オリジナルのファミコンにはテレビ (RF) 出力しかなく、また、AV出力改造を施したファミコンや正規のAVファミコンでは音質が違って聞こえることは既知の通り。ファミリーコンピュータ - Wikipediaには次のように書かれている。
(ロムカセットから)本体に返された音声はさらにRFに変換されて出力される。この回路や部品が本体の製造時期によって異なるため、同じファミリーコンピュータであっても本体によって音量バランスや高音域などの出方が異なる。なお、RF変換の際に高音域がかなり減退している。一部のサウンドトラック製作では音質追求のため、RF変換される前の信号を直接取り出すよう改造された本体を使って収録したものも存在する。
このメカニズムについて深掘りした情報はほとんどないが、その中でこんな記事を見つけた。
つまり、ファミコンのRF変調回路には音の高域を強調するプリエンファシス (pre-emphasis) 回路が欠落しているのではないか。ファミコンのRFモジュレーターを回路図に落とし込んでいる人がいたので、これを見てみる。
→ Schematic of one Famicom RF modulator - nesdev.org
左の#5ピンがメイン基板からの音声入力で、これを見たところ、変調前にプリエンファシスの回路は見当たらない。この場合、ディエンファシス (de-enphasis) 回路を持つテレビで受信したときに高音域が減衰(カットオフ)されると予想できる。つまり、AV出力のファミコンにはテレビのディエンファシス回路に相当するLPF (low-pass filter)回路を加えれば、RF出力時の音声を再現できることになるんじゃないか。
ちなみに、アナログテレビ放送の音声自体はメインチャンネル (L+R) が50から15000 Hz、サブチャンネル (L-R) が50から12000 Hzという、カセットテープより良好な周波数帯域を持っているので、アナログテレビの音質が悪いせいというのは誤りであるし、ファミコンにLPFがあって高音域が減衰しているという表現も語弊がある。
既にデジタル録音したファミコンの音をRF出力相当に劣化させるには、LPFで周波数を2120 Hz、オクターブあたり減衰傾度を6 dBにセットしてエフェクトを掛ける。次のスクリーンショットはAudacityの場合。
周波数帯域の上限2120 Hzというのは固定電話の音質よりも悪く、パススルーの時とは歴然の差がある。