戦前の配電盤の種類
東芝のマグネブラスト遮断器について調べていたとき、「コンパートメント形配電盤」という用語が出てきて、これについて色々調べていたら戦前の配電盤に興味を持ったので調べてみた。
現在の東芝の前身である芝浦製作所が1934年(昭和9年)に発行した『芝浦製品型録』という資料に配電盤のカタログが載っている。
配電盤材料の種類及び適用
大理石
普通配電盤に用いられ、40mm厚さ、8mm面取のものを使用し、艶消黒塗仕上げにするのが標準であります。但し白磨のものも使用します。当所では水戸産及び長州産のものを使用して居ります。又大なる機械的衝撃を受ける場合例えば大電流気中遮断器取付のものには50mm厚さの大理石を使用します。大理石の絶縁耐力は3500V以下であって、之に取り付ける器具の最大電圧は3500Vとなります。
エボニーアスベスタス
アスベストファイバーと他の絶縁材料及び耐水材料との合成物で、機械的強度及び絶縁耐力が大で、不燃性のもので、高熱に対しても分解する事がありません。硬度高く而も加工容易で、表面を綺麗に仕上げることが出来、湿気及び油に充分耐えます。大理石より機械的強度及び絶縁耐力の高い事を要する処に使用され艶消黒塗仕上を施して居ります。普通25mm厚さ、6mm面取とし、特に機械的衝撃を受けるる処には38mm厚さのものを用います。絶縁耐力は4500V以下で、之に取り付ける器具の最大電圧は4500Vであります。大理石に比して軽く、且盤面の利用率が大であります。
鉄板
材質が最も堅牢で、纏まりよく、軽量である点で最も近代的なものであります。特に平滑に圧延した3.2mm厚さの鉄板を使用し、艶消黒塗仕上を施します。盤は一枚になって居り上下の縁にはフランヂリブを付け剛直にし、裏面に配線します。充電部分の取付には絶縁ブッシングを用い、特に油入遮断器の様に振動の加わるものには補強フレームを付けて之を丈夫にしておきます。
鉄枠盤(スケルトン パネル)
之はアングル鋼を組み立てた鉄枠の配電盤であります。盤の表面から接続が出来る事、据付面積を甚だしく節約できる事、全体が軽い事、構造が堅牢な事、器具取り付け面積えを有効に使える事等の特徴があります。主として遮断器、接触器、開閉器を取り付けるに適して居ります。従って一般工業動力方面及び船艦内配電盤等に用いられ、精密動作をなす計器、継電器等を取り付けるには不適当であります。
配電盤の形式
垂直型
ベンチボード型
配電函(Cubicles)
閉鎖車台型配電盤 (Safety Enclosed Truck Type Switchboards)
MC型装甲開閉装置 (Metal Clad Switchgear)
後に主流となるメタルクラッドやスイッチギヤと呼ばれる形態。
屋外配電函 (Outdoor Switch Houses)
それで結局コンパートメントとは何を意味するのかというと、機器や相間をコンクリートなどの耐火壁で区画(部屋)割りすることやその施設・構造を指すようです。
当時は製造や検査の体制が十分でなく、遮断器や断路器などが爆発・炎上する懸念があった事から、特に発変電施設で母線間や機器間に隔壁を設ける事がありました。この懸念は機器の信頼性が向上した戦後にはそこまで心配する必要はなくなりましたが、屋内設備では油を大量に搭載する変圧器だけは別の部屋に設置されるケースが多いように思います。