空気遮断器と磁気遮断器の欠点
※この記事は興味本位から調べて書いたものであり、恐らく正確性を欠いています。
電験や電気施工管の資格本を読んでいると、遮断器の種類を解説しているセクションで空気遮断器(ABB, Air-Blast Circuit Breaker)や磁気遮断器(Magne-Blast Circuit Breaker, MBB)というのが出てくることがある。これらは30年以上前に製造が終了し、メーカーの保守も終了している。短期間で消えていったABBやMBBはどのような特徴と欠点があったのか。
私はどちらも実物を見たことがない。油遮断器(OCB)は33kV回線で見たことがあるが、あれは古いと言っても製作数が段違いに多いので、そこまで珍しいものではない。ABBは「10年くらい前に一度見たことがある」と職場の大先輩から聞いたのが10年前のこと。かなり数は減ってきたようだが、東電PGの房総変電所など、現在でも使われているところはあるようだ。
日立評論 Vol.76, No.4, p.312, 1994『電気設備の最新技術動向』より。
電気協同研究 Vol.50, No.2, 『変電設備保全の高度化・効率化』より。
ABBは1950年代後半から1970年代にかけて特高遮断器の大容量化とともに技術開発が進み、1960年代後半がピークだったが、1970年代からガス遮断器(GCB)やそれを組み込んだGISに移行した。
OCBは安価だが火災の懸念があり、MBBはOCBより安全性・耐久性に優れた高圧遮断器として1960年代からビルやインフラ施設を中心に広がったが、1970年代から真空遮断器(VCB)へ徐々に移行した。ABBもMBBも主回路の開路時に生じるアークを吹き飛ばす(ブラスト)するという点で共通する。それが空気か電磁気かという違いだ。
どちらもメーカーでは既に製造を終了して技術者も定年退職し、一部の点検業者や電力会社の保守部門がメーカーから技術供与を受けて保守を続けている状況にある。
→ 屋内空気遮断器(ABB)更新促進のお願い:受変電機器・システム:日立産機システムより。
電気鉄道 Vol.22, No.10 (1968), 『最近の交流しゃ断器 V 空気しゃ断器(ABB)(その2)』より。
かなり特徴的な見た目をしている。開閉機構とは別に空気を充填して送気するための機構が必要になる。大容量化するには主接点を3点切りや4点切りなど直列に増やす必要があるが、各遮断点の電圧分布を均等にするために抵抗やコンデンサ(右図のM字部分)を並列に接続する必要も出てくる。圧縮空気を封じ込めるための支持がいし気密パッキンは6~12年毎の定期交換が必要。機構が複雑なため地震に弱く、東日本大震災で故障した遮断器の多くが空気遮断器だったことは記憶に新しい。
MBBは接触ブレードが外れたら吹消しコイルに電流が流れるように作られており、その磁気駆動力でアークをアークシュートの上方に動かし、ジグザグに形成されたアークシュートの中を通すことで冷却消弧される。
東芝レビュー Vol.24, No.4 (1969), 『マグネブラストしゃ断器 Cシリーズ』より。
サイズ感が分かりにくいが、ケースの奥行き(上図ケースの上辺の長さ)が70cmくらいになる。アークシュートでかなり場所を取るのが分かる。大きさや重量の問題から、磁気遮断器のキュービクルへの格納は2段が限界だったが、真空遮断器では軽量化・縮小化により3段まで格納できるようになった。
空気遮断器(ABB)の欠点
- 圧縮空気発生装置が必要なため、大型になる。
- 排気音による騒音が大きい。
- 他に比べ地震に弱く、耐震性能を高めるために、がい管を補強する必要がある。
- 弁類など交換部品が多い。
→都市部の変電所を中心に、GCBやGISへの移行で静音化や縮小化が進む。
磁気遮断器(MBB)の欠点
- 小電流を遮断するには空気吹きつけが必要。
- アークシュートや空気吹付ブースターが必要なため、真空遮断器に比べて大型になる。
- 適用電圧は15kVが限界。
→VCBへの移行でスイッチギヤの省スペース化や低廉化が進む。固体絶縁スイッチギヤ(SIS)の適用電圧は現在では84kVまで拡大。
ちなみに、磁気遮断器の末期の製品であるAKTC-6M25Bのサイズは450x1080x620 (WxHxD)、重量は320kgに対して、最新の真空遮断器VHB-6M20のサイズは467x625x458、重量は81kgとなっている。