30年くらい前の古い商業施設の建築図面を見ていたら、バックヤードに「シスター室」という部屋を見つけたが、これは何だろう。礼拝堂?そんなまさか。宗教的な意味合いは無さそう。

デパート業界では、勤続年数が数年以上のベテラン店員が同僚を指導したり相談に乗ったりする。この教育係がシスターと呼ばれる。役職上は平社員と差異はない。強いて言えば、先輩後輩という上下関係が生まれるかもしれないが、それは職場の人間関係によりけりか。

今でも「ブラザーシスター制度」として知られているようだけど、この名称や制度は60年以上前から存在した。

百貨店のシスター制度とは(『婦人と年少者』1962年2月号29頁より)

昨年11月の産経新聞に「BG十年選手―シスター制度」という見出しで紹介された記事は、最近の百貨店の女子店員の中で、勤続年数の比較的長い、優秀な人達の登用という点で注目された。

西武デパートでは、ショッピングシスター制度を設け、まず入社3年以上10年くらいのベテランの中から過去3回の人事考課が優秀で、リーダーシップを身につけている人達を各売場の課長が推薦し、人事課がこの中から選考しシスターにする。西武デパートでは現在約70名のシスターがいるが、一般の女店員より上質のスーツを着せられ、胸にSの字のバッジをつけている。Sはスマイル・スピード・シンセリティーと、シスターの頭文字Sをとったものである。

彼女たちは研修会を週に1回開き、販売上の工夫や、後輩の指導の仕方、アフターサービスのやり方などを話し合い、商品知識の講習や英会話のレッスンなども受けている。しかし、シスター手当というようなものはなく、職能給が一般の店員より七百円ないし千円程度多いだけである。

別に命令権はないが、他の人たちの模範になる人であるから、自然、同僚たちから相談されることが多い。また、仕入れ上の意見を聞かれたり、お客の相談に乗ったりする。そのほか、年寄りのお客さんを駅まで送ったり、お客が買い物をしている間、子どものお守りをしたりしてサービスすることもある。

この制度は米国のメーシー百貨店のレッドスターにならったもので、西武デパートでは発足一年であるが、売上は上昇する一方だし、お客からも評判が良いので、各売場に一人ずつおき、全店で百人くらいに拡げる予定とのことである。なかなか責任のあるポストだけに、この程度の手当ではと敬遠する向きもあるそうだが、これを足がかりに専門的な実力をつけ、係長・課長などのポストへ女性が進出できるようにもっていけば、この制度も希望が持てるものと言えよう。

労働環境の改善ポイントを欧米から学ぶ姿勢は、60年前から変わらないな。


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