昔のPCの日本語キーボード配列を見比べる
ふと昔のPCの写真を見ていて面白いことに気付きました。キーボードの配列が一致しておらず、かなりばらつきがあるのです。英数字・カナキーの並びは標準化されているためにおよそ同じなのですが、それ以外の機能キーが今のキーボードと大きく違っていることがあり、なかなか興味深いものです。
PCキーボードのいろいろ
およそ機種の発売順です。カタログや広告などの写真を抜き出しているので見づらいものもあります。ちなみに記事トップ画像は日本電気COMPO BS/80。
ベーシックマスター (日立)
1978年発売。世間一般には我が国で最初に発売された国産PCとして認識されています。ほぼ旧JIS配列(JIS C 6233-1972)そのまま。漢字変換関連のキーはありません。まだワープロがなかった時代であり、オフィスコンピュータの世界で東芝が競合メーカーに先駆けて漢字対応モデルを発表したばかりの頃です。
マイコン博士Z80 MZ-80K (シャープ)
MZシリーズはシャープのテレビ事業部が開発。見るからに使いにくそう。
MZ-80B (シャープ)
写真の方はキートップのカナ表記が見にくいので図の方を載せています。これまた個性的な配置。ただ、TABキーが左手前にあるのは旧JIS配列でも規定されていること。
PC-8001 (日本電気)
PC-8801に通じるところはあるが結構違う。カーソルキーがキーボード手前に配置されていないのがPC黎明期のキーボードの特徴。
Apple II J-plus (東レ、アップルコンピュータジャパン)
よく見るとカナキーの割り当てがJIS規格と全く合っていません。何故こんなことになったのでしょう。
VIC-1001 (コモドールジャパン)
実は日本国内で設計から製造まで行われた純和製のパソコン。よく見ると記号キーの配列が変。
PC-3200S (シャープ)
PCシリーズはシャープの情報処理部門が開発。
CX-1 (キヤノン)
それぞれのキートップ前面にBASICのキーワードが印字されています。プログラム実行中に実行中の命令のキーが光るんでしょうね(いやいや)
FM-8 (富士通)
1981年に発売された同社初のコンシューマ向けPC。これに対抗してPC-8801が登場し、さらにその返しとしてFM-7が登場。FM-7系列もこの配列です。後述のFACOM9450とかなり違いますね。開発担当部門が違うこともあるのでしょうが。
FACOM 9450 (富士通)
写真は英数カナモデル。漢字サポートモデルでは文字キーとテンキーの間にいくつかキーが追加されています。漢字変換関連のキーでしょうか。後継モデルの9450II、9450Σとなるにつれキーが追加されていき、IBM5550のそれと近い感じになります。ライバル関係であることを意識しての対抗措置でしょうね。
N5200モデル05 (日本電気)
奥の列はファンクションキーが15個と残りはジョブ制御のキーでしょうか。この部分は富士通のK端末と似ています。鮮明な写真がありませんでしたが、N5200モデル03のキーボードはファンクションキーがタッチパネル?になっていてかなり異色です。
if800 model 30 (沖電気工業)
キーボード、プリンター、ディスク装置、CRTディスプレイが一体型のごつい筐体が特徴的。
M23 (ソード電算機システム)
RETURNキーの下にはLF(Line feed)キー。本体にプリンターを内蔵しているからでしょうか。ここまでのキーボードを見ていて気付いたのですが、RETURNキーの配置が2段目と3段目でバラバラで統一されていませんね。
JX (日本IBM)
1984年に発売された同社初の家庭用PCかつIBM PC互換機でもある。販売目標20万台に対して売れたのはわずか4万台。
アップルエクステンデッドキーボード (アップルコンピュータジャパン)
US配列ですがカナが割り当てられています。こちらはちゃんとJIS配列準拠。ただ英語配列ではキーが足りないので、ロがケのシフト位置に割り当てられています。
PC-9801RA (日本電気)
多くの古参PCユーザーにとってなじみ深い配列。この配列は1982年に発売された初代PC-9801からあまり変わらず、PC98が衰退する1996年頃までよく使われていました。
FMR-10LT (富士通)
FMRシリーズのラップトップ機。前シリーズのFM-16βから同社のワープロ OASYS の親指シフトキーボードを取り入れて日本語処理機能をアピールしていました。
Panacom M353 (松下電器産業)
ラップトップPC。Panacom Mシリーズは富士通FMRシリーズとBIOSレベルで互換性がある。
ASKeyboard sono1 (アスキー)
親指シフトを採用したPC-98用キーボード。設定を変えれば普通のJISキーボードとして使うこともできる。
QuarterL (ソニー)
1987年に三洋やソニーなど当時の弱者連合(AX協議会)によって策定されたAX仕様に準拠する配列。IBM101キーボードを基にしているため現在のキーボードと似ているが、いくつか違う点がある。漢字キーは右Alt、英数カナキーは右Ctrlとスキャンコードが同じで、ATモードではこれらが右Alt/右Ctrlキーとして振る舞う。
5576-002型 鍵盤 (日本IBM)
1988年にPS/55モデル5550-S/Tとともに発表。IBM本家のPS/2との統合を図った。現在主流の日本語キー配列の元になった5576-A01と似ているが、前面(Alt)キーが左にないことと、いくつかのキートップの表記や特殊キーの配置が異なる。
5576-A01型 鍵盤 (日本IBM)
1991年にPS/55Z用キーボードとして発表。OADG 106キーボードのリファレンスモデル。Winキーがないことを除けば、現在の日本語キーボードとほぼ同じ。IBMMKKで使われていた漢字番号や全候補キーなど、現在では使われなくなった表記が見られる。
PS/55note 5523-S (日本IBM)
1991年に日本IBMが初めてコンシューマー向けに発売したノートPC。ThinkPadの元祖と言えます。
Latitude XP (デルコンピュータ)
1994年発表。まだMS-DOS 6.2/V + Windows 3.1の時代ですが、長方形のエリアにきっちり収まっている点やFnキーを使ったショートカットキーがある点など、驚くほどに今のノートPCと変わりありません。
漢字鍵盤 (日本IBM)
PCが登場する前のものですが、世界的に見ても珍しいキーボードが日本IBMの漢字鍵盤でしょう。写真は用意できませんでしたが、ネットにはありました。
この写真はIBM5550用のハードのようですが、漢字鍵盤自体はそれより前のIBM8100情報システムやIBM5924-T01漢字穿孔機に付いていました。多段シフトキーを使って2500種以上ある文字を直接選んで入力するものでした。かな漢字変換がまだ研究段階にあった時代ですね。
番外編 ペン入力装置
ペンタブレットやタッチパネルを代表とするタッチ入力は最近普及してきた印象がありますが、実はマウスよりも先に一般に出回っていった入力装置です。使い勝手に難があったことと高価だったことから、しばらくの間はCADなどの特定用途でしか使われませんでした。ペン入力についてはあまり詳しくないのですが、調べていけばこれまた奥深い歴史がありそうです。
グラフィックタブレット (アップルコンピュータジャパン)
AppleIIの純正ペンタブ。発売時の価格はなんと288,000円!これが発売された時点ではまだマウスはありませんでした。こちらの方のページで内部などの詳しい写真を見られます。
→ 1979 Apple II Graphics Tablet - Vintage, Accessories, Apple II - AppleToTheCore.me
TOSBACデータシステム600 ANVIL-4000製図タブレット (東芝)
CAD/CAMシステム MCS ANVIL-4000 のタブレット入力装置。
MELCOM Officeland 500 (三菱電機)
鮮明な写真がありませんでした。CAD用の入力装置でしょうか。
HP-9000 (横河ヒューレット・パッカード)
写真はライトペンという入力装置で操作しているところ。ライトペンはPC市場においてもPC-8001の周辺機器として昔からあったというのだから驚きです。
PenACT MBC-P100J (三洋電機)
1993年発売。Windows for Penの日本語版(日本語MS-Windows for Pen Computing Ver.1.0a)を搭載したペンコンピュータ。入力は電磁誘導型タブレット+コードレスペン。CPU 386SL 25MHz、RAM 4MB、白黒液晶、640x480ドット、HDD 40MB、連続動作3時間、W297xD225xH47.9mm、1.7kg、価格は47万5000円。Windows XP Tablec PC Editionが発売される10年も前にこのようなタブレットPCがあったんですねー。
ここでは取り上げきれませんが、ワープロのキーボードも今の常識と違ったところがあって面白いです。