Image: 栄計舎製(本打式)掛け時計の振り子と時間調整

取説は持っていないけど、色々文献を読んだり実物を観察したりした結果を自分なりにまとめてみる。

時刻(長針、短針)

手で長針を時計回り(右回り)に回して時間を合わせる。短針は長針に合わせて動くようになっている。

他の掛け時計の場合、長針を逆方向(左回り)に動かしすぎると壊れる場合がある。この時計の場合は逆方向に回しても問題ないように作られているが、やはり本来の動きでないためか、時計回りに回すことが推奨されている。

時打ち(時報)回数

毎正時(毎時0分、長針が12時を指したとき)に鐘を鳴らす時報のことを時打ちという。通常、時打ちには時刻とは別のゼンマイが付いている。

時打ちの仕掛けはメーカーや機種によって異なり、修正方法も様々あるらしい。一般的にはカウントアップ方式となっていて、時打ちが発生するごとに1回、2回…と鐘の回数が増えていく。

手動で時打ちを発生させる操作棒が付いている場合は、それを引っ張って回数が合うまで時打ちを行う。なければ長針を進めて時打ちを鳴らし、その鐘の回数に合わせて短針の向きを合わせる(針を外して向きを変えてから付け直す)。

この時計の場合、短針の向きに合わせて鐘の回数を決める金具が連動するため、短針を外して向きを変えない限り時打ちの回数がずれることはない。時計本体の裏面に以下のような説明書きがある。

機械…この掛時計は従来の掛時計と違い時間を合わせるのに打つ数には関係なく合わせる時刻に針を廻して頂く丈で良いのです(自動的に時間と打つ数が合います)取り扱いが至極簡単で而も堅牢無比の発明品として我が栄計舎の世界に誇る本打式掛時計です。

御使用上の注意…針を廻す際には左廻しでも差支いありませんが成可く右廻しにして御使用ください。尚時間を合わせたときに打つ数が時間と違いますが、次の時間から正確に打ちます。

速度調整

ゼンマイや振り子などの仕掛けが周囲の温湿度や復元力の低下によって機械的に変形し、その影響を受けて時を刻む速さが変わってくる。

一般的な掛け時計と同じで、振り子の下に付いているネジを回して振り子を上げれば(短くすれば)時を刻む速さが速くなり、下げれば(長くすれば)遅くなる。

誤差に関する指標

ゼンマイを巻いた直後と解き終わりは誤差が大きくなる。また、それ以外でも誤差は生じうることから、以下のような様々な指標がある。

  • 日差 - ゼンマイを巻いてから24時間後までの誤差。
  • 平均日差 - 何日か計測して算出した1日あたりの平均誤差。
  • 日較差 - 2日間の日差の差。1日目が5秒遅れで2日目が15秒遅れなら、日較差は10秒。
  • 復元差 - 半年後など長期間使用した後の平均日差の差。
  • 指示差 - 24時間の途中で生じる誤差。
  • 姿勢差 - 時計(特に腕時計)の置く向きによって変わる日差の差。

振り子の等時性を維持する板バネ

振り子を使った掛時計は脱進機に「振り子運動の等時性」を利用している。振り子が左右に振れる周期は振れ角の大きさに関係なく、長さだけによって決まるという法則だが、これには「振れ角が小さい場合」という条件があり、振れ角が大きいと周期が長くなるという問題がある。

振り子時計にはこれを解決する工夫として、振り竿の支持点に板バネが付いている。振り子が大きく振れると、この板バネがしなることから振り子の支持点からの長さが短くなり、結果的に周期が一定になるように調整されている。

Image: 栄計舎 掛け時計

この板バネを弾性がない素材に変えたり外したりしてしまうと、誤差が生じる原因になってしまう。

振り子の動きが止まる問題

ゼンマイの力と振り子の力が相互に作用する要の部分、アンクルとカンギ車のかみ合わせに問題がないか確認する。

Image: 栄計舎 掛け時計

振り子を外してアンクルを手で動かし、カンギ車がスムーズに回ることを確認する。引っかかりがある場合はアンクルのツメを曲げて角度を調整する。振れ角が小さくても動く状態が望ましい。カンギ車の歯が摩耗で変形している場合はヤスリをかける。ゼンマイを巻いてもカンギ車がスムーズに動かない場合は機構の注油や清掃(オーバーホール)を検討する。

チクタク音が不規則になる場合はアンクルの振れと振り子の振れの中心が同期していない。振り竿の下げ方向を根元近くから曲げて、アンクルが中間に来たときに振り子が中央に来るよう調整する。


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