近々、2種電気主任免状取得に向けた面談があるので、何か知識をつけておこうという試み。

日本電機工業会(JEMA)が公表している資料の中で、避雷器を付けていなかった高圧受電設備のVTが落雷のサージ電圧で故障したという事例を読んで、うちの受変電設備にあるEVTが故障したらどうなるのか考えていた。

うちの6.6kV配電系統には保護継電器として東芝製マルチリレーMCR27またはMCR28(世代が違うだけで機能的にはほぼ同じ)を使っている。母線保護はOC, UV, OV, OVG、フィーダー保護はOC, DGで行っている。EVTには二次回路の3相(V1, V2, V3)と三次回路(V0)それぞれにサーキットプロテクタ(CP)が付いている。もしEVT二次側に過電流が流れれば、CPが切れることになる。マルチリレーには汎用入力接点の機能として「CP切状態入力」があり、CPの故障出力と結線することでマルチリレーでCP OFFを検出できるようになっている。

マルチリレーにCP切状態が入力されたときの動作は、取説によれば「異常出力します(SYS ERR, 汎用出力)。また、V1, V2, V3相のいずれか2相以上、もしくはVN相のCP OFF時にUV保護をロックします。」とある。UVはVT二次回路の3相全ての電圧が条件を満たしたときに動作するので、CPが3相同時に飛んだら動作時間次第でUVが先に動作する可能性があるが、1相でも生き残っていればUV動作がロックされることになる。

マルチリレーの異常出力がONになると開閉器ONロックがかかるため、遮断器を一度切ると異常が復旧するまで再投入できないということになる。UV動作ロックや異常出力信号がどう作用するかは盤のシーケンス図やフロー図を確認する必要がある。UVは主に高圧連系する非常用発電機の起動条件や負荷機器の異常動作防止用で遮断器トリップに使われる。異常信号出力はフロー図を見たところではフィーダー盤の軽故障一括警報として使われるだけのようだ。

EVT三次回路のV0要素はOVGやDG動作に使われるが、EVT三次には地絡が発生したときしか電圧が生じないため、V0のCPが飛んだときには既にOVGやDGが動作しているはず。先と同じく開閉器ONロックによって遮断器の再投入はできない。

以上から結論としては、EVTの二次回路が短絡または断線した場合、母線電圧を計測できなくなり、UV不動作のため停電しても非常用発電機が起動しない恐れがある。三次回路が短絡または断線した場合、地絡継電器が動作しない恐れがある。まあ、ちゃんと年次点検で手入れしていれば、EVTが故障することはヒューマンエラーか小動物侵入などの外因がなければよほどない。そういう低可能性のリスクを挙げていったらキリがなく、結局求められるのはその場の即時対応力なのだが、万が一に備えて思考演習の一つとして考えてみるのはありだと思う。


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