Image: なぜ日本語配列のキーボードに英語表記のキー?

PCのキーボードは日本語配列という割にはBackspace, Enter, Insert, Delete等々の英語表記のキーがあるのは何ででしょう。(写真は以前の記事から流用しています。)

本当に何気なく、ふとその疑問に至ったのですが、よく考えるまでもなく答えは明快でした。「それは日本語キーボードではなく、日本語配列のPCキーボードだから」という一言で済むことです。世界的にもPCで普及している配列は米国英語キーボードがベースになっていて、日本語配列はそれと互換性を持たせつつ、当時の日本市場のニーズに合わせてアレンジしたということです。私見で掘り下げてみます。

今の日本語配列キーボードのベースはOADGによって標準化されたOADG 106キーボードというもので、これは実質的に日本IBMの5576-A01というキーボードそのものです。5576-A01の前には5576-002というモデルがありましたが、この時点ではBackspaceキーは「後退」、Deleteキーは「削除」、Enterキーは「改行」、PageUpは「前ページ」などとなっていました。一方でHome/EndやCtrlなどの英語表記のキーもあります。

日本語表記だったキーはいずれもワープロソフトでよく使われていたであろうキーです。5576-002が登場した1980年代後期は、パソコンにおいてワープロ機能は今でいうExcel以上の重要な位置を占めており、また、パソコンメーカー各社が「日本語処理」をアピールポイントにしていた時代でもありました。日本IBMはパソコンを日本で売るにあたって、単なる米国IBM本社製品の「日本語化」に留まらない「日本化」を施し、全世界でも異例のその独自路線は時にIBM本社から反感を買うほどになっていました。これでも5576-002は5576-001などのさらに旧世代のキーボードに比べれば、米国IBMのパソコンに寄せてきています。

5576-A01の登場はDOS/Vの登場と重なります。DOS/Vは「世界標準仕様の」PCで日本語のソフトが使えることに注目を集めたわけですが、元々は英語圏のIBM PC用ソフトと日本語のソフトが両方動くことや、IBM PC用ソフトの日本語化が容易であることをアピールしていたわけです。しかし、英語圏のソフトでDeleteキーを押せとなっているものが、日本のキーボードでは「削除」キーだったりすると、ユーザーに混乱が生じます。ソフトやマニュアルの日本語化にも一苦労かけます。説明書にキー表記の対応表が書いてあっても、大半の人が説明書をまともに読まないのは、今も昔も同じです。

一方で、日本語入力のためだけに使われているキーは日本語表記のままです。米国英語配列にはこれらに相当するキーは存在しません。日本語入力に使われるキーを除けば、5576-A01は世界標準仕様に準じていると言っていいでしょう。ただし、ここまでの話で触れてこなかった「JIS配列」によって、日本語配列は依然特異なものになってしまっているのですが、その話は長くなるので省略。

ここまではアプリケーションの操作がキーボード中心だった時代の話です。DOS/Vが登場してから間もなくWindowsが普及し、マウスが一般的な入力装置になります。マウスやタッチ操作が普及してキーボードの重要度が低下した今となっては、未だにそのような表記を残しているものは「惰性の産物」と言えるのではないでしょうか。


長年PCを使ってきた人にとっては、今さら何を?と言いたくなる話ですが、皆さんが初めてPCのキーボードを触った時はどう感じましたか?初心で思ったことや感じたことというのは、後で思い返してみると新鮮で面白いものです。

私が初めて触ったキーボードは、パソコンではなくシャープの「書院」というワープロ専用機でした。書院は液晶ディスプレイの機種が広く販売されたようですが、私のはCRTディスプレイとFDD、プリンターが一体になったごつい奴です。「改行」「後退」「タブ」「シフト」「一字抹消」というように、キーはことごとく日本語表記でした。オークションから写真を借用するのは気が引けますが、こんな感じ。

Image: シャープ 書院 キーボード
ヤフオク! - SHARP WD-A610

初めてPCのキーボードを見たとき、英語を全く読めなかった私は、Caps LockやDeleteキーなどが得体の知れない(触ったら何が起きるか予想付かない)ボタンに見えました。まさしく機械が苦手なおじいちゃん状態です。実際はキー1回押したところでパソコンが壊れたりするわけないのにね。

PC98なんてINSやらXFERやら、知らない人が見たらますます意味が予想できないキー表記です。私の古の記憶を引き出すと、最初に触ったパソコンは学校のPC98かEPSON互換機だった気がしますが、余計な所を勝手に触るのは止めとこうということで、分からないものは迂闊に触らなかったような。

それ以前からPC慣れしていた人は、そういう抵抗はなかったんでしょうかね。


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