の書体 機械彫刻銘板の書体は、JIS Z 8903〔機械彫刻用標準書体(常用漢字)〕、JIS Z 8904〔機械彫刻用標準書体(かたかな)〕、JIS Z 8905〔機械彫刻用標準書体(アラビア数字、ローマ字)〕、JIS Z 8906〔機械彫刻用標準書体(ひらがな)〕による。
銘板に丸ゴシック体が使用される理由はもう一つ、製作上の都合がある。機械設備の銘板は金属板やアクリル板への彫刻によって製作されることが多い。この場合、文字幅のカッターを回転させて彫り込むため、必然的に丸ゴシック体になる。
裏側(彫刻面)
表側(表示面)
表からでもよく見ると、彫り始めや彫り終わりが丸く飛び出ているのが分かる。
形として丸ゴシック体になることは分かったが、書体の具体的なリファレンスはないのだろうか。
1955年に制定された日本産業規格 JIS Z 8304「銘板の設計基準」の解説には丸ゴシック体と角ゴシック体の字体例が出ている。また、1969年にはJIS Z 8903「機械彫刻用標準書体」として彫刻原板用の書体が標準化された。当初は常用漢字のみだったが、1976年から1977年にかけて平仮名(JIS Z 8906)、片仮名(JIS Z 8904)、英数字(JIS Z 8905)も標準化された。
日本産業規格で英数字の書体が規格化される前は、ドイツの標準化規格であるDIN 1451を手本とするものもあった。次はDIN 1451(角ゴシック体)の例。
彫刻用書体は文字幅に制約がある都合上、画数が多い文字ほど一般のゴシック体と大きく異なるという特徴がある。銘板メーカーではこれらを手本に原板を製作して独自のアレンジを施していたようだ。
ちなみに、機械彫刻用標準書体については熱烈なファンによってOpenTypeフォントが開発されている。
→ 機械彫刻用標準書体フォント
現在、機械彫刻はデジタル化されており、アウトラインフォント(デジタルフォント)をそのまま銘板に落とし込むこともできるようだ。私が知っているところでは、ある受変電設備の銘板に平成丸ゴシック体W4が使われている。次はモリサワのサイトよりサンプルを抜粋。
さすが書体デザインの専門家が作っただけあって、さっぱりしていて読みやすい。しかし、機械彫刻書体も味があって良い。