設備的な目線で勉強にさせてもらう。竣工時の情報で現行設備とは異なる可能性あり。

出典:『BE建築設備』51(5)(590),建築設備綜合協会,2000-05. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/3224043 (参照 2023-02-05)

JRセントラルタワーズは設計3年・工期5年で延面積41万平米と、名古屋地区では竣工時点でも現時点でも随一の大規模高層建築物となっている。設備の規模もその辺の中高層ビルとは桁違い。

熱源は、駐車場棟地下2・3階に設置された地冷プラントから冷水、温水、蒸気の供給を受け、主用途ごと(オフィス・ホテル・デパートを含めた共用)に設置した受け入れ施設を経た後、地下1階トレンチ、2階貫通道路上部、14・18階の構造支持階などを主展開階として各所に配管している。

熱源は名古屋熱供給株式会社が管理しているプラントから冷水と温水、蒸気を受け入れている。Googleマップの航空写真を見ると現在も駐車場棟の屋上に冷却塔が見える。高層階への冷温水の供給は一度中間階(5~7階)に設置された昇圧ポンプを経由して送られる。昇圧ポンプの最大能力はオフィス高層向けで150φ×3,100l/min×2.35MPa×200kW×3台となっている。200kWにもなると電源電圧は3000Vとか高圧なんだろう。

蒸気は空調の暖房や加湿とホテルの給湯設備に使われているようだ。水道水を使った空調の再熱加湿は冬場になると送風温度が上がりにくくなるから、蒸気を使った方が空調の快適性では有利になる。その分、蒸気配管の維持管理にどれほど手間が掛かるかという話になりそうだけど。

シャトルエレベーターは1・2・11・12・15階に止まり、12・13階がレストラン街になっていて15階がホテルエントランスだけど、その間の14階がない。それがずっと疑問だったけど、構造支持階になっていたからなのか。

水源は市水を主体とし、一部雑用水として雨水を利用している。地下4階に上水受水槽(1,420㎥、3槽式)、ピットに雑用水受水槽(310㎥、2槽式)を設置

計画一日給水量が上水3,500㎥とあり、BCPまでは考慮しているかどうか分からないけど、だとしても1,420㎥の受水槽って、20m×10m×2.5m×3槽とみると…って想像が付かない大きさ。受水槽清掃も水を移すことを考慮に入れなかったとしても、1日じゃ無理だろう。

特高受変電設備:中部電力岩塚変電所より三相3線77kV 2回線(本線―予備線)を、敷地前面駅前広場から建物内に引き込み、専用引き込みシャフトを経由し、地下4階特高受電室に受電している。以後特高変圧器にて6.6kVに降圧し、ビル内41ヶ所のサブ変電所及び地域冷暖房プラント変電所に配電している。15MVA×4台の特高変圧器二次側に高圧ループ遮断器を設置し、変圧器故障時または保守時には変圧器2台までの並列運転を行い、無停電にて運用可能としている。

地下4階ってどうやって数トンある変圧器を搬入するんだろう。地下駐車場にトラックが乗り入れできるようになってるんかな。

資料には送電系統図が載っているが、中々壮観だ。4バンクの主変圧器、40近くあるフィーダー、100台以上のVCB、高圧ループ配電。これはまるでどっかの街の配電変電所か何かか。これに加えて1875kVAのコジェネ発電機3台と4000kVAの非常用発電機1台が設置されている。これは管理するのがメチャクチャ大変そうだ。

防災計画は、ホテルタワー部およびオフィスタワー部の19階に各々ホテル防災センター、オフィス防災センターとして、駐車場棟1階にデパート及び全館統括用として中央防災センターを設置し、三つの防災センター間を光LANにより接続し、統合ビル管理ネットワークを構築している。

系統図を見ると、中央防災センターにHIS 5台とBMS 1台、オフィスとホテルそれぞれの防災センターにHIS 2台とBMS 1台で、規模相応と言える。確かに台数や規模は大きいかもしれないが、意外に一つ一つそのものは普遍的な技術で成り立っているんだな。

しかし、重要設備室に(最近悪い意味で)話題の二酸化炭素消火、防災センターにハロンガス消火を使っているところに時代を感じる。法令で不活性ガス消火設備の消火剤として窒素が正式に追加されたのは2001年のこと。窒素は同じ消火能力を得るのに二酸化炭素やハロンよりボンベが多く必要になるので、今でも二酸化炭素消火が新設されているところはあるものの、安全面を重視するなら避けることになるだろう。


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