Image: Windows 3.1日本語版の仮想環境を比較 (2022年版)

PCエミュレーション環境はこの10年で大きく変わっている。それに加え、英語版のDOSと日本語版のDOS/Vでは状況が大きく異なるし、日本語話者にとっては日本語のドキュメントやインターフェイスや充実しているかどうかも使い勝手に関わる。

まず、使用目的ははっきりしておいた方が良い。英語DOSゲームをプレイするならここにあるよりもっと適したエミュレーターがあるだろうし、Windows 3.1対応ソフトを使うことが目的ならWindows 98の上で動かした方が色々簡単に済む。ここで敢えて面倒なDOS+Windows 3.1環境を選ぶ人は、Windows 3.1を動かすこと自体が目的か、何らかのこだわりを持っている人だろう。

今回の評価はWindows 3.1の使用を重点に置いている。

評価比較

私の使用経歴や巷の評判から有用そうなPCエミュレーターをいくつか選んでみたが、残念ながら実機 (DOS/Win98機) の代わりになり得る精度のものはなかった。ただ、DOSBox-XでWindows 3.1日本語版が動いたのは意外な発見だった。DOSBox-Xの開発は現在進行形で盛んに行われているので、今後のバージョンアップにも期待が持てる。

評価項目 VirtualBox VMware DOSBox-X QEMU 実機
エミュレータ使用バージョン 6.1.4 16.2.2 0.83.21 2.7
UIの操作性(Windows上) ×
IBM DOS J5.0/V(但し、DOSBox-XはDOS/Vエミュレーションを使用)
セットアップの容易さ
EMM386によるUMB自動検出 96KB
(C8-DF)
76KB
(C9-DB)
68KB
(CE,D0-DF)
96KB
(C8-DF)
UMBCHKによるUMB空き検出 80KB
(CC-DF)
80KB
(CC-DB,
E4-E7)
96KB
(D0-E7)
160KB
(C8-EF)
テキスト表示(/HS=ON) × ×
テキスト表示(/HS=LC)
ソフト:VZ Editor ×
ソフト:パーソナル・エディター ×
Windows 3.1 (マイクロソフト版)
VGA 640×480 16色
↓使用ディスプレイドライバ svga256.drv svga256.drv s3trio.drv 54x6.drv mgax64.drv
SVGA 640×480 256色
SVGA 1024×768 256色
サウンド PCM再生
サウンド MIDI再生
サウンド CD-DA再生 × × × ×

VirtualBox

比較表だけ見れば他より優れているように見えるが、他に比べればマシな部分もあるというだけで、エミュレーション精度は完全ではない。

まず、通常の方法ではセットアップ画面が表示されない不具合に遭遇することになる。$DISP.SYSのハードウェアスクロールが有効になっていると画面が暗転する。ルートディレクトリにあるCONFIG.SYSを編集して$DISP.SYSに/HS=LC(ラインコンペア・スクロール)を加えれば解決可能だが、初心者にはハードルが高い。MS-DOS 6.2/Vではラインコンペア・スクロールが標準になっているらしいので、この不具合は発生しないと考えられる。ただ、6.2/Vはアップグレード版かOEMでしか配布されていないので、うるさいことを言えばライセンス的にどうなのかという問題がある。

Windows 3.1のディスプレイドライバーはWfW3.11用のVESA SVGAドライバーにJapheth氏の汎用化パッチを使用して256色高解像度表示が可能。ただし、描画が非常に遅く実用に支障をきたす。サウンドドライバーはAWE64用のものが使用できるが、PCM再生とFM再生のみ対応。MIDIはFMによるエミュレーションで再生できるが、音が出るという程度の期待に留めておこう。

Windows 3.1用ゲームとしてMYST 1.0Jをプレイしてみたが、最初の本を開く画面から進もうとするとフリーズする。

VMware Workstation Player

私自身の今までの経験と他の人の話を合わせてみると、VMwareのエミュレーション精度はホストの環境に大きく左右されるようだ。特にグラフィック周りで、あるPCでは正常に動作するのに他のPCでは不具合が発生するケースが見られる。

UIはディスク入替の度に仮想マシンのプロパティ画面を開く必要があり、若干煩わしい。

DOS/Vはテキスト画面の一部が更新されない不具合あり。VZ Editorも同様の不具合で使い物にならない。パーソナル・エディターではPageUp/PageDownによるページ切り替えを使用しなければ正常に表示できるので「△」とした。Windows 3.1の環境さえ安定させてしまえば問題ないが、それまでDOSで作業するときに困る。

Windows 3.1のディスプレイドライバーはWfW3.11用のVESA SVGAドライバーに「仮想な背中」サイトのVMware対応化パッチを使用して256色高解像度表示が可能。VirtualBoxと同じドライバーとは思えないほど描画速度は良好。ただし、VMwareのゲスト画面領域が1024×768固定のため、640×480表示では画面が左上に寄って逆L字の黒い領域が残るという問題がある。サウンドドライバーはVirtualBoxと同様。

MYST 1.0Jは音付きでプレイ可能。CD-DA再生には対応していないので、他のゲームによってはBGMが再生できない可能性あり。

DOSBox-X

UIは機能が多いのと.confファイル(設定ファイル)との互換性のため、設定メニューの構造が複雑でディスクイメージのマウントもクセがあり、初心者にはとっつきづらいことと思う。また、日本語のドキュメントがまだ不十分。

DOS/Vはパーソナル・エディターで表示されるテキストが全て文字化けする不具合あり。IBM DOS J5.0/Vに付属する類似のエディターであるTEは、カーソル表示がずれる問題はあるもののテキスト閲覧には使える。VZ Editorの動作は問題ないように見える。

Windows 3.1のディスプレイドライバーは昔S3 Graphicsのサイトに上がっていたS3 Trio64(Windows 3.1日本語版用)のドライバーを使用。描画速度はエミュレーターの中では最速。サウンドドライバーはVirtualBoxと同様だが、MIDI外部出力は使用可能。

CD-ROMドライブのエミュレーションに難あり。そのため、MYST 1.0Jはインストールできるが、ゲームディスクを検出できないというエラーが出て起動できない。

QEMU

操作は基本的にコマンドベース。ディスクイメージの切り替えもコンソールからコマンドで行う必要があり、煩わしい。それでもBochsに比べればマシか。

DOS/Vはスクロールでテキスト表示が残る不具合あり。/HSオプションでは解決不可。しかし、なぜかVZ Editorとパーソナル・エディターはどちらも正常に動作。Windows 3.1のディスプレイドライバーは日本IBM版Windows 3.1用のCirrus Logic GD-5446ドライバーを使用したが、システムフォントが表示されなかったりされたりする不具合あり。サウンドドライバーはVirtualBoxと同様。

あとがき

DOSBox-Xが製品版DOS無しでWindows 3.1が動いたことは意外だった。まだ開発がスタートしたばかりで使い方があまり知られていないので、いずれセットアップ方法を簡潔に書こうかと思う。


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