DOSで利用できるフロッピーフォーマット [PC/AT +5]
IBM PC互換機、IBMパーソナルシステム/55、NEC PC-9800シリーズ上のPC DOSまたはMS-DOSで利用可能なフロッピーディスクフォーマットについて。
- フロッピーディスクのサイズとフォーマットの関係 -
8インチFDD、5.25インチFDD、3.5インチFDDはそれぞれのFDD側の端子の形状は異なるが、電気信号の物理仕様や論理仕様は同じ。つまり、FDDインターフェイスやFDDコントローラーには、ディスクのサイズによる区別は存在しない。
しかしBIOSがFDDのサイズや種類(5.25" 2D、5.25" 2HC、3.5" 2DD、3.5" 2HD、3.5" 2ED)の設定で利用可能なフォーマットを区別するため、ソフトウェア上ではサイズで区別することがある。
- DOSのフォーマット対応表 -
凡例: 対応=読み書きおよびフォーマットが可能、標準=ブートも可能、番号はIBM PC用またはNEC PC98用のDOSのバージョン
フォーマット形式 | IBM PCおよびPS/55 | NEC PC-9800シリーズ |
8" 1S(250KB) | ? | 対応 |
8" 2D(1.2MB) | ? | 標準 |
5.25" 1D(160KB) | 標準(*1) | 2.0以前で対応(*1) |
5.25" 1D(180KB) | 2.0以降で対応(*1) | X |
5.25" 2D(320KB) | 1.1以降で対応(*1) | 2.0以前で標準(*1) |
5.25" 2D(360KB) | 2.0以降で標準(*1) | X |
5.25" 2DD(640KB) | X(*2) | 標準 |
5.25" 2DD(720KB) | X(*2) | 3.1以降で対応 |
5.25" 2HC,2HD(IBM PC/AT) | 3.0以降で標準 | 読み書きのみ(*3) |
5.25" 2HD(NEC PC98) |
X(*4)
|
標準 |
3.5" 2DD(640KB) | X | 標準 |
3.5" 2DD(720KB) | 3.2以降で標準 | 3.1以降で対応 |
3.5" 2HD(1.2MB,東芝 J-3100) | J6.1/V以降で対応(*5) | 読み書きのみ |
3.5" 2HD(1.2MB,NEC PC98) | J6.1/V以降で対応(*5) | 標準 |
3.5" 2HD(1.44MB) | 3.3以降で標準 | 5.0A以降で対応(*6) |
3.5" 2ED(2.88MB) | 5.0以降で対応 | X |
- 5.25インチ2HC(2HD)ドライブでは読み取りのみ可能。
- IBM5550やPS/55の一部の機種で動作する日本語DOSで対応。IBM PCでは基本的に利用不可。
- 非公開機能のFORMAT /5スイッチでフォーマットも可能。
- 有志が作成したJAPAN2HD.SYSというフリーウェアのデバイスドライバーを組み込むことで利用可能。
- デバイスドライバーを組み込む必要がある。詳細は後述。
- PC-9821シリーズの3モード対応ドライブと組み合わせることで対応。
- 各種フォーマットの仕様詳細 -
フォーマットの種類 | 物理仕様 | 論理仕様 | ||||||||||
媒体の種類 | 回転速度 | トラック密度 | 記録方式 | 転送レート | ビット密度 | 面数 | 容量(U) | セクタ容量 | セクタ数 | シリンダ数 | 容量(F) | |
1S(250KB) | 8" 1S | 360rpm | 48tpi | FM | 250Kbps | 3268bpi | 1 | 400KB | 128B | 26 | 77 | 250KiB |
2D(1.2MB) | 8" 2D | 360rpm | 48tpi | MFM | 500Kbps | 6816bpi | 2 | 1.6MB | 1024B | 8 | 77 | 1232KiB |
1D(160KB) | 5.25" 1D | 300rpm | 48tpi | MFM | 250Kbps | 5536bpi | 1 | 250KB | 512B | 8 | 40 | 160KiB |
1D(180KB) | 5.25" 1D | 300rpm | 48tpi | MFM | 250Kbps | 5536bpi | 1 | 250KB | 512B | 9 | 40 | 180KiB |
2D(320KB) | 5.25" 2D | 300rpm | 48tpi | MFM | 250Kbps | 5876bpi | 2 | 500KB | 512B | 8 | 40 | 320KiB |
2D(360KB) | 5.25" 2D | 300rpm | 48tpi | MFM | 250Kbps | 5876bpi | 2 | 500KB | 512B | 9 | 40 | 360KiB |
2DD(640KB) | 5.25" 2DD | 300rpm | 96tpi | MFM | 250Kbps | 5922bpi | 2 | 1.0MB | 512B | 8 | 80 | 640KiB |
2DD(720KB) | 5.25" 2DD | 300rpm | 96tpi | MFM | 250Kbps | 5922bpi | 2 | 1.0MB | 512B | 9 | 80 | 720KiB |
2HC(1.2MB,IBM) | 5.25" 2HD | 360rpm | 96tpi | MFM | 500Kbps | 9646bpi | 2 | 1.6MB | 512B | 15 | 80 | 1200KiB |
2HD(1.2MB,NEC) | 5.25" 2HD | 360rpm | 96tpi | MFM | 500Kbps | 9646bpi | 2 | 1.6MB | 1024B | 8 | 77 | 1232KiB |
2DD(640KB) | 3.5" 2DD | 300rpm | 135tpi | MFM | 250Kbps | 8717bpi | 2 | 1.0MB | 512B | 8 | 80 | 640KiB |
2DD(720KB) | 3.5" 2DD | 300rpm | 135tpi | MFM | 250Kbps | 8717bpi | 2 | 1.0MB | 512B | 9 | 80 | 720KiB |
2HD(1.2MB,東芝) | 3.5" 2HD | 360rpm | 135tpi | MFM | 500Kbps | 14184bpi | 2 | 1.6MB | 512B | 15 | 80 | 1200KiB |
2HD(1.2MB,NEC) | 3.5" 2HD | 360rpm | 135tpi | MFM | 500Kbps | 14184bpi | 2 | 1.6MB | 1024B | 8 | 77 | 1232KiB |
2HD(1.44MB) | 3.5" 2HD | 300rpm | 135tpi | MFM | 500Kbps | 17434bpi | 2 | 2.0MB | 512B | 18 | 80 | 1440KiB |
2ED(2.88MB) | 3.5" 2ED | 300rpm | 135tpi | MFM | 1.0Mbps | 34848bpi | 2 | 4.0MB | 512B | 36 | 80 | 2880KiB |
* 容量(U)=未フォーマット時の容量、容量(F)=フォーマット時の容量、詳細は後述
NECの5.25インチ・3.5インチ2HDフォーマットは8インチ2Dフォーマットとの互換性を取ったもの。東芝の3.5インチ2HDフォーマットは5.25インチ2HCフォーマットとの互換性を取ったもの。
- 各種フロッピーディスク媒体の歴史と詳細 -
1974年9月に東陶機器へ導入されたIBM3740。(書誌"日本アイ・ビー・エム50年史"より。)
左下にIBMの8インチFDのエンベロープ、中央付近にわかりにくいが8インチFDが見える。FDDはエンベロープが置かれている下にあり、写真ではその挿入口は見えない。ちなみにIBM3740 Data Entry System(データ・エントリー・システム)は、写真手前にあるIBM3741 Data Station(データ装置)、写真右下にあるIBM3713 Printer(印刷装置)、写真右中央にあるIBM3742 Dual Data Station(複式データ装置)、写真中央やや左奥にあるIBM3747 Data Converter(データ変換装置)で構成され、キーボードで入力したデータを直接FDに記録するシステムであった。記録したデータは表示装置や印刷装置に出力できたほか、磁気テープに転送してコンピューターで処理することができた。
「日本アイ・ビー・エム50年史」によれば、フロッピーディスクが初めて採用されたのは1973年の「IBM3740データ・エントリー・システム」というシステムである。(OSを持たない単なる入出力装置のためコンピューターとはいいにくい。)その後、IBMのみならず様々なメーカーの汎用コンピューターでも使われるようになる。1970年代末期にはディスクやドライブのコストダウンが進み、パソコンでも使われるようになった。8インチFDはIBMが提唱したフォーマットが主流だったが、5.25インチや3.5インチFDは他社が提唱したフォーマットにIBMが追従する形となった。
種類 | 磁性体 | 容量(U) | 登場時期 | 提唱者 |
8" 1S(片面単密度) | 酸化鉄(III) | 0.4MB | 1973年 | IBM |
8" 2S(両面単密度) | 酸化鉄(III) | 0.8MB | 1976年 | IBM |
8" 2D(両面倍密度) | 酸化鉄(III) | 1.6MB | 1977年 | IBM |
5.25" 1S(片面単密度) | 酸化鉄(III) | 0.1MB | 1976年 | Shugart |
5.25" 2D(両面倍密度) | 酸化鉄(III) | 0.5MB | 1978年 | Tandon |
5.25" 2DD(両面倍密度倍トラック) | 酸化鉄(III) | 1.0MB | 1981年 | YE-DATA(?) |
5.25" 2HD(両面高密度) | コバルト酸化鉄 | 1.6MB | 1982年 | 電電公社 |
3.5" 2D(両面倍密度) | コバルト酸化鉄(?) | 0.5MB | 1981年 | Sony |
3.5" 2DD(両面倍密度倍トラック) | コバルト酸化鉄 | 1.0MB | 1984年 | MSC |
3.5" 2HD(両面高密度) | コバルト酸化鉄 | 2.0MB | 1985年 | MSC(?) |
3.5" 2ED(両面超高密度) | バリウムフェライト | 4.0MB | 1988年 | 東芝 |
* MSC=Microfloppy Standard Committee(1982年に米国で設立された標準化団体。後にMicrofloppy Industry Committeeに改称。)
- メディアディスクリプタについて -
メディアディスクリプタは記憶媒体の先頭セクタのオフセット15hに記録される1バイトの数値で、ここで記憶媒体の種類を特定することができる。このIDはDOSで用いられるファイルシステム(FAT)の中でもFAT IDとして使われている。
フロッピーディスクのフォーマット別のメディアディスクリプタ一覧
→MS KB75131 : Standard Floppy Disk Formats Suppoerted by MS-DOS
メディアディスクリプタはDEBUGコマンドやSYMDEBコマンド等で確認できる。
C:\>debug -l ds:0 0 0 1 -d ds:0 2CBF:0000 EB 3C 90 49 42 4D 20 20-35 2E 30 00 02 01 01 00 .START 2CBF:0030 55 50 20 20 20 20 46 41-54 31 32 20 20 20 FA 33 UP FAT12 .3 2CBF:0040 C0 8E D0 BC 00 7C 16 07-BB 78 00 36 C5 37 1E 56 .....|...x.6.7.V 2CBF:0050 16 53 BF 3E 7C B9 0B 00-FC F3 A4 06 1F C6 45 FE .S.>|.........E. 2CBF:0060 0F 8B 0E 18 7C 88 4D F9-89 47 02 C7 07 3E 7C FB ....|.M..G...>|. 2CBF:0070 CD 13 72 79 33 C0 39 06-13 7C 74 08 8B 0E 13 7C ..ry3.9..|t....|
- 未フォーマット時の容量とフォーマット時の容量の違い -
フロッピーディスクにはデータだけでなく同期信号やGAP、CRCなどデータ以外の情報も記録されている。この部分は低レベルの領域(フロッピーディスクコントローラーなど)でしか扱われないため、ユーザーはとにかくプログラム開発者も普段は意識することはない。
未フォーマット時の容量とは全ての記憶容量で、フォーマット時の容量とはデータ部分だけを合計した容量のこと。FATフォーマットの場合はデータとしてブートセクタ、FATテーブル、ディレクトリエントリのための領域を確保するため、実際に記憶できるデータ(ファイル)の容量はさらに少なくなる。
- フォーマットパターン -
IBMフォーマットにおけるインデックスギャップとトラックギャップ
Gap4a|SYNC|IAM|Gap1|[セクタ群]|Gap4b
IBMフォーマットにおけるセクタのフォーマットパターン
SYNC|IDAM|C|H|R|N|CRC|Gap2|SYNC|DAM/DDAM|[DATA]|CRC|Gap3
出典:PC9801 BIOSとCプログラミング、川上俊史、工学図書株式会社、1991年
- PC DOSで3.5インチ1.2MBフォーマットを利用 -
IBM PC DOS J6.1/V、J6.3/V、J7.0/V、J2000では3モード対応FDDと組み合わせることで3.5インチ1.2MBフォーマット(NECフォーマット、東芝フォーマット)のディスクを使用することができる。
1. 1.2MB ディスケット・サポートの導入
DOSインストール時に「オプション・ツール」の「1.2MB ディスケット・サポート」を選択していなかった場合は、セットアップディスクで「SETUP /E」を実行して追加インストールを行う。
2. $FDD12.SYS(3.5型ディスケット駆動機構デバイス・ドライバー)の導入
CONFIG.SYSをEエディターなどのテキストエディターで開き、最下行に「DEVICE=$FDD12.SYS」を追加する。
保存して再起動すると3.5インチ1.2MBフォーマットのディスクが使えるようになる。ディスクの初期化フォーマットにはFORMATコマンドではなくFORMAT12.COM(1.2MBディスケット用フォーマット・ユーティリティー)を利用する。