私が知らないエレベーターの常識。

出典:『エレベータ界 = Elevator kai』8(29),日本エレベータ協会,1972-12. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/3237133 (参照 2023-02-06)

今から37年前の警視庁保安部建築課発行のパンフレット『エレベーターの常識』を現在と比べて、変わっていたところを拾い出してみました。

はしがき

昇降機取締規則と言ふものがあって、警視庁でエレベーターを取締って居ります。エレベーターを、便利で安全に、使用して行くには、建築主、工事者、運転手及管理者等エレベーター提供者側と乗客となる全市民とが、一緒になってやらねば駄目です。私はエレベーター常識を全市民に持って貰ひ度いと考へるのであります。

走り書きを否定するわけじゃないけど、エレベーターでマナー云々からトラブルになった事例ってあまりなくて、むしろエスカレーターの利用者に同じ言葉を聞かせたい。エスカレーターに飛び乗る人、飛び降りる人、ドンドン駆け上がる人、無理やり荷物ごと台車を乗せる人。あれでステップチェーンやスカートガードの異常を検出して非常停止したり調子が狂ったりしてサービスマンを呼ぶ羽目になるから困ったものだ。

昇降体は単にエレベーターと言って居るが、エレベーターカーと言ふのが本当である。

へえ~。今はメーカーも我々も「かご」って言うことが多いと思う。

我国都市では建物の高さが地上三十一米に制限されて居るから、その内部に設ける昇降路も短距離であって、昇降路の長さは五十米以下である。

建物の建築制限が容積率ではなく単純に高さで決まっていた時代。

エレベーターには、種々な安全装置が設備せられて居って、定員の範囲で使用して居れば、死傷者の出るような事故は有り得ない。従ってエレベーターが墜落して死傷者を生じたなんて言ふことは、大抵誤報である。

この頃より少しさかのぼって日本橋の或るデパートでエレベータが落ちて死傷者を大勢出しもみ消し工作がされたなどと云うデマさえ飛んだ。

可動部むき出しのエスカレーターの方がよっぽど危険ではある。JR秋葉原駅でハンドレールに指を挟んで切断した事故をはじめ、手や足を切断した事故は度々起きている。エレベーターの事故で印象に残っているのはシンドラー社のやつ位だと思うけど、あれももう15年以上前のことか。

大正3年某百貨店に、乗用エレベーター2台を設備して無料で一般に使用させたので、誰でもエレベーターを知るようになった。

それから30数年後の現在で東北の或る温泉街で、初めてエレベータが旅館に取り付けられたとの事で近在から農協さん連中が料金を払って見物に来、中には挙げ句の果て、芸者を連れ込んで、かごの中で宴会をやり、のべつまくなしに運転継続を行いしまいには全員グロッキーになりのびてしまった話もエレベータ界への投書欄で拝見した。

どういう状況だよ😂大人複数で酒瓶片手に芸者さんとうぇ~いって言いながらエレベーターに乗っているところまで想像するとシュール。

普通エレベーターの運転は、昇降体内に設けられた把手(とって)に依るのである。近年押釦(ボタン)に依る自動エレベーターを設備する傾向があるが、自動エレベーターは故障が多い事や、自動エレベーターでも運転を廃止する事の出来ない場合もある事を考慮に入れて、出来るだけ把手で運転する事にしたい。

としている。現在はカーハンドルは殆どなくなって、押釦、テルテール、タッチボタンなどの簡単な操作方式のものになってきており、当時を振り返って考えてみるとハンドルにて床レベルにピタリと合わせて着床する技などはこれは大変なものであったろう、神業か名人芸の部類に入るかもしれない。

まさに自動車や電車の運転みたいな話だな。乗車率によって加速減速の動きも変わるだろうし。

この話自体もなかなかだけど、そもそも前提としてかご内に運転手がいる状況や「エレベーターガール」なんてのは今やほとんど見かけない文化だ。都市圏の観光タワーのシャトルエレベーターには外の景色を説明してくれるガイドさんがいたものだけど、今は自動音声でそういうことは出来るしな。

さて余談であるがこのカーハンドルが若い女の子の運転手には非常にうけたとか、それは床からの高さといい、そのハンドルの寸法、形、ころ合いといい、独りで運転等あるいはかご内で一人で客待ちの時には、ある感能を結構かき立ててくれる道具であったとか、よく聞いた話である。

めっちゃわらた🤣しかし眉唾な話だな。男連中がオカズに持ってきた話じゃないの?でも面白いからヨシ。

エレベーターの運転は、運転手としてその建物の所有者か管理者が指定した者のみが取扱ふのであって、乗客は運転してはならない。

この項は現在では通用しない。デパートはともかく他のビルでは殆ど専用運転手はおらないようだ。

既に1970年代にはエレベーターに運転手がいない状況は当然になっていたようだ。

さすがにそこまで昔ではなく20年ほど前の事だったと思うけど、あるデパートのエレベーターの扉が手動開閉式になっていて、エレベーターガール(ガールというほど若くはなかったような…いや何でも)が1フロア上がるごとに蛇腹の扉を開け閉めしていた事を思い出す。名古屋だとテレビ塔は現在でも2台中1台が手動扉のエレベーターで、案内係の人が付いて扉を開け閉めしてくれるとか。そう言えばそれも乗った記憶がある。

乗用エレベーターでも貨物用エレベーターでも、エレベーターの運転手が定められてある場合には、必ず運転手は乗務中その昇降体内の見やすい箇所に自己の名札を掲げておかねばならない。

戦前日本橋のMデパートの総務部長の話であったが、大体エレベータに乗られる方は皆お客様であるので、たとえ混雑に紛れて胸に触られたり、お尻を撫でられたりしても決して声を出してはならないよう命令されていたそうです。また、エレベータガールは特に店内でも美人を揃えたらしい。

ところがお客の中には美人の運転手名札と交代時間を覚えて毎日のように通って来て、いやらしい真似をする者も相当におったとか、それがため毎日エレベータのNoと交替時間をずらしたりかなりその配置に苦労したそうだ、また中には店宛てでエレベータガールにラブレターなど毎日のように舞い込んで困った事があり、結局名札をやめて番号だけにしたそうである。

不特定多数の人目に触れるし相手はお客様だしで大変よなぁ。それでも声を出してはいけないって…今はぎゅうぎゅう詰めになる事は滅多にないし、カメラもあるしで、何かしら対応策が考えられていると思いたい。

酔ってエレベーターを運転するのは事故の原因を為すから運転手は酒を慎まねばならない。運転手は乗務中喫煙してはならない。

酒気運転は自動車と違って運転を誤って人を引っかけたり、ひき殺す心配はまずないが一応注意喚起しているところが面白い。

基本、運転手は建物側の人間なのだからこんなことをするはずないと思うけど。今ならそれこそかご内が見られるカメラがあるから、見つかったら即刻クビだな。


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