240516 NTT技術史料館 コンピュータ編
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NTT(当時、電電公社)が第3の通信事業としてデータ通信事業を始めたのが1960年代後半。日本で1990年代前半に商用インターネットのサービスが始まりましたから、それより20年以上前のことです。
1957年に完成したパラメトロン計算機MUSASHINO-1A(写真は後継の1B)。「パラメトロン」は日本で開発された素子の名前ですが、いにしえの未来的なひびきのある不思議な名前ですね。パラメトロンは速度が非常に遅く、日本のコンピューター数台に採用されたのみで、すぐにトランジスタに置き換えられたようです。
1960年代後半からデータ通信事業の開始とともに、電機メーカー3社(NEC、富士通、日立)の協力を得て、コンピュータの開発が本格化。
メインフレームDIPS-11/45の演算処理装置。自作PCのスケルトンケースを想像させますが、使われているパーツやケーブルはそれより幾分太い・でかい。
DIPSはNTT社内だけでなく、全銀協などの銀行業界でも使われた。開発に参加した富士通がDIPS-11/45の1か月後に発売したメインフレームFACOM M-380は、これとほぼ同じ設計だったと言われる(笠井雅直『戦後日本における情報通信産業の成立過程』2002)。
DIPSで使われたディスクパック。ハードディスクのご先祖です。
コアメモリ。コンピューター初期の主記憶装置として使われた。
当時は自動生産設備なんてありませんから、手先の器用な女性労働者によってビーズよりも小さなフェライトコアに1個1個ワイヤーを通して組み立てられていました。
1969年の磁気ドラム記憶装置。半導体メモリが開発される前の主記憶装置として使われた。上下に並んだヘッドが外周に何列か付いているが、それぞれの列は同じ位置にヘッドが付いているのではなく、上下に微妙にずらして並べることでドラムの記録密度を上げている。
記憶容量はたったの4.62MBですが、転送速度は0.27MB/秒と、フロッピーディスクに比べればはるかに速い。何より、まだフロッピーディスク(ディスケット)が登場する前と考えたら、なかなかの性能です。
コンテンツ配信型インターネットの先駆け。キャプテンシステム。専用端末機に混じって、見覚えのあるパソコンが。
NECのNTX-5000というキャプテン端末。初期PC-9801を想起させるようなデザインの本体です。
データ宅内措置。いわゆる汎用のテレックス端末。なぜキーボードとプリンターが一体になっているのか、テープリーダーやパンチャーは何に使うのか、ここらは事前知識がないと分からないでしょうね。
1986年にNTTデータが開発したビジネスステーション21 (BS21)というパソコンです。80286を8 MHzで駆動し、MS-DOS 3.1やコンカレントCP/Mが動作しました。ディスプレイフォントの種類で16ドットモデルと24ドットモデルが存在します。IBM 5550やFACOM 9450、N5200といったオフィスパソコンの仲間ですが、3.5インチフロッピーを搭載した小型の筐体が売りでした。銀行業界で指定端末として使われた実績があります。
カーソルキーの下にタブキーとBタブ(バックタブ?)キーが配置されているところが珍しい。
NTT技術資料館は通信技術だけでなく、コンピューターを含む電子技術としても日本で最大級の博物館で、特に技術史オタクとしては一度ならず何度も訪れたい場所です。