180814 VN『ぬきたし』(2018年)感想
ビジュアルノベル『抜きゲーみたいな島に住んでる貧乳(わたし)はどうすりゃいいですか?』(Qruppo / 2018年7月)の感想。18歳未満の方の閲覧はご遠慮下さい。
発売3日前にこの作品の存在を知り、ストーリーが面白そうと思って買ってみたのだけど、予想を超える快作だった。抜き消化ゲーに見えて実はしっかりノベル(読み物)になっているのだが、タイトルと内容からして全年齢化は難しそう。発売後げっちゅ屋のランキングから消えたと思ったら初回限定版は既に売り切れたようで、通常版の発売とファンディスクの製作が決まっている模様。でも内容的にサブヒロインも含めおよそ完結しているので、ファンディスクでやるならアフターアフターストーリーとか?
感想 (No.47)
シナリオ
シナリオの長さは共通パートとヒロイン個別パートが3:7くらいの印象だが、共通パートが平均的な作品と同じ長さのように感じる。それがヒロインの人数分ということも鑑みると全体的に見れば長い。フルプライスの時点で察するとは思うが、抜きゲーと言うより、やはりノベルだ。ただ、ヒロインが恋人になるのは個別パートの中でも後半からになり、それまでにもセックスバトルでのHシーンが何度かあるので、「焦らされる」感じはあまりしない。
内容はドタバタコメディにバトル要素を織り交ぜたライトノベルのノリに近い。そして、ネタが振り切るところまで徹底されている。観光大使、風紀委員長、生徒会長など、一見して真面目そうな人物から恥ずかしげなく日常的に淫語が飛び出すし、主人公を含むほとんどの登場人物がアホなので、会話もアホ同士の応酬になりがち。モブの「政治に一家言ある女」って何なんだよ(笑)ルート分岐点でヒロインを絶頂に導くシーンで、特にわたちゃんのアヒャヒャ笑いが一番ツボだった。
わたちゃんはどう見ても背伸びしたがる幼女にしか見えない。先輩要素は一体どこにあるんだろうか、そもそも「先輩」とは何なのか。哲学はさておき、この子についてはロリキャラ特有の前向きさ・純粋さと稀に見える母性がポイントなんだろうけど、私個人的にはたまに語尾にあらわれる「~だな。」みたいなタメ語がポイントだったり。「のじゃロリ」とも異なる、ロリ先輩感はここにあるんじゃないかと思う。さすがにライターの入力ミスじゃないよな。
奈々瀬は正妻的位置づけになる一番まともなヒロインゆえ、それ自体にあまり期待するところはなかったのだが。(ネタバレ注意)あれほど主人公が敵視していた冷泉院桐香と仲良く3P (?) する追加シナリオがあるとは思わなかった。まあ、むしろそっちを期待していたくらいなので嬉しいサービスだった。
美岬は地味で影が薄いといいながらも、グループの中では島文化に最も染まっているために、清純なわたちゃんとは逆の方向に個性を発揮している。しかし恋する普通の少女の側面も持っていて、この中途半端なギャップが良い。特技は様々な乗り物の運転ができるという、これまた地味ながら意外性を併せ持つところが良い。
生徒会メンバーと他者とのHシーンが明確に描かれていなかったのは「処女厨」に対する良心か。文章オンリーでいいからそういうシーンがあれば、主人公が襲われる場面はもっと引き立ったのに。まだ全部を見きれていないのだが、埋まっていないCGやシーンの数から予想するに、ヒロインは3人でなく4人になりそうだ。
最初に唐突に出る緊迫・シリアス目なバトルシーン、次に狂気が垣間見える青藍島観光案内ビデオで不安と期待を持たせ、そして想像を上回る青藍島と学校教育の実情にひたすら笑う。掴みはばっちり。いずれのルートもバトルとシリアスを混ぜつつ、クライマックスで盛り上げてちゃんと収束するようになっている。無理のある展開が多いが、もともと世界観もキャラクターもぶっ飛んでいるので、気にしても仕方がないと納得してしまう。なぜ帰宅するために何度も学校の廊下でバトルを経る必要があるのか、戦闘のプロが集う拠点に少人数の素人が攻め入るのは無謀だろうとか、そもそもこんな条例は憲法違反で国際的にも反発を受けるだろうとか、突っ込みたい点は多いのだが、こちらの世界の常識を持ち込んだら負けなのだろう。
グラフィック
CGの特徴は、はっきりした線と鮮やかめな彩色、ピンクっぽく影の入る肌色。肌の露出が多めと言うこともあってべた塗り感を隠すためか、服のしわ寄せなど影のグラデーションがやや細かい。作風が基本的にコミカルなドタバタ劇とあって空気感は重要視していないようだが、ヒナミに頭を抱え込まれるシーンは夕日で赤く染まった背景が良い雰囲気を演出していたと思う。アリアドネ・プロトコル使用中のAR映像を模した画面は、バトルシーンの演出に一役買っている。Hシーンはシチュエーション補完には十分だが単体では実用性はイマイチなレベル。
CGのクオリティは上々。背景はディティールの良し悪しに落差があるが、さほど気にならない。技術的にすごく凝ったものではないが、私的にはこの画風は気に入っている。ストーリーの長さに比べてCGの枚数は平均的なゲームと同じくらいであることに加え、一部に類似するシーンの繰り返しがあるため、使い回しを感じることがある。シーン転換などで時々表示される赤背景は目に悪いので、一番明るくなった後に少し暗くしてから停止するなど、工夫してほしかった。
表示解像度はHD+ (1600x900) 。WQHDのディスプレイにウィンドウ表示させると画面の2/3ほどを占有するが、これはテレビや動画鑑賞の傍らで見るには小さすぎず大きすぎず、ちょうど良いくらい。また、フルHDやWQHDのディスプレイにフルスクリーンで拡大表示させても粗さが目立たない、無難な解像度だろう。
システム
セーブスロット100個とクイックセーブ1個。バックログはボイス再生のみでジャンプ機能はない。基本的なCG鑑賞、シーン鑑賞画面。シナリオがルート別に十数個のシーンで区切られており、途中のシーンからプレイできるシナリオ選択画面がある。シーンのタイトルはどこかで聞いたようなタイトルをもじったネタの宝庫になっていて、むしろこれを披露したいが為に作ったんじゃないだろうか。インターフェイスはシンプルながら作風にマッチしていて良い。
総評
冒頭に書いたとおり、2010年代ライトノベルのラブコメや日常バトル要素を取り入れた、アニメ色の強い作品になっている。キャラクターも萌えより既存の属性を面白く活用する方に力を入れているため、萌え重視を欠かすことのなかった美少女ゲームの中では新鮮みのある奇抜な作品になったのだと思う。ストーリーも純愛系ではタブーである処女へのこだわりに疑問を呈するものがあったことも面白い。Hシーンを数は少なく種類は多めに、またストーリーの序盤・中盤・終盤に散りばめたのは、近年のソシャゲが好まれている傾向に合っていると思う。つまりは時代のニーズに合っている。
神作というより快作か。私個人的には、ここ数年で最も満足できた作品だった。ファンディスクに対して望むことは…ぶっちゃけ、生徒会長ともっとイチャイチャしたい。 (2018/08/14 入力)
↓青藍島観光案内『にっぷる』に載っている郁子の最終奥義『狂戦士の彷徨(バーサーカー・バレッジ)』って本編で出てきたっけ?使い道が難しそうだから使わなかったのか。