IBM 5576-002キーボードの概要
IBM 5576-002キーボードの概要。仕様、スキャンコード、スピーカー、ロットの違いについて。
5576-002は1988年に日本IBMから発売されたPS/55 モデル5550-S/Tの必須選択オプションとして登場しました。その後もPS/55シリーズ用の中型・標準キーボードとして長い間製造・販売されました。コネクタ・信号形式はPS/2と互換性があるのでPS/2キーボード端子にそのまま接続でき、適切な設定を施せばWindows上でも正常に使えます。キータッチがキーボードマニアの間で高く評価されている影響か、オークションではえらい値段が付くこともあります。
値が張る物でしたが、PS/55のJ-DOS(DOS J5.0)日本語モードでは106互換キーボードを接続するとキーボード識別エラーで起動しないので、仕方なくこちらを入手しました。
仕様
- 型番: 5576-002(5576 KEYBOARD 2)
- 品名: 鍵盤
- EC No.: C81592 他
- 発売元: 日本アイ・ビー・エム株式会社
- 製造元: アルプス電気株式会社
- 発表時期: 1987年9月7日
- 販売時期: 1987年 - 1997年
- 配列: 独自配列 (JIS準拠)
- キーの数: 106
- キーロールオーバー: Nキーロールオーバー
- 接点の種類: ALPS白軸 + 板ばね + メンブレン型スイッチ
- 主な制御チップ: Intel 8052AH
- インターフェース: ミニDIN6 (PS/2互換)
- サイズ (WxDxH): 427 x 186 x 45 (mm)
- 重量: 1.5kg
- 価格: 38000円(1988年)
内部のことについては他のサイトで散々調べ尽くされているようなのでここでは省略します。
日本語106キーボードとの仕様上の違い
配列だけ見れば一般的な日本語106キーボードと似ていますが、外部も内部もいくつか異なる点があります。違いは次の通り。
- 一部のキーの表記が異なる(Insert→挿入、Delete→削除、Backspace→後退、PageUp→前ページ、Alt→前面キー、PrintScreen→ページ印刷)
- 一部のキーの割り当て位置が異なる(NumLock、SysRq、Break、漢字、漢字番号、カタカナ、テンキー上の記号キー)
- DOS時代のキーボードなので、Windowsキー、アプリケーションキーはない。
- キーボードIDは106キーボードが83AB、002型は90AB。
- 106キーボードでは標準のスキャンキーコードセット2に日本語キーが追加定義されているが、002型の標準のコードセット2は101英語キーボードとして振る舞う。日本語キーに対応したコードセットは03h/81h/82h/8Ahにあり、81h/82h/8Ahは106キーボードでは定義されていない。
スキャンコード
002型には6つのスキャンコードセットが用意されています。キーボードリセット時はコードセット2に設定されているため、Windowsでは適切なドライバを入れないと、変換・無変換・漢字キーがスペース入力として扱われます。コードセット1、3、81hは001型ではサポートされていません。
コードセット | 特徴 | 使用OS |
---|---|---|
1 | PS/2 101キーボードのコードセット1に相当(日本語関連キーは割り当て無し) | PC DOS、OS/2英語版 |
2 | PS/2 101キーボードのコードセット2に相当(日本語関連キーは割り当て無し) | PC DOS、OS/2英語版 |
3 | すべてのキーについてMake/Breakの発生方法を定義できるモード | 3270 PC |
81h | コードセット1をベースに日本語キー配列を定義 | OS/2日本語版 |
82h | コードセット2をベースに日本語キー配列を定義 | OS/2日本語版 |
8Ah | マルチステーション5550のⅠ型鍵盤に相当 | 日本語DOS |
PS/55のJ-DOSで106キーボードが使えなかったのは、キーボードがスキャンキーコードセット8Ahをサポートしていなかったためなのかもしれません。
5576-001エミュレーション
本機には5576-001にあって5576-002では無くなったキーをエミュレーションする機能があります。左シフト+左Ctrl+前面キーを押すとNum Lock、Caps Lock、Scroll Lockの全てが点滅します。この間、一部のキーのスキャンコードが下表のように変わります。該当するキーを1回押すと元の状態に戻ります。
5576-002上のキー | 5576-001の対応するキー |
---|---|
F3 | Cr Bnk/領域呼出/All Cr/登録 |
F4 | 割込み |
F5 | UF1 |
F6 | UF2 |
F7 | UF3 |
F8 | UF4 |
F9 | EOF/Erase/ErInp |
F10 | Attn/CrSel |
F11 | PA1/DvCncl |
F12 | PA2/PA3 |
1 | Clear/SysRq |
2 | 終了 |
3 | メッセージ/応答 |
4 | サイズ変換/横倍角/ |
5 | 単語登録/再交換 |
6 | 漢字/番号 |
7 | 取消 |
8 | コピー/移動 |
内蔵スピーカー
キーボード裏面を見るとスピーカーが付いているのが分かります。DOS J4.0以降でアプリケーションプログラムからビープ音を鳴らすことができたようです。コネクターの未割り当てのピンにスピーカーを駆動するための信号が割り当てられているらしいのですが、入手した個体ではケーブルが結線されていません。となると、本当に何のためにスピーカーが付けられたのでしょう。(→スピーカー出力用の結線がされているケーブルも存在するようです。この個体についてはケーブルだけ古いタイプに差し替えられているかもしれません。)
ちなみに5550-S/T/Vの技術解説書ではこのピンはReservedになっていて、スピーカーについては一切記述がありません。
ロットによる個体差
私も詳しくありませんが、基板構造で前期型・後期型、一部の環境においてキートップの表記と違う文字が入力される問題、FCC認証の有無といった違いがあるようです。
違う文字が入力される問題については、5550-S/T/V技術解説書にスキャンコードの違いについて記述があります。
EC No.A27345と341578の場合のScan Code Set 3
Key No. Scan Code Set 3
14 5D/F0 5D
29 5C/F0 5C
56 51/F0 51
EC No.はキーボードの裏面に表記してあります。
このEC No.に該当すると問題が発生するようです。もっとも、Scan Code Set 3は3270 PCという端末エミュレーター用のモードであり、DOSやWindowsでは使われないので、影響は限定的であると考えられます。私が入手した個体は1992年末頃の製造とみられ、内部構造は後期型、問題非該当、FCC認証ありのものでした。