『コンピュータ ノスタルジア(デザインで見る黎明期のパソコン)』(2024年)を読む
コンピュータ ノスタルジア (デザインで見る黎明期のパーソナル・コンピュータ) (standards、2024年発行)を読む。
この本は、グラフィック・デザイナーの著者が1970年代から80年代に発売されたパソコンの中からデザイン性がいいものを取り上げ、紹介している。しかし、各システムの説明は単にデザインや仕様に留まらず、産業史の観点からもメーカーや開発者、時代背景などを恐らく綿密に調べた上で書かれていて、かなり読み応えがあった。私は欧米のパソコンでSol-20やOsborne Oneくらいは知っていたが、Commodore SX-64やCanon Catなんて存在すら気付かなかったマシンで、新しい発見がたくさんあった。シャープX68000の「マンハッタンシェイプ」に元ネタらしきマシン(1984年に米国で発売された”Mindset”)があるという意見も初耳で(少なくとも、ネット検索した限りは2年前のRedditで同意見が挙がっている程度)、興味をそそられる考察だった。
後半の「コンピュータと女性」コラムは多数のカラー写真を交えていて見応えがあった。また、オートメーション産業での女性の活躍を挙げ、昨今の安易に女性蔑視を唱える風潮へ異を唱えている。
コンピューターの産業デザインで先端を走っていたIBMやDECのマシンが取り上げられなかったのは残念だが、この本のメインはホームコンピューターということでやむを得ないかもしれない。また、著者がMacintosh Plusの(デザインの)熱烈なファンだったということで、Appleのコンピューターにかなりのページ数が割かれている。まあしかし、Appleの産業デザインが優れていることには同意する。Appleのコンピューターを使ったことがない私でさえ、なぜかMacintoshの日本語カタログ(中古)を持っていて、未だに捨てきれずに保管している。
説明文ではビジネス向けをうたっているのに、写真では可愛く見える見せ方はうまいというか、変わっているというか。所有欲がわいてくるマシンであることは間違いない。