IBM DOS K3.3による5.25インチ640KBフロッピーディスクのサポート
日本のPC-98で使われていた3.5インチ・5.25インチ2HD (1.2MB) フォーマットが世界的に見れば特殊であることは知られているが、実はその前に使われた5.25インチ2DD (640KB / 720KB)もIBM PCでは使用されておらず、世界的に見れば特殊である。
10年くらい前、DOSで利用できるフロッピーフォーマット [PC/AT]という記事を書いた。この中で5.25インチ2DDは「IBM5550やPS/55の一部の機種で動作する日本語DOSで対応」という注釈を書いたが、この時は公式な文献を読んだわけでも実際に確かめたわけでもなく、本当に使えるのか気になっていた。
IBM PS/55日本語DOS ユーザーズ・ガイド参照編 バージョンK3.3 (N:SC18-2175-2)によれば、
ディスケットは、特に指定しない限り、ディスケット・ドライブのタイプに応じたバイト/セクターでフォーマットされます。720Kバイトのディスケット・ドライブでは、DOSバージョンK2.60未満では8セクター/トラック、バージョンK2.60以上では9セクター/トラックでフォーマットされます。
と書かれていて、2HCドライブ搭載モデルが登場する前は5.25インチ640KBが日本語DOSの標準フォーマットだったと予想できる。
DOS K3.3のFORMATコマンドの書式は以下のようになっている。
FORMAT ドライブ: [/V] [/1] [/4] [/8] [/9] [/B | /S]
/V ボリューム・ラベルを指定。
/B システム・ファイルのための空間を, フォーマットするディスク上に割り当て。
/S DOS システム・ファイルを, フォーマットするディスクにコピー。
/1 ディスケットの片面だけフォーマット。
/4 5.25インチ 高密度ドライブで 360K ディスケットをフォーマット。
/8 トラック当り 8 セクターとしてフォーマット。
/9 トラック当り 9 セクターとしてフォーマット。
/9スイッチは英語版PC DOS 3.3には存在しない。5.25インチ2HCドライブで2DDディスクを720KB(9セクター/トラック)フォーマットするために追加されたと考えられる。DOS J4.0ではこのスイッチは削除され、5.25インチのディスケット・ドライブで2DDディスクのフォーマットができなくなっている。
エミュ上で/8スイッチをつけてフォーマットしたところ、問題なくフォーマットできた。このフォーマットが指定できるのは5.25インチドライブに対してのみで、3.5インチドライブでは拒否される。
DOS K3.3のFORMATコマンドは以下のBPBを持っている。
Byt/S SC ResvS FT cDir DRVLI MD cSe/F Se/Cy Heads
2HC 00 02 01 01 00 02 E0 00 60 09 F9 07 00 0F 00 02 00
1DD-9 00 02 02 01 00 02 70 00 D0 02 F8 02 00 09 00 01 00
2DD-9 00 02 02 01 00 02 70 00 A0 05 F9 03 00 09 00 02 00
1DD-8 00 02 02 01 00 02 70 00 80 02 FA 01 00 08 00 01 00
2DD-8 00 02 02 01 00 02 70 00 00 05 FB 02 00 08 00 02 00
1D-9 00 02 01 01 00 02 40 00 68 01 FC 02 00 09 00 01 00
2D-9 00 02 02 01 00 02 70 00 D0 02 FD 02 00 09 00 02 00
1D-8 00 02 01 01 00 02 40 00 40 01 FE 01 00 08 00 01 00
2D-8 00 02 02 01 00 02 70 00 80 02 FF 01 00 08 00 02 00
1DDとはあまり聞き慣れない。5.25インチも3.5インチでも1DDのドライブは製品として存在したが、実際に使われたのは最初期の8ビットパソコンくらいだろうか。一応使えるが、1DDや1D、2DはあくまでIBM PCとの互換性のために用意されていると説明されている。ヘッドの特性上、トラック幅の違いから読み取りしか保障されない。3.5インチ2HD(1.44MB)用のBPBはこの中になく、IBMBIO .COMに入っている。