Image: AV化ファミコン映像で見るキャプチャ設定のNTSC_MとNTSC_M_Jとの違い

XCAPTURE-1のドライバー設定、ビデオデコーダーの中に標準ビデオという設定項目があって、ドロップダウンリストでPAL, NTSC_M, NTSC_M_Jなどから選べるんだけど、PALとNTSCの違いは分かるとして、NTSC_MとNTSC_M_Jの違いは何なのか。コンポジット映像(ビデオ)入力の時だけ映像の明るさが変わっているようだ。しかし、私が持っているノーブランドのVGA変換器にはそのような切り換えができる設定はない。この2つが具体的にどう違うのか、調べていた。

Wikipedia日本語版のNTSCの記事によれば、北米その他における標準規格に対する日本における実装を「NTSC-J」として、その違いは以下のように記されている。

アメリカやその他の国々で採用されているオリジナルのRS-170A/SMPTE-170M規格では最低輝度の黒を表すセットアップレベルは7.5IREと規定されている。 日本のNHKでは黒レベルとブランキングレベルが等しく0IRE (=0V)、民放では5IREとなっており、両者の違いはごくわずかであり、多くの一般人は存在自体に気が付かないであろうレベルの差異ではあるが、業務として映像に携わる人々にとっては無視できない差違であり、業務用機器では日本規格と米国規格とで製品ラインナップが別になっていたり、明示的にセットアップレベルを切り替えるスイッチが付いていたりする。

Wikipediaにありがちなクソ長い文章と出典なしで、信憑性は怪しいが、どうやら「真っ黒の基準とする信号レベルが違う」ということらしい。もっと詳しく正確そうな情報は下記ページが参考になる。

これを「日本における実装」と拡大解釈して良いのか?この話にはちゃんと根拠があって、1991年に当時の郵政省が定めた『標準テレビジョン放送(デジタル放送を除く。)に関する送信の標準方式』(平成3年7月17日郵政省令第36号)の中に次のような規定がある。

第9条(映像信号及び同期信号のレベル) ペデスタルレベルを0、映像信号の白レベルを(+)100とするとき、映像信号の黒レベルは0、同期信号尖せん頭レベルは(-)40とする

違う用語が衝突しているので整理すると、ブランキングレベル=ペデスタルレベル、真っ黒のレベル=セットアップレベルとなる。また、IREという単位は「ペデスタルレベルを0、映像信号の白レベルを(+)100とする」百分率のことだ。つまり、上の条文は「映像信号の黒レベルは0IRE、同期信号尖せん頭レベルは(-)40IREとする」と言い換えることができる。

次はAV化ファミコンでスーパーマリオブラザーズをプレイし、左は「NTSC_M」、右は「NTSC_M_J」でキャプチャーした画像。

Image: Super Mario Bros recorded as NTSC video Image:  Super Mario Bros recorded as NTSC-J video

こちらはNintendo Switch Online版。色合いはNTSC_M_Jに近い。

Image: Super Mario Bros on Nintendo Switch

悪魔城伝説だと暗部の表現に顕著な違いが出る。左は「NTSC_M」、右は「NTSC_M_J」でキャプチャーした画像。

Image: Castlevania III recorded as NTSC Image: Castlevania III recorded as NTSC-J

ところで、もっと古い文献を調べてみると、ある時期まで日本は北米NTSCと同じ「黒レベル=7.5IRE」だったらしい。これが、1983年5月30日公布、6月6日施行の郵政省令『テレビジョン放送に関する送信の標準方式』で、俗にNTSC-Jと言われることになる「黒レベル=0IRE」となった。この改正の理由は以下のように書かれている。

従来黒レベルは、同期信号の検出(受信側)を容易にするため、設備規則第37条の6第3号の規定で、ペデスタルレベルを0、白レベルを(+)100としたとき(+)7.5であることとしていたが、黒レベルをペデスタルレベルと同じレベルとしても、現在の受像機は十分同期信号の検出が行えること。また、同じレベルとすることにより、映像信号の平均レベルが上昇し、雑音による画質劣化を防止できること。特に衛星放送の場合は、降雨による減衰に強くなり、従来の黒レベルの場合と比較して、降雨マージンを同一とすれば、受信空中線を小さくできることとなることから黒レベルの値を変更したものである。(『電波時報 1983-04』電波振興会)

つまり、PC-6001(1981年発売)のような古いハードウェアのビデオ出力は「黒レベル=7.5IRE」としている可能性がある。さらにややこしいのは、この省令はあくまでテレビ放送を対象としており、機器はこの限りではない。この違いは画質に直結するので、テレビ(受像機)側もテレビ局ごとに異なる黒レベルを検出してコントラストを自動調整する機能を持つものがあったらしい。結局の所、機器ごとに調べないことにはどちらか分からないということになる。

次は手持ちのAV化ファミコンで、左は全画面が黒、右は映像を表示したときにオシロスコープで計測したコンポジット映像信号の波形。

Image: Waveform of NTSC-J composite video Image: Waveform of NTSC-J composite video

これを見る限り、私のAV化ファミコンの映像出力は「黒レベル=0IRE」、つまり、キャプチャー設定はNTSC_M_Jが適正ということが分かる。


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