210924 『学研の図鑑 電気』(1975年) を今改めて読んでみる
小学生の時に読んだ『学研の図鑑 電気』(学習研究社、1975年初版発行)を今改めて読んでみる。
本が置いてある図書館を探して借りてきた。昭和50年2月10日初版発行、昭和60年2月25日第26刷発行とある。内容はもうほとんど覚えてないと思ってたんだけど、見てたら小学校低学年当時に読んだときの感覚を思い出してきた。確かにこの本を読んだ記憶がある!幼少期の記憶ってシナプスが繋がってないだけで、意外と残ってるんだなぁ。
本で最初に登場するのは電圧・電流の説明でも静電気の説明でもない。電気にどんな危険があって、何をすると危ないかが具体的に書かれている。
まるで機器取説のような出だしだが、子ども向けの本と考えれば当然だ。この本は子どもに電気への興味を持ってもらうことが目的だが、子どもが危険を知らないまま興味本位で電気を扱って危険な目に遭わせるようなことは避けたい。
そう言っておいて何だが、私は一回だけやらかしたことがある。小学生か中学生の時か忘れたが、テスターのリード線2本をコンセントの左右それぞれに繋いだまま、うっかり反対側を短絡させた。リード線が「パンッ」と音を立てて焼け散って、脚と指先に軽い火傷をした。本当に表面的な火傷だったと思うが、妙に痛みが長引いたせいで配線の焼けた臭いとともに記憶に刻まれてしまった。まあ、危険を身を以て知ったおかげで以後注意するようになった。
電気の最初の説明は、身近で強大な電気エネルギーを生じる自然現象である雷から始まる。エネルギーを白熱電球の数に換算して例えているところが興味深い。
次に電磁気の諸現象とその発見に関する歴史が紹介されている。この本で描かれる人物の絵がまた特徴あって良い。
アラゴの円板の説明。電験三種やエネ管でも誘導機の説明で必ず出てくるが、私自身未だによく分かっていない。
この本では数式は全く出てこない。オームの法則は紹介されるが、これもかけ算などの記号が出てくるに留まっている。
後半は電気応用機器の話が中心になる。
モーターを使った家電の説明。冷蔵庫が冷える仕組み(ヒートポンプ)の説明もある。こういう断面図を見るのが好きだった。しかし、出ている家電のイメージがいちいち古い。子どもながら古そうなデザインだと思いつつも、原理の説明だからあえて初期の家電をイメージしているのだと納得していた。
パタパタ時計だ。懐かしい~。しかし、電気時計なんてものがあるんだな。初めて知った。
当時のテレビと言えばブラウン管と言うことで、その仕組みが丁寧に説明されている。これも今やロストテクノロジー。
整流回路の説明が出てくるが、子どもには難しい。テレビの中にこういう部品があるって説明されても、見えるわけじゃないから、実感を伴わないと理解しにくいし興味も持てないだろう。
クロスバー式電話交換機の説明。これこそロストテクノロジー。コンピューターがどうのこうのと言われるよりは理解しやすいか?順を追って説明してもらわないと、1枚の図だけでは分かりにくい。
電話の音声自体がデジタル信号になった今では、電話のコラム全体が歴史上の話になってしまっている。時代の大きな隔たりか…
目次。
一通り改めて読んだが、電気の世界では避けて通れない数式がこの本ではほとんと登場せず、イラストや写真が豊富に使われていることが分かる。
家電のイラストや写真から1970年代の香りがする。これを読んだ当時の私でさえ古くさいと思ったことだろう。ただ、雷現象の説明や電力供給の仕組みなど、今でも通用する話はある。諸現象の発見の話や家電の仕組みの話は面白い。一方、コンデンサーやトランス、マイクロ波通信やアマチュア無線といった話は、図鑑として必要だったことは分かるが、身近になく実感が中々伴わないので、小学生の興味を引くのは難しい。現に本を読んでいても、当時同じコラムを読んだ記憶が思い出されるまで時間が掛かった。
今やこれくらいの情報はウェブで調べればいっぱい出てくるが、体系的にまとまったものというと、やはり本の出番になる。ここまで高い密度で情報を詰め込めるのは図鑑ならではだろう。そういう考え方はもう古いだろうか。
当時の私は親に外へ連れ出されない限り、隙あらば自分の家でも人の家でもテレビゲームをやっていた記憶があるが、夏休みの自由研究か何かの課題でこの本を読んだことが今に繋がっている。この本を読み直すと、改めて自分はコンピューターよりも電気機械全般が好きだなと思った。今の子はいかにして理系に興味を持つのだろう。残念ながら職業としての魅力は薄いんだろう。
裏表紙は特別高圧架空電線の敷設風景。なかなか硬派でマニアックな絵面だ。送電線の新設はヘリを飛ばすと聞いたことあるが、こうやってやるんだな。