仮想マシンソフトとPS/55の双方の知識がある人なら手探りで何とか動作させられるだろうけど、ゼロ知識から動かすにはかなりハードルが高いと思うので、軽く方法を説明しておく。

必要なファイル

BIOSを内蔵するDOSBoxと違い、86Boxは純粋にハードウェアをエミュレーションする仮想マシンなので、それ自体は内部にBIOSを持っていません。BIOSのプログラムは著作権法の保護対象であり、基本的にその開発メーカーが権利を持っているため、86Boxプロジェクトではフリーライセンスの86Box本体とは別に配布されています。使用根拠はPCemの記事で説明したとおり。

86Box本体とは別に以下のファイルが必要です。

  • PS/55 モデル5550-S、TまたはV (いずれもシステム・ボードがステージII) のBIOS ROM。
  • ディスプレイ・アダプター II, III または V のフォントROM。

これらのファイルは86Box本体と別に配布されているROMセットに含まれています。他人の手を借りず自分で用意したいという人は、私が作ったps55utilsのプログラムを使って実機からダンプすることができます。ただし、モデル5550-Vの場合は作成されたバイナリデータを偶数アドレスと奇数アドレスで2つのファイルに分割する必要があります。私はバイナリの編集にICY Hexplorerというフリーウェアを使いました。ファイルは86Boxを展開したフォルダーの以下の場所に配置します。

  • roms\machines\ibmps55_m50t\38F6933.BIN(モデル5550-SまたはTのBIOS ROM)
  • roms\machines\ibmps55_m50v\56F7416.BIN(モデル5550-VのBIOS ROM)
  • roms\machines\ibmps55_m50v\56F7417.BIN(モデル5550-VのBIOS ROM)
  • roms\video\da2\94X1320.BIN (ディスプレイ・アダプターのフォントROM)

以上は仮想マシンの起動に最低限必要なファイルです。これだけではOSインストール前の自作PCと同じで、何もできません。以下のソフトウェアのディスクイメージが必要です。

  • 各機種に対応するリファレンス・ディスケット
  • DOSやOS/2などのOS

PS/55はメモリーやディスクドライブ、拡張アダプターの付け外しを行う度に構成情報を再設定するため、必ずリファレンス・ディスケットを要求します。システムROMにBIOSセットアップメニューを持たないため、日時の再設定やハードウェアエラーの診断にもこのディスクを使います。

リファレンス・ディスケットにはIBM PS/55 Reference, Diagnostic & Option Disksの3070V150.zip(DOS/V版)や5545r133.exe(JDOS版)が使えます。3070V136.zip(JDOS版)は正常に動作しません。実機でも動作しなかったので、恐らくデータが壊れています。

仮想マシンの作成

86Boxを起動。新しいマシン→新しい構成→システム名を決める(スラッシュ(/)など、パス名に使えない文字があるとエラーが発生します)。

設定を開いて以下のように設定(以下はモデル5550-SまたはTの場合)。

  • マシンタイプ:(1985) i386DX
  • マシン:(MCA) IBM PS/55 model 5550-S/T Stage II
  • CPUタイプと頻度(frequency=周波数の誤訳)、メモリの容量を好みに設定。システム・ボード上に実装できるメモリーは最大8MBのため、これを超えた分は記憶拡張カードというMicroChannelアダプターとして追加されます。
  • 時刻同期機能:有効(現地時間)
  • ディスプレイ - ビデオカード:内蔵デバイス
  • 「IBM PS/55ディスプレイアダプターグラフィックス」にチェックを付ける。設定を開き、文字セットが932 (Japanese)、モニタータイプがカラーであることを確認。
  • 入力デバイス - キーボード:PS/55キーボード
  • マウス:PS/2マウス
  • ストレージコントローラ - FDDコントローラー:内蔵デバイス
  • ハードディスク:(MCA) IBM Integrated Fixed Disk and Controllerを選択。設定を開き、Slot #を5に設定する。(自動でも動作するが、5がこのシステムの標準構成)
  • ハードディスクでハードディスクイメージを作成する。容量は当時の最大構成である120MB以内にしておくのが無難か。バスにESDIを選択。
  • フロッピー/CD-ROMドライブ : タイプ : 3.5” 1.44Mを1台または2台構成にする。別途配布されているFDDドライブサウンドファイルを入れた場合は音声を “Epson SD-800 3.5” 1.44MB 80 tracks” にすると、リアルな慌ただしいFDD駆動音が再生される(実機はもっとけたたましい音だが)。

仮想マシンの初期セットアップ

作成したマシンを起動すると、メモリーカウントの後にビープ音が2回鳴り、白黒画面でエラーコード162と163が表示される。

Image: 86Box PS/55 POST

この意味はこちらに書いた通り。

PS/55モデル5550-S,T,V POSTエラーコードの意味と必要な処置

左下のフロッピーのアイコンをクリックして、「既定のイメージを開く」からリファレンス・ディスケットのイメージを開く。仮想マシンの画面に戻り、F1キー(続行を指示)を押す。ゲスト画面をクリックするとマウス操作がキャプチャー状態になる。これを解除するにはマウスホイールを押す。

リファレンス・ディスケットが起動する。

Image: 86Box PS/55 Reference Diskette Ver.1.33

画面に従って日時を設定する。仮想マシンの設定でUTC時刻と同期を取っているとタイムゾーンによって時間がずれるので注意。

Image: 86Box PS/55 Reference Diskette Ver.1.33

構成情報が自動で設定される。この画面になったら、ディスクイメージを取り出して、Enterキーを押すか左上の操作→Ctrl+Alt+Delをクリックする。

Image: 86Box PS/55 Reference Diskette Ver.1.33

メモリーカウントの後にビープ音が1回鳴って次のような画面になれば、OS未インストール時の正常な状態。

Image: 86Box PS/55 POST

ここからディスクイメージでDOSを入れるなりOS/2を入れるなり、好きなようにして下さい。

判明している問題点

  • 米国英語配列キーボードで一部のキーを入力できない(特にパス区切り文字である円記号が使えない問題)。
    →86Boxにスクリーンキーボードなどの機能を追加しないと解決が難しいため、現状すぐに解決できない問題です。日本語配列キーボードではテンキーの右上あたりのキー以外はほぼ表記通りに入力できます。
  • OS/2でPS/55高解像度ディスプレイドライバーを使うと一部のグラフィックの表示がおかしい
    →ビデオメモリーとBitBltの描画処理が競合していることは分かっていますが、現状直す方法が分からず、直る見込みはありません。
  • 日本語DOSアプリケーションでグラフィックの線が途切れたり塗りつぶしが漏れたりすることがある。
    →BASICコンパイラー/2で作成したプログラムやDOS J5.0のBASICインタープリターで発生することを確認しています。
    Image: 5550 BASIC
    この場合はDOS起動直後にps55utilsのDCBPATCHを実行して下さい。
    Image: 5550 BASIC

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