1990年代のPCIバスグラフィックチップについて考察 [DOS/Win9x]
2000年までに登場したグラフィックチップの中で、DOS/Win9xで使うならどれがいいのか悩んでいた。
メーカー別の特徴
VOGONS(http://www.vogons.org/)などで調べてわかったことをメーカー別に挙げてみる。
3dfx
これまで自分には全く縁がなかったメーカーなのでよくわからん。Win2000/XP時代のフリーゲームや同人ゲームでVoodooはサポート対象外という文をよく目にしたせいで、地雷メーカーという印象しかないw VOGONSでの評判は良好。VBIOSやドライバーのバージョンに注意すれば問題ないのか?
ATI
1993年頃にMach64がAT互換機でヒットを飛ばしてからはパッとした製品が出ず、自作ユーザーからいつ消えてもおかしくないと言われ続けてきたメーカー。RageやRadeonはWin9xからXPにかけてメーカーPCによく採用され、今もAMDのRadeonシリーズとして系統が残っている。初めて家で使ったPCのグラフィックボードがATI 3D Rageだった。
Win9xとの併用を考えたらATI製は言うまでもなくボツ!DOS専用で使うにしても、今から選ぶならもっと賢い選択があるはず。
イチオシ:該当なし。強いてあげるならMach64の一択。3D Rage以降はDOSゲームの互換性が低い。
Cirrus Logic
当時のIBM PCシリーズやNEC PC-9821シリーズなど、Cirrus Logic製のグラフィックチップを搭載した機種は多い。でも評判を見ると、チップの特性で画質がよくないらしい。DOSとの互換性はまあまあ良好。日本国内で採用機種が多く、コンパックやIBMから更新されたドライバーが公開されていて、Cirrus Logic本元からもOS/2やWin3.1に対応した日本語ドライバーが出ている。Win95以降では使い物にならないが、OS/2やWin3.1で使うなら選択肢に入れていいかも。
イチオシ:CL-GD5436またはCL-GD5446
Matrox
DOSゲームとの互換性はWeitek以上Tseng以下で、あまりよくない。しかし、Win9xとDOS/Win3.1を併用するなら、Win3.1の日本語ドライバーが手に入るMillennium G400がイチオシ。画質がよく、Win9xで2D性能は最高、3D性能もまずまず。Windows 3.1では最大1600x1200ドットで24ビットカラー表示という最高の環境を得られる。
イチオシ:Millennium G400
NVIDIA
RivaTNTから爆熱チップで、冷却ファンがうるさいという印象しかない。GeForce3シリーズまではDOSゲームとの互換性はまあまあ良好。NVIDIAからはWin3.1やOS/2に対応するドライバーは用意されていない。Win9xで3D性能を重視するならこれ。
イチオシ:GeForce2 MX
S3
S3はWin3.1時代にグラフィックチップ市場に参入した新入りだが、DOSとの互換性は良好(ただしチップによる)。問題はどの世代のチップがいいのかということだが、海外DOSゲーマーはS3 Trio64V+がおすすめと言う。Trio64V+ならIBM版Win3.1日本語ドライバーがそのまま使えるので都合がいいんだけど、Win9xでは3Dゲームの動作は厳しい。Direct3Dはサポートしていない。ちなみにTrioシリーズの上位にVision968というチップがあるんだけど、なぜかこちらは名前が挙がってこない。
Win9xとDOSを両立するならSavage4あたりがいいと思ったんだが、この前のIO-DATA GA-SV432で酷い目に遭ったので、もう手を出したくないw (IO DATA製ドライバーが不安定、VGA信号にノイズが乗りやすいのかディスプレイが信号を正しく認識できないというトラブルが起きた。)
イチオシ:Trio64V+またはSavage4シリーズ。
Trident
他のメーカーと比べるとマイナーな存在で、どうも二流三流の臭いしかしないw DOS/Win3.1時代にはTGUI9440/9660が有名になったが、性能は今ひとつ。同時代のものに限定しても他にもっといい石があるはず。
イチオシ:該当なし
Tseng Labs
同社のET4000はかつてDOS環境で最速と言われたことで有名。一方で、画面スクロールをサポートしていないので、DOS/V(J4.06/V以降)では$DISP.SYSに/HS=LC
を付けないと画面表示が化けることも有名。レトロ物好きとしてはOrchid ProDesignerがちょっと欲しいかもと思ってしまう。S3を始めとするWindows 3.xに特化したグラフィックボードに押され、徐々に姿を消していった。Win9xでのゲームはかなり厳しいと思う。
イチオシ:該当なし
Weitek
Weitekというと自分はWeitek 2167⁄3167 (80286/386用コプロセッサ) しか思い浮かばなかった。同社はPower9000/9100というグラフィックチップを出していて、それを搭載した製品がかの有名なViperシリーズ。登場時点ではWindows環境で最速を誇っていたが、その後の開発がなかなか進まなかったことと低価格化の波に押されて消えていった。DOS環境の互換性はやや悪く、特に液晶ディスプレイでは問題が起きやすい。一応、Win98には標準ドライバで対応している。
イチオシ:該当なし
Win3.1時代のグラフィックボードメーカーと製品
昔のPC雑誌(月刊アスキー1994年9月号)にグラフィックボードの特集が載っていたので、そこで紹介されている製品を挙げておく。いずれもハイエンド向けの製品。
Canopus PowerWindow 864
国内メーカー カノープス社製。S3 Vision864を搭載。同社初のPCIバス対応グラフィックボード。付属のドライバーがとても優秀で、Win3.1環境においてS3 Vision964やMatrox MGA搭載ボードを上回る性能をたたき出していた。DOS環境では3DBENCHが48FPSで、バス速度やCPU性能によって頭打ちになっているように見える。
Diamond Stealth 64
S3 Vision864を始めとするS3製64ビットチップを搭載した人気シリーズ。当時のWindows 3.1ハイエンドマシンの定番アイテム。VBIOS ROMのバージョンが古いとWin95が起動しないという話を聞く。日本ではダイアモンドジャパンが販売。
Diamond Viper Pro
Weitek Power9100を搭載。VRAM 4MB版は同特集で紹介されている製品の中で最も高価な¥128,000。Windows環境ではいい性能を出しているが、DOS環境の性能は3DBENCHが30FPSと、ISAバス製品並み。
Graphics Pro Turbo
ATI mach64を搭載。同特集で紹介されている製品の中で唯一、1280x1024ドットフルカラー表示をサポートする。代理店の加賀電子によって付属ソフトは完全に日本語化されている。Windows環境では他製品と比べて今ひとつ性能が伸びない。日本では加賀電子が販売。
IO DATA GA-DVLII
アイ・オー・データ機器製。低コストなCirrus Logic CL-GD5434を搭載し、VRAM 2MBで¥24,800という低価格を実現している。安いだけあってか、他製品に比べてボードの部品点数が明らかに少ない。WinTachベンチマークでは#9GXE64 Proに匹敵するスコアを出している。3DBENCHは45FPSと、頭打ちっぽい。
Leadtek WinFast S400
GeForce 7シリーズの頃は憧れだったLeadtek WinFastシリーズがDOS時代からあると知ってびっくり。S400はVision964とVRAM 2MBを搭載して¥58,000と安価だった。しかし上位のチップを搭載している割にはドライバーの完成度が未熟なのか、Windowsでの性能は今ひとつ伸びず。日本ではコンパルが販売。
Matrox MGA-PCI/2
Windows環境の性能はPowerWindow 864に次ぐ2位だが、DOS環境の性能は3DBENCHが15FPSということでISAバスのET4000にも劣る。日本では住友金属工業が販売。
#9(Number Nine) GXE 64 / GXE 64 Pro
それまで業務用にビデオカードを供給していた#9が一般向けに発売したVision 864/964搭載PCIグラフィックボード。カノープス製品よりも高価。写真でボードを見た感じ作りは良さそうだが、画質はどうだったんだろう。日本ではダイヤセミコンシステムズが販売。
初期のPCIバス対応製品は相性問題が出やすいのが悩み。後発であるMatrox MillenniumですらBIOS ROMをアップしないと正常に起動しなかったりスリープモードへの移行に失敗したりする。
グラフィックチップの候補をいくつかに絞ることはできたが、あとは実際の製品と自分が使うハードウェア・ソフトウェアを組み合わせて使ってみないことにはわからない。