Image: IBM PS/55 モデル5550-T 仕様・オプション価格一覧

FM-RやAX機ほどじゃないにしても相変わらず情報が少ないPS/55。モデル5550-S/Tに関する資料がそこそこ揃ってきたのでまとめてみる。

基本仕様

1988年4月のシリーズ最初の発表時点でのラインナップです。同時に5570-Tが発表されていますが、ここでは省略します。PS/55 MCA機としてはこれより前に5570-Sが発表されています。5550-Vは1989年5月発表で、この時点ではまだ登場していません。型番末尾はCPUのクロック数、16MHz(Sixteen)、20MHz(Twenty)、25MHz(twenty-fiVe)から来ていると言われています。

ある技術変更(EC)の対象製品に5551-SK9, TK9, SC9, TC9, SU9, TU9という類似した型番があって最初は何なのか理解していなかったのですが、マルチステーションの命名規則を踏まえると、韓国、台湾、米国向け輸出モデルだったようです。

モデル名 モデル5550-S モデル5550-T
システム装置名 5551-S09 5551-T09 5551-T0A 5551-T0B
発表年月 1988年4月
CPU i80386 16MHz i80386 20MHz
コプロセッサ オプション(i80387)
ROM 128KB(1Mbit)
標準RAM 2MB
最大RAM 16MB
表示機能(DA-2) 1040x725ドット(テキスト80桁x25行、12x24ドットフォント)
1024x768ドット262144色中16色または256色表示(グラフィック)
表示機能(VGA) 720x400ドット16色(テキスト80桁x25行、9x16ドットフォント)
640x480ドット16色(グラフィック)
FDD 1.44MB 3.5インチ2モードFDD x 1台 (オプションで2台目を内蔵可能)
HDD 30MB 30MB 60MB 120MB
拡張スロット 32ビット x 2、16ビット x 2 (うち1つはディスプレイ・アダプターⅡが占有)
その他I/F キーボード、マウス、パラレル、シリアル(RS-232C)、ディスプレイ
付属ソフト リファレンス・ディスケット
本体価格 ¥820,000 ¥940,000 ¥1,140,000 ¥1,490,000

立派なお値段が付いていますが、パソコンとして使用するにはさらに別売のキーボード、ディスプレイ、DOSが必要なので、実際は+20万円以上掛かったと思われます。もっとも、ハードディスク標準搭載と32ビット拡張バス実装は当時としてはハイスペックなので、値段が高すぎるとは言えませんが。

ハードウェア  
5576-001型鍵盤 ¥43,000
5576-002型鍵盤 ¥38,000
5576-003型鍵盤 ¥30,000
数値キー・パッド ¥13,000
マウス ¥18,000
5574-C06 14" カラーディスプレイ ¥245,000
5574-M06/W06 15" モノクロディスプレイ ¥128,000
数値演算プロセッサ(20MHz) ¥240,000
記憶拡張カード ¥190,000
2MB記憶拡張キット ¥140,000
2MB システムボード記憶拡張キットⅡ ?
4MB システムボード記憶拡張キットⅡ ?
3.5インチディスケット駆動機構 ¥50,000
70Mbytesハードディスク駆動機構 ¥440,000
115Mbytesハードディスク駆動機構 ¥650,000
ソフトウェア  
日本語DOS/BASICインタープリター K3.3 ¥40,000
オペレーティング・システム/2 1.0 ¥75,000
オペレーティング・システム/2 拡張版 J1.1 ¥120,000
DOS文書プログラムⅢ 1.0 ¥70,000
SMART Series キットⅡ ¥170,000

RAMの増設について

標準では2MBのメインメモリが搭載されています。システムボード上の専用スロットに別売の2MBまたは4MBの「システムボード記憶拡張キットⅡ」を増設でき、合わせて最大8MBまで拡張できます。8MB以上のメモリ増設にはMCAスロットに接続する「記憶拡張カード」(2MB搭載)と、それに2枚まで増設できるドーターボード形式のRAMボード「2MB記憶拡張キット」を使用します。

システムボードのタイプ

本モデルのシステムボードは以下の種類があります。電源スイッチにあたるレバーの色が赤色ならステージⅠ、白色ならステージⅡです。ただし、過渡期のロットには外観で見分けが付かないものがあります。ステージⅠとステージⅡの機能的な違いはよくわかりませんが、システム・ボードが大きく変わっているようです。改訂レベルなどの情報はリファレンスディスケットの「技術情報の表示」から知ることができます。

モデル サブモデル 改訂レベル システムボードの種類
F8 0A 01 ステージⅠ 5551-S09
F8 0A 02 ステージⅡ 5551-S09/S0A
F8 07 03 ステージⅠ 5551-T09
F8 07 02 ステージⅠ 5551-T0A/T0B
F8 07 04 ステージⅡ 5551-T09/T0A/T0B

キーボード

キーボードは別売で、3種類から選択できるようになっています。

5576-001型

マルチステーション5550の5556キーボードⅠ型との互換性を重視した配列。DOS文書プログラムや3270PC/5250PCのために用意された12x2列のファンクションキーが特徴的で、全124キー。

5576-002型

米国IBMのPS/2(Personal System/2)用に登場したEnhanced Keyboard(101キーボード)をベースに日本語入力に必要なキーを割り当てた配列。

5576-003型

002型キーボードのテンキーを外付け仕様(別売)にした省スペースモデル。テンキー取り外し時はNumLockをオンにすると文字キーに対して数字・記号キーが割り当てられる。

表示機能

VGA

システムリセット時はVGAの信号がディスプレイに出力されます。チップの実装は異なるかもしれませんが、仕様としてはPS/2と完全に互換性があります。VRAMは256KBなので640x480グラフィックモードは256色表示をサポートしていません。当然ながら、通常は日本語を表示することはできません。(DOS/VやWindows日本語版ではグラフィックとして日本語文字を描画している。)

ディスプレイ・アダプターⅡ

Image: IBM PS55 Display Adapter II
File:IBM PS55 Display Adapter II.jpg - Wikimedia Commons

PS/55独自仕様の表示機能です。以下の動作モード(画面モード)を持っています。

モード 画面の種類 画面サイズ
08h 単色文字モード 80x25
0Ah 単色グラフィックモード 1024x768
0Eh カラー文字モード 80x25
0Dh 16色グラフィックモード 1024x768
0Fh 256色グラフィックモード 1024x768

システムリセット時は動作モード03h(VGAの80x25テキストモード)にセットされていて、日本語DOS起動時は動作モード08hにセットされます。この時ビデオ信号の出力がVGAからディスプレイ・アダプターⅡに切り替わります。文字モードではメモリアドレスの特定の位置(コード・バッファー)にJISコードを書き込むだけで、漢字ROMから文字パターンが読み出されて、日本語を含む文字を表示できます。フォントサイズは半角12x24、全角24x24ですが、表示上はスペースが入るので文字ボックスのサイズは半角13x29、全角26x29となり、テキスト画面の解像度は横13x80=1040ドット、縦29x25=725ドットとなります。

256色表示はPS/55の一部モデルではオプション扱い(表示装置記憶拡張キットを取り付けると対応)になっています。5550-S/Tでは全モデルでVRAM 1MBのフル実装です。262144色中256色表示と言う数字は、DACのパレットレジスタにおいてパレット1色に対して6x3(RGB)=18ビットが割り当てられていて、それがVRAM上の8プレーンx1ビットに対応するためです。

ディスプレイ・アダプターⅡの画面出力では1024x768ドットインターレース信号が使われます。出力端子はVGAと同じ3列D-Sub15ピンメスで、ピン割り当ても互換性があります。しかし、ほとんどの液晶ディスプレイではインターレース信号に対応しないので、入力信号エラーとなり画面が映りません。

今からこのマシンを入手・使用しようかと検討している方へ

このマシンは一見PC/AT互換機と変わりないように見えますが、蓋を開けてみればイレギュラーな仕様で固められたマシンなので、PC上級者でも手懐けるのは困難です。

まず、何か拡張しようとすると様々な独自仕様に阻まれます。

増設メモリのソケットは72ピンSIMMと同一ですが、一般に売られているFP-SIMMメモリは使用できません。同じIBMのSIMMメモリでも仕様がバラバラなので必ず使えるとは限らず、この機種専用の増設メモリ以外は使える見込みはありません。

内蔵のハードディスクはDirect Bus Attachmentというこれまた独自仕様の端子を使っているので、これと同一仕様の物はIBM純正品(PS/2またはPS/55用の物)しか存在せず、その交換部品は今では入手困難です。

拡張スロットはMCAバスというあまり普及しなかった規格であるため、これに対応するボードは中古では滅多にお目にかかれません。

ディスプレイ出力はVGAケーブルで現行の液晶ディスプレイに接続して使用できます。ただ、ディスプレイ・アダプターの出力ではインターレース信号が使われていて、現行のディスプレイで表示できるものは皆無です。DOSの英語モードやDOS/Vは640x480ノンインターレースなので問題ありませんが、それなら別にPS/55である必要はないでしょう。(3270端末や制御用途などMCAアダプターを使うのが目的なら意義はありますが。)

キーボード端子はPS/2端子ですが、一般的な106日本語キーボードだとJ-DOSが起動しないので注意が必要です。DOS/Vは106キーボードでも正常に使えます。

システム構成を変更すると構成情報の再設定のためにリファレンスディスケットというものが必要になります。この機種の場合は購入時にフロッピーディスク媒体で付属します。構成情報の再設定が完了するまではOSを起動させることすらできません。

ここまでにJ-DOSやDOS/Vと言った単語が出ていますので、これを説明しましょう。PS/55で動作する日本語DOSには「バージョン Jx.x」と「バージョン Jx.x/V」の2系統があります。前者はJ-DOS、後者はDOS/Vと呼ばれています。J-DOSはもともとPS/55の標準OSとしてリリースされ、ディスプレイ・アダプターという日本語表示をサポートしたハードを搭載しているPS/55でのみ動作します。DOS/Vは後から登場したもので、本来は英語しか表示できないVGAをグラフィックモードにして日本語を描画・表示できるようにしたものです。アプリケーションによってはどちらかしか対応していないものがあるので注意する必要があります。


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