
ビジュアルノベル『こころリスタ!』(Q-X / 2015年)の感想。18歳未満の方の閲覧はご遠慮下さい。
なぜ10年前のマイナーなこの作品を選んだのかというと、昔の画像板で見かけたある一枚絵が気になってその元ネタを調べたらこれにたどり着いたわけだけど、最初はざっと流し読んで終わらせるつもりだった。それが、題材が今の時代にハマっているのか意外にも良くて、少し見入ってしまったわけ。
仮想空間という題材
2015年というとSAOのアニメ2期が終わった直後くらいで、本作がその影響を受けたことは間違いない。しかし、この年のVNって他に何があったか。調べてみると、『サクラノ詩』『ランス03』『うたわれるもの 偽りの仮面』『時計仕掛けのレイライン』『STEINS;GATE 0』といった人気作のリメイクや続編があり、新作は『ピュア×コネクト』『サノバウィッチ』『イブニクル』『ソーサリージョーカーズ』といったところ。私はほとんど未プレイで気付かなかったけど、意外に手堅いビッグタイトルが並んでいるな。
私がプレイしたことのある中でこれに近い作品だと、前年の『ココロファンクション! NEO』がある。これも仮想現実のAIが現れたり仮想世界に入ったりすることはあるが、使い方はあくまで電話の延長にあるコミュニケーションツールだった。2016年の『ナツイロココロログ』は仮想世界のアバターを通した生身の人間によるコミュニケーションのみだが、ヒロインが主人公をAIと勘違いして別の性格を見せている状況はより近い。本作は仮想世界のアバター(作中ではラウンダーと呼ぶ)が創造者(マスター)の手を離れている間は自律AIで意志を持って仮想世界をさまよっているという点でそれらと違う。ここに色々な可能性を感じて期待が持てる。
パッケージ
オンライン購入のため未評価。
グラフィック
立ち絵のクセが強すぎ。これだけでこのゲームは色々損しているんじゃないかと、最初は思っていた(だんだん見慣れる)。真面目な告白シーンでもこの立ち絵を見ていると吹くわ。ギャグマンガ展開や仮想世界のポップな空間には似合うけども、本作では仮想世界はあくまでメインではないし。もしかして、メインヒロイン6人で、さらに仮想アバターでキャラクターの数が実質2倍になっているから、質が落ちてしまったのか?一枚絵は悪くないだけにもったいない。プレイ前まであんまり予期していなかったけど、縛り上げのCGが5枚くらいあって、クリエイターの趣向が色濃いなと思った。
シナリオ
ネット世界やAIという題材でストーリーのバックグラウンドはいくらでも深める余地があると思うんだけど、本作は深く考えさせるような文学的作品とすることよりも、ルートの違いでストーリー展開を多彩にすることに割いている。その上、「こころリスタ」(以下、リスタ)でハプニングが起こりやすい好都合な状況になっているので、ライトノベル的なノリになりがちだけど、ルートによって展開が違うから飽きないという意味では良い。このセクションもシナリオ全体というよりキャラを中心に書くことになると思う。
一応、本作は同ブランドの過去作である『こころナビ』と若干のつながりがあるらしいが、こちらは2003年発売でキャラデザも時代を感じるので、いま改めてプレイするモチベがちょっとな。
※この先、重大なネタバレを含みます。
さち
主人公の親友でもある兄がいて、その兄に一方的にベットリという正真正銘ブラコンで付け入る隙がない幼馴染み。それを、クリスマスイブの日の主人公の勇気ある一歩がどう動かしていくのかが見どころ。同級生の幼馴染みなのに後輩っぽく、妹よりも妹らしくなるところがかわいい。
仮想世界『IRIS』ではラウンダー『ペンペ』を作り、自警団としてIRISで不正をするユーザーを取り締まっている。ペンペはマスターと同じく正義感を持って行動するが、テンションがより高い。
ペンペとマスターのさちがフュージョンした状態でHするシーンがある。本来、フュージョン状態ではラウンダーの自律AIは完全に引っ込むはずが、リスタ暴走の影響で生身の人間(マスター)とラウンダーが感覚を共有するという嬉しい好都合。ただ、この状況は異常だということで事後すぐに仮想世界へのダイブを禁止し、その後しばらくラウンダーが物語に登場せず無かったことになるので、なんか勿体ない展開な気がした。これがこのゲーム中でラウンダー同士で発生する唯一のHシーン。てっきりこれは本作のメインの見どころになるかと思っていたけど、数ある展開の一つになってしまったことが残念、というのは私のわがままかな。
メルチェ
ヒロイン中、一番低身長で、一番乳がでかいという反則的体系を持つキャラ。乳しか印象にない?いやいや、このルートでは現実世界での出会いと話し合いの大切さを説くというハートフルなストーリーとなっている。
ラウンダーの自律AI『魔ア子』がお笑い好きの不思議ちゃんという特徴が際立っていて、これまた愛したいキャラだ。本作ではラウンダーとして主人公との関わりが一番深い子でもある。これでこの子については敵対するHシーン (!?) しかないなんて、その展開の意外性は褒めるべきだろうけど、なんか嫌だ(願望)。
雪音
主人公が鈍感なだけで他ルートでは雪音が主人公を好きなことはあからさまに現れているので分かりやすい。それでいて、妹として振る舞うか、普通の恋人として振る舞うのかを迷うところがいじらしい。ただ、どっちかというと居候の幼馴染み感が強い。
マスターとは性格も容姿も真逆のラウンダー『ミューティ』がいて、本作で唯一の人間とラウンダーとのHシーンがある自律AIでもある(ペンペはさちとフュージョンしているので微妙な線)。エピローグで雪音とミューティが現実でフュージョンするというトンデモ展開が待っている。
真理歩
キャラデザのせいで目立たないが、公称169cm(本当はもっと高い)という高身長の先輩。制服が進学校時代という設定で他のヒロインと異なる、という都合のいい設定。
出会いの印象が悪くてツンツンになっているが、ルートに入るとデレが見えてきてかなりかわいい。共通ルートの部室で裸になるというめちゃくちゃな事件が起きたが、ルート分岐から告白、デート、エンディングまでの流れを見てて思うのは、本作で彼女が一番真っ当なヒロインしていると思う(が、本作で言う「真実の恋」からは離れているのだろう)。
星歌
幼少期から雪音の真意に気付いて兄への思いに遠慮しているが、実は性欲が強いのを自分で発散している。ルートに入る前から一番エロいのはその反動か。Hシーンはヒロイン中最多の5シーンで、それと別枠でキラリの縛り上げCGがある。
アルファ
IRISでは一応ラウンダーという扱いだが、生まれてまだ数年でマスターも不在で、色恋をネット上の聞きかじり知識でしか知らない。人間ともラウンダーとも違う不思議な存在で、本来なら交わるべきでない関係。雪音や星歌のルートで「真実の恋」を見つけたと語ったアルファが、本当の意味で真実の恋を知ったのがこのルートかもしれない。アルファの態度がゆっくり徐々に変わっていくところが見どころ。
ラウンダー
先に書いたように、マスターとのフュージョン状態ではラウンダーの自律AIは引っ込むが、マスター不在時はラウンダーが自律して動き(セルフモード)、他のラウンダーやマスターと会話することもできる。主人公やヒロインだけが持っているリスタを使うと、セルフに見せかけてフュージョン状態で過ごせるほか、本来なら禁止されている性的接触が可能。ここから、作中のこの場面のラウンダーはフュージョンなのかセルフなのかが気になってくる。
私にとってラウンダーの正体判明順は魔ア子→ペンペ→キラリ→ミューティ→舞夢だった。キラリまでは共通ルートで「あり得るな」程度の自信で推測。ミューティと舞夢は個別ルートに入るまで正体が分からなかった。
魔ア子とミューティは分かりやすくて、フュージョンモードと判明している時以外はほとんどセルフで間違いない。特に、魔ア子が温泉で裸になっている最中にマスターが入る場面が分かりやすい。キラリは最初からほぼフュージョンだな。ペンペがセルフに見えて意外とフュージョンもあるから、難しいな。舞夢は本当に分からない。フュージョンのように見えるけど、最初のキラリの活動に反対する姿勢はセルフっぽいし。真理歩ルートで舞夢が語っているように、真理歩の場合はフュージョン状態でも舞夢の意識に強く影響されているようなので、基本的にセルフとして動いているという見方もできる。
ところで、この考察はあまり役に立たない。というのも、これは究極のネタバレかもしれないが、このゲームにはラウンダーとのルートはない。共通ルートで舞夢と「ラウンダー同士で性的接触できたらどうなるか」みたいな会話があったと思うが、結局この話はこの先も掘り下げられていない。さちルートのペンペと雪音ルートのミューティとのHシーン会話で一瞬触れたくらいか。普通のフルプライス1作完結作品でヒロイン6人のルート分岐があるから、ボリューム上そこまで盛り込めなかったのだろう。そこは期待外れで残念だった。
システム
システムはクイックセーブ×1個、セーブスロット10個×10ページ、速度や音量などのオーソドックスな設定項目。バックログジャンプ無し。(2026/10/17完了、No.115)