ゼンマイ式掛け時計(1955年?、栄計舎製)をオーバーホール
部屋に据え付ける照明器具の選定や購入した家具の組み立てで休日も休んだ気がしないのですが、今月のメインイベントはこれ。
振り子が付いていても電池で動くトランジスタ時計ではなく、ゼンマイを動力源として動作する正真正銘の機械式時計。アンティークショップ(時計は専門外)で購入したものの、振り子の調子が悪い。しかし、振り子時計なんて分解はおろか仕組みも全く知らないので、ネットで色々調べまくって何とかオーバーホールできた。
ちなみに、栄計舎というメーカーも初耳だったが、1950年代には掛け時計3大メーカーの一つ(他は服部時計店と明治時計)だったようだ。しかし、当時は他にも何社かあった日本の時計メーカーで今でも生き残っているのは、腕時計で現役のセイコー、シチズン、オリエントくらい。
まず、木箱から時計仕掛けを取り出すために、扉の蝶番を外すところから始まる。普通のマイナスドライバーは怪我対策のためか先端の幅が太いため、ヤスリで尖らせる必要がある。今回は8本組ドライバーの小さいマイナスを使って、ネジ穴をなめないように慎重に回した。
文字盤を外すには長針、短針を外す必要がある。針は袋ナットみたいなもので留まっているので、これを反時計回りに回してはずれば、針はそのまま外せる。
部品をばらす前にゼンマイを緩める。これをやらないと軸を外そうとした瞬間に部品が吹っ飛ぶ。
ばらした部品。元に戻せる自信が全くない。番号を部品自体に書いても洗浄液で消えてしまうので、写真を撮った方が良い。針金でバネを戻す部分も写真を撮っておく。この時計の場合はそれぞれの歯車で軸の太さが違って、ほぞ穴もそれに合わせて作ってあるので、どの歯車がどこにはまっていたかある程度分かる。
洗浄には時計専門店で売られているPMC-10を8倍くらい水で希釈して使用。モリブデングリースはつけ置きではなかなか落ちないので、ナイロンブラシなどでこすり落とした。油汚れが落ちたら水洗浄する。
洗浄が終わったら組み立てに移る。ゼンマイは針金で締め付けながら巻いておく。
組み立てる前にほぞ穴から注油していく。潤滑油はゼンマイ以外はセイコー AO-3aを使用した。この油は3,000円と高価な割に2mlという少なさにビックリするが、塗る量は多くないのでかなり余る。ゼンマイにはホームセンターで売られている普通のモリブデングリースを使用した。油筆はAmazonブランドの安いヤツ。
時報用の棒鈴を叩くハンマーなどは軸にバネが巻いてあるので、これを付け直さなくてはいけない。手先が器用じゃないと難しい。
アンクルとカンギ車(音だと「カッチ、カッチ」と鳴る部分)のかみ合い調整がシビア。アンクルやそれを動かす棒が少しでも曲がるとバランスが崩れてリズムが不定になったり、途中でカンギ車がロックされたりする。
S字フックで時計仕掛けをぶら下げて試運転して、問題なければ箱に組み入れる。文字盤などを戻す前に、時報がちゃんと鳴ることを確認する。
半日近く掛けて組み立て調整して、しっかり動いたときはとてつもない達成感があった。
とある古い本には、オーバーホールは2~3年に1回やるべき。それでも10年近く動いたゼンマイ時計は精度が当てにならないので買い替えよう。などと書いてあったが、まあそれだけ作りが緻密で華奢なんだろうな。
使用した道具
- ゼンマイ回し
- ドライバーセット8本
- 精密ドライバーセット
- ラジオペンチ
- 油筆セット
- PMC-10 金属洗浄液
- ガラス製ビーカー(希釈計量用)
- 歯ブラシ
- ポリ容器
- ポリバケツ(水洗浄、廃液回収)
- キムタオル(油ふき用)
- 二硫化モリブデングリース
- SEIKO AO-3a 時計油
- ねじりっこ(ゼンマイ締め付け用)