IBM PS/55(5551-T09) SIMMメモリ増設が上手くいかない
IBM PS/55 モデル5550-T(5551-T09)をいじくり回す。今回はシステムメモリーの増設に挑戦。
このマシンには3つのメモリスロットがあり、そのうち2つは増設用の空きスロットになっている。標準で2MB、一つの空きスロットには2MBまたは4MBのメモリボード、もう一つには2MBのメモリボードを装着できるらしい。なぜそんな半端な仕様になっているのか不明だが、そういうわけで最大システムメモリは仕様上は8MBとなっている。見た感じ、72ピンSIMMがそのまま載りそうなのだが、これがまた一筋縄には行かないのだ。
標準で搭載されているメモリボードは9つの石が載っている。つまりはパリ付きのFP-SIMMメモリが必要だ。残念ながら手元にはこんなのしかなかった。
パリティジェネレータ搭載RAMボード。PC98用の72ピンFP-SIMMで、パリティ用メモリチップの代わりにパリティデータを生成するチップが載っている。メモリチップが高価な時代だったからこそ登場した代物だ。容量は16MB。こんなものに代わりが務まるか分からないが、試してみよう。
メモリスロット2に取り付けて電源を入れてみる。エラー225が表示された。IBM Diagnostic Error Codes - BIOS Centralによれば、「Wrong speed memory on system board」とのこと。メモリのアクセスタイムがシステムの要求を満たしていないのだろうか。いや、チップの仕様を見るに60nsとのことなので、FP-SIMMとしては十分なはずだ。標準で付いているメモリを外したり取付スロットを変えてみたりしたが、エラー225のまま変わらず。
SIMMメモリについて調べているうちに、SIMMにはPresence Detect(通称SIMM-ID)と言うものがあることを初めて知る。これは67-70番ピンに定義されているが、IBMの技術解説書に掲載されているピン割り当てではいずれもReservedになっている。ということは、SIMM-IDは関係ないのか?
→ SIMM ID について - http://shiuntenlos.ie-yasu.com/twma0030.htm
マニュアルの内容を精査しているうちに、あるI/Oポートに「Memory Card ID」なるファンクションがあることを見つける。「メモリー・サブカード上の識別値(ID)を読み出す」ことができるらしい。その隣には識別ビットの詳細も載っていた。
Bits System Board Memory Connector Status
3 2 1 0
0 1 1 1 = 2MB Memory Card 2 or 3 Installed
0 1 0 1 = 4MB Memory Card 2 Installed
Other Combinations = Unidentified Card Installed
あれ、JEDEC仕様と一致しない。ここも独自規格か。。。
→ PS/1 PS/2 PC Memory Reference - http://www.elhvb.com/mobokive/eprm/eprm/233.htm
とにかく、標準で付いていたメモリボードの67-70番ピンとGNDとの導通をブザーでチェックしてみると、70番ピンだけGNDに落ちていることが判明した。やはり67-70番ピンはReservedではなくPDのようだ。
システム・ボード側をよくよく見れば、SIMMスロットの67-70番ピンがそのまま74LS244に接続されているじゃないの、裏を見ればプルアップ抵抗があるじゃないの。簡単に分かることだった。
メモリボード上のPDからGNDに繋がっているジャンパを外す。久々にハンダゴテを握ったぜ。
システムボード側でICクリップを使ってスロット2の70ピンをGNDに落として再度電源を入れてみる。エラー215 (Memory address error; 64KB on daughter/SIP 2 failed)。メモリアドレスエラーって何ぞ???
メモリ容量が現物と一致しないのがいかんのか。パリティジェネレータがいかんのか。メモリタイミングの問題なのか。
そもそも、マニュアルを読んでみると、メモリスロットのピン割り当てがネット上に掲載されているSIMMのピン割り当てと微妙に違うんだよなあ。次はマニュアルに記載されているシステム・ボード・メモリー・コネクターのピン配列。
Pin # | Signal Description | Pin # | Signal Description | |
---|---|---|---|---|
1 | Ground | 37 | Data Parity 1 | |
2 | Data 0 | 38 | Data Parity 3 | |
3 | Data 16 | 39 | Ground | |
4 | Data 1 | 40 | Column Address Strobe 0 | |
5 | Data 17 | 41 | Column Address Strobe 2 | |
6 | Data 2 | 42 | Column Address Strobe 3 | |
7 | Data 18 | 43 | Column Address Strobe 1 | |
8 | Data 3 | 44 | Row Address Strobe 0 | |
9 | Data 19 | 45 | Row Address Strobe 1 | |
10 | +5 VDC | 46 | Block Select 1 | |
11 | -Column Address Strobe P | 47 | Write Enable | |
12 | Address 0 | 48 | Reserved | |
13 | Address 1 | 49 | Data 8 | |
14 | Address 2 | 50 | Data 24 | |
15 | Address 3 | 51 | Data 9 | |
16 | Address 4 | 52 | Data 25 | |
17 | Address 5 | 53 | Data 10 | |
18 | Address 6 | 54 | Data 26 | |
19 | Reserved | 55 | Data 11 | |
20 | Data 4 | 56 | Data 27 | |
21 | Data 20 | 57 | Data 12 | |
22 | Data 5 | 58 | Data 28 | |
23 | Data 21 | 59 | +5 VDC | |
24 | Data 6 | 60 | Data 29 | |
25 | Data 22 | 61 | Data 13 | |
26 | Data 7 | 62 | Data 30 | |
27 | Data 23 | 63 | Data 14 | |
28 | Address 7 | 64 | Data 31 | |
29 | Block Select 0 | 65 | Data 15 | |
30 | +5 VDC | 66 | Block Select 2 | |
31 | Address 8 | 67 | Reserved | |
32 | Address 9 | 68 | Reserved | |
33 | Row Address Strobe 3 | 69 | Reserved | |
34 | Row Address Strobe 2 | 70 | Reserved | |
35 | Data Parity 2 | 71 | Block Select 3 | |
36 | Data Parity 0 | 72 | Ground |
4MBのパリ付きFP-SIMMが手に入る見込みがない。まあともかく、今日のところはこれで諦めよう。
参考文献
- 日本アイ・ビー・エム株式会社『IBM PS/55 ハードウェア モデル5550-S/T/V 技術解説書』、オーム社、1990年