Image: 210618 地絡方向継電器の理解に苦しむ

地絡方向継電器の動作原理が分からなくて調べてみたが、解説しているサイトが少ないものだから、なかなか理解に繋がりにくい。強電分野の用語を調べるとたいてい電験三種の話が出てくるが、保護継電器の話って名称や概略が出てくる程度で、あまり深掘りされることがない。電験二種以上の二次論説問題の参考書でも、そこまで重要事項として扱われていない。

地絡過電流継電器 (OCGR) は三相のバランスが崩れたときに生じる零相電流を見ているという、感覚的にも理解しやすいもの。地絡方向継電器 (DGR) を使用しているところとなると、使用場所が高圧の受電設備の他に変電設備を持っていて、かつ、その変電設備までの亘長が長いところだから、比較的規模の大きい工場や施設に限られる。特高の送配電分野では理解を避けて通れないのだが、高圧受電に関する本やサイトであまり触れられないのはそういう理由か。

動作原理

DGRに関する説明はこちらの方が書いているサイトが分かりやすかった。

【高圧】地絡方向継電器(DGR)について | 電気・計装・制御の勉強部屋 (#1)

あー、同じような図を見ながら職場の先輩からざっくり教わったような記憶が…今の職場には頼れる人がいないのが辛いなぁ。工事や点検する人間は、設計者が決めた整定値の通りに設定・試験を行うだけなので、計算式を知らずともこの内容さえ知っていれば十分だろう。

試験方法

ムサシインテック、双興電機、デンソクテクノなどの試験機メーカーが作っている無歪み電源とデジタルカウンター、汎用の電圧計、電流計、位相計を組み合わせて使用する。私が使っていた機材は古かったのでそのようにやったんだけど、今はこれらが一体になったリレー試験専用の装置も出ている。

数字の話

地絡電流や位相の計算とDGRとの関わりの話になると、途端に情報が少なくなる。

一線地絡電流を複素数で算出する方法自体は電験二種以上で扱われる。DGRが絡んだ細かい話は先のサイトの参考サイトが参考になる。

ここまで挙げた3つのサイトはそれぞれDGRの動作領域が違って描かれているところが、混乱の元になりそうだ。#2は誘導円板を用いたアナログリレーの動作特性で、私もこういうイメージで教わった記憶があるが、今の主流であるデジタルリレーでは#3の動作特性になる。ただし、従来品との互換性のためにアナログリレーと同じ特性を持つデジタルリレーもある(東芝Vシリーズなど)。

#2より、一線完全地絡時の各回線のZCTが検出する零相電流は次のようになる。

$$ 3\dot{I_{01}} = (G_n + j3 \omega C_2 + j3 \omega C_3 +… + j3 \omega C_n)\dot{E_a} = (G_n + j3 \omega C_2 + j3 \omega C_3 +… + j3 \omega C_n) \cdot (-\dot{V_0}) $$

$$ 3\dot{I_{02}} = -j3 \omega C_2 \dot{E_a} = -j3 \omega C_2 (-\dot{V_0}) $$

$$ 3\dot{I_{03}} = -j3 \omega C_3 \dot{E_a} = -j3 \omega C_3 (-\dot{V_0}) $$

$$ 3\dot{I_n} = -j3 \omega C_n \dot{E_a} = -j3 \omega C_n (-\dot{V_0}) $$

ここで、3I01は事故回線ZCT1を通過する電流で、Gnは中性点抵抗のコンダクタンス(Ωの逆数)、ω= 2πf(fは周波数で、50Hzまたは60Hz)、Cnはケーブルの静電容量。他の健全回線は3I02、3I03以後すべて同様となる。

CVケーブル3芯60sq亘長200mが2回線の高圧配電を想定する。6600/110のEVT二次側に40Ωとすると、一次側換算の中性点抵抗は、

$$ Rn = \frac{1}{9} \cdot ( \frac{6600}{110} )^{2} \cdot 40 = 16000 \; \mathrm{[\Omega]} $$

ケーブルの静電容量は#3の第2のページを見ると3C=1.17(μF/km)とあるので、電源周波数を60Hzとすると、一線完全地絡時の事故回線ZCTを通過する電流は、

\[ 3\dot{I_{01}} = (\frac{1}{16000} + j2 \pi \cdot 60 \cdot 1.17 \cdot 10^{-6} \cdot 0.2) \cdot \frac{6600}{\sqrt{3}} = 0.238 + j0.336 \; \mathrm{[A]} \]

この複素表示をベクトル図で描いて、DGRの動作特性図に当てはめれば良い。

完全地絡ではなくて地絡抵抗がある場合、直列の抵抗が加わることになるので計算がややこしくなる。地絡抵抗を0から∞に変化させたときのZCTの零相電流をプロットしたグラフは次のようになる(右方向を-Vo基準に、横軸が実数軸、縦軸が虚数軸、反時計方向を進みとする)。

Image: 一線地絡時零相電流

グラフに描いていないが、0と各点を直線で結んだ長さがそれぞれの地絡抵抗におけるベクトルの長さ(=電流値)になる。アナログリレーの位相特性と照らし合わせると、最大感度角が45°や60°に設定される理由に納得がいく。一方、デジタルリレーの場合は位相角の範囲内であれば電流の動作値は一定なので、最大感度角はそこまで重要じゃなさそうだが、どうなんだろう。

抵抗接地系統の場合は?

ここまでは非接地系統の話になる。配電線の対地静電容量が大きい場合は、10A接地系、30A接地系なるものが使われるらしいのだが、この辺りのキーワードで調べても全然情報が出てこない。いよいよマニアックな話になるのか。回路図や機器構成のイメージがわかない。この辺りをもうちょっと深く勉強していきたい。

(トップのグラフ画像は保護継電器 Vシリーズ 電子カタログ|東芝産業機器システム株式会社より。)


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