Image: 250113 STG『スクランブル』(1981年)PS4 ACAC版をプレイ

『スクランブル』(1981年 / コナミ工業)PS4 アーケードクラシックス アニバーサリーコレクション (ACAC) 版をプレイ。ACACはSteam, Switch, PS4でリリースされていますが、PSストアでは現在70% OFFになっていてお買い得です。

謎が多いコナミ黎明期

スクランブルはコナミにとって最初にヒットしたテレビゲームだが、その開発史を記した文献は見当たらず、裏側は謎が多い。少なくとも「スクランブル2」として開発プロジェクトが立ち上がったグラディウスの開発チームで、スクランブルの開発に関わっていたという人の話は聞かない。

Image: スクランブル

初披露は1981年1月12日から15日までイギリスのロンドンで開催された第37回ATEショー (Amusement Trades Exhibition) にて。日本で開発されたゲームが海外で先に発表された背景には、「日本でのTVゲーム機市場の混乱(とくにコピー改造の横行)を避け、安定した海外での市場展開」(ゲームマシン 1981年2月15日号、p.11)という、当時の日本のテレビゲーム市場の低迷(ヤクザの介入など)がある。

ACAC収録のボーナスブックによれば、スクランブルは1981年2月3日稼働とあり、下記のニュース記事と異なる。このボーナスブックにはグラディウスなどの開発資料が掲載されているが、スクランブルに関してはゲーム開始時BGMの譜面以外に資料は出ていない。

ATEで人気集中の新ゲーム スクランブル―コナミ工業製、レジャックが発売(ゲームマシン 1981年3月1日号、p.20)

コナミ工業㈱(本社大阪府豊中市、上月景正社長)製のTVゲーム機「スクランブル」がレジャック㈱から三月上旬発売となる。これは敵基地に入り込んだジェット機に対し、敵側から緊急発進(スクランブル)するという設定で、洞穴のような空間をジェット機が左から右へ進んで行くもの。プレイヤーはジェット機を進めるが四方向レバーの使用法は、左右で前進速度をコントロールし(右で速く、左で遅くなる)、上下でジェット機の上下動をコントロールする(洞穴のような空間の天地は起伏している)ほか、銃の発射ボタン(連射可能)と爆弾ボタン(二発まで連射可、下へ落ちる)で敵陣を襲う。敵陣攻撃の得点は、下から飛び出すミサイルが五十点(地上)、と八十点(飛行中)、UFOが百点、ドームは百点から三百点のほか燃料タンクが百五十点。ゲーム進行とともに燃料は次第になくなり、ゼロになるとジェット機は落下するが、燃料タンクを破壊するたびに燃料メーターに追加される。ジェット機は、起伏した天地の岩場にぶつかってもダメだし、敵であるミサイル、UFOにぶつかってもダメ。一ゲームでジェット機は三機(切替可)だが一定得点(一万点)以上で一機追加される。ジェット機の進行とともに画面は次々と右から左へ流れることになるが、最終画面では敵基地が現れ、これを破壊すると八百点で、次のパターンへ進む。テーブル型で発売。定価四十九万八千円。

横スクロールシューティングの元祖であるDefender (Williams Electronics) は1980年10月に米国の見本市 AMOA Expo で披露されたばかりで、スクランブルの披露と同じ会場の別のブースでJeutelというフランスの会社がDefenderのクローンを出展し、Williamsから訴訟されて急遽展示が中止される事件があった。既にコピー問題は日本だけでなく世界的だったことが分かる。

スクランブルにDefenderとの意図的な類似性を見いだすのは難しい。縦長画面、対地と対空の打ち分け、強制スクロール、地形避け、6エリアの異なるステージという十分な違いがあり、これで「パクり」というなら、世の中のほとんどのゲームは何かのパクりだ。アイデアがDefenderに影響されている可能性は否定できないが、わずか3か月以内でこれだけの独自性を持ったゲームが生まれたのなら、その技術力は評価されるべきだ。なお、スクランブルの登場から半年後、Universalという会社からCosmic Avengerという、Defenderとスクランブルの間を取ったようなゲームが発売されている。

コナミが開発したシューティングゲームはこれが初めてではない。インベーダークローンあるいはその派生として、スペースキング、カミカゼ、スペースウォー、ジ・エンドという、調べ尽くして初めて分かるようなどマイナーな作品があった。カミカゼは1980年7月より業務提携を結んでいた米国Stern ElectronicsからAstro Invaderとして発売された。スクランブルもSternにライセンスされており、当時のコナミはテレビゲームで独自のIPを創出することに注力し始めた時期だったのだろう。

(1月15日追記)スクランブルの発表直後、ある暴力団員が上月(コナミ創業者で当時社長)と交渉してコナミの代わりにスクランブルのコピー業者を恐喝して取り締まるという契約を結び、その暴力団員にスクランブルの許諾料を横取りされるという事件があったらしい。詳しくは『それは『ポン』から始まった』(赤木真澄、2005年)を参照。

私の個人的な体験

私が初めてプレイした業務用シューティングゲームはレジャックのスペースウォーかセガのザクソンだということははっきり覚えている。スクランブルの画面は既視感があるものの、テーブル筐体でプレイした記憶がないので、何かの間違いかもしれない。どのみち幼少期だったので、親からもらった数枚のコインでしかプレイできなかっただろう。それでも、縦画面のカラフルな横スクロールシューティングは今見ても独特で、1プレイ見ただけで記憶に刻まれることに違いない。

ゲームプレイ

ゲームの説明は上のニュース記事の通り。特筆すべきはレバー左入力の移動と地形が動く速度が同じことか。後の横スクロールシューティングに慣れていると違和感が強い。でも、上の説明文を読んでみると左入力は「減速」とあって初めて納得した。確かに、左入力で地形スクロールをさかのぼるということは、現実の物理法則を考えると、逆噴射して後ろ向きに飛行することと同じで、逆に不自然な動きだ。ゲーム脳って怖い😏

初期設定だと液晶画面では純色がまぶしいので、ACACのディスプレイ設定からスキャンラインを強めにすると、まぶしさが軽減される。

Image: スクランブル

次は洞窟の穴を上下するUFOを避けるか破壊しながら進む。UFOの下端で連射が安定。

Image: スクランブル

次は右からランダムの高さで高速に飛来する火球を避ける。普通に初見殺しだし、ギミックを知っていてもミスる確率が上がる。

Image: スクランブル

ここはすぐ下から発射されるミサイルを撃ち落とす必要がある。このゲームでは自機移動エリアが見かけより狭く、下の画面での位置が最右上になるので、ここから右や上に避けようとするとミスる。

Image: スクランブル

ここは地形が敵のエリア。レバーをタイミング良く左上か左下に入れないとミスになる。新手のイライラ棒だ。

Image: スクランブル

設置店によっては4方向レバーを使っているところがあり、絶対に最後まで到達できなかったとか。

おきブログ 昔のゲームの想い出 [0202] 「スクランブル」 [コナミ] [1981] [アーケード]

KONAMIビルを過ぎてすぐにレバーを左下にいれ、地面に寄ってからミサイルで司令部を破壊する。

Image: スクランブル

司令部を破壊するとゲームクリアだが、そこでは特にBGMやSEはなく、シンプルにCongratsメッセージが数秒間表示されて、次の周回に進む。1周は3分から4分程度と短い。

Image: スクランブル

火球から先のエリアがどれも違う難しさがある。練習を積めばもっと安定するかもしれない。各エリアで攻略方法が変わるというゲーム性があり、攻略すれば次に進めるという達成感がもう1ゲームに繋がるという意味で、熱中しやすいゲームだと思う。この感情はまさにシューティングゲームプレイの原点のように感じられた。


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