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キャッシュコントローラ専用チップの搭載は高価なマシンの象徴か。
→ Intel 82385 Cache Controller
日経データプロの情報によると、Intel 82385は80386専用のキャッシュ・コントローラで、最大32KBの外付けメモリ(20 MHz動作の場合、アクセス時間35ナノ秒のスタティックRAMを使用)をサポートする。1987年2月発表。チップ単価は1988年9月時点で¥25,500 (16 MHz)、¥37,500 (20 MHz)。
IBMのPS/2(日本仕様はPS/55)では、1988年6月2日(現地時間)に発表された PS/2 Model 70-A21 (8570-A21) で64KBのキャッシュメモリ付き82385が80386 25MHzとともに搭載された。PS/55でこれと同等のモデルは1989年5月15日発表のモデル5550-V(本体、モニター、キーボード込みで¥1,496,000より)となっている。これらのモデルには6つのPALデバイスで構成された、同社の特許技術に基づく回路が付け加えられた。
日本電気のPC-9800シリーズでは、1990年1月に発売されたPC-H98 model 70(本体、キーボード込みで¥995,000より)で82385が使われた。このモデルも64KBのキャッシュメモリーを搭載している。
1990年に入るとChips and Technologiesなどの互換機チップセットメーカーから 128KB以上のキャッシュメモリーに対応したメモリコントローラーが登場し、容量スペックを誇示する動きも見られたが、大容量のキャッシュメモリーが実際の性能に効果的だったかどうかは疑問があった。
なんと386SX用の純正キャッシュコントローラもあったが、採用例はなかったらしい。
Intel社では、i386SX用の外付けキャッシュを構築できるように、20MHz対応の82385SXキャッシュ・コントローラを用意していた。82385SXを使用すれば、0ウェイトでデータを供給できるというものである。しかし、20MHzが最高速度であるため、キャッシュを使用しなくても高速のDRAMで十分である。また、i386SXは上述のように32ビット・データを扱うには2回のバス・サイクルが必要であるため、高価なキャッシュ・メモリ(たとえば82385SXは1000個注文時の価格が7450円で、このほかSRAMが必要になる)をあえて使用する必要はない。実際、i386SX搭載のパソコンで、キャッシュ・メモリを備えている機種はまずない。(日経データプロ・マイクロプロセサ 1991.9『80386SX(i386SX)』)