VGA端子(アナログRGB) についてメモ
○外観
・ケーブル側端子(オス)
(ソース)
・機器側端子(メス)
(ソース)
○歴史
米IBMがPC,PC/XT,PC/ATの後継として1987年4月に発売したパソコン IBM Personal System/2 model 50,60,80 に搭載された表示回路「VGA(Video Graphics Array)」の出力端子として使われたのが最初。その後マウスやキーボード接続端子とともにVGA端子も互換機で使われるようになります。
1999年にDVI、2006年にDisplayPortといった後継規格が登場したほか、DVIをAV家電向けに改良したHDMIを逆にPCで採用するなど、最近のデスクトップPCのグラフィックカードではVGA端子を見かけなくなってきましたが、ノートPCの外部モニタ出力やプロジェクターなどの周辺機器では依然使われています。
"VGA"は規格の名前ではありません。広義にはIBM PS/2シリーズのグラフィックと互換性がある仕様(端子、ディスプレイ、画面解像度、ディスプレイ信号、BIOS、ハードウェアなど、場合によって参照範囲は様々。)を指します。あくまでVGAそのものはデファクトスタンダードであり、その標準化規格は存在しません。
IBM PS/2 model 50Zのマザーボード。右にある黒いチップがVGAチップ(90X8941)
(ソース)
○名称・形状・寸法
名称はDE-15、HD15、High Density D-Sub、D-Sub3列15ピン、ミニD-Sub15ピン、RGB端子、VGA端子 など。
形状や寸法の詳細はオムロン、Astron、FOXCONNのサイトにデータシートがあるのでそちらを参照するといいでしょう。
○信号ピン割り当て(機器側)
(ソース)
現在の標準(VESA E-DDC) | オリジナル(IBM PS/2) | |
Pin 1 | Red | Red |
Pin 2 | Green | Green |
Pin 3 | Blue | Blue |
Pin 4 | (Reserved) | Monitor ID bit2 |
Pin 5 | GND | GND |
Pin 6 | Red GND | Red GND |
Pin 7 | Green GND | Green GND |
Pin 8 | Blue GND | Blue GND |
Pin 9 | +5V | n/c |
Pin 10 | GND | GND |
Pin 11 | (Reserved) | Monitor ID bit0 |
Pin 12 | I2C data | Monitor ID bit1 |
Pin 13 | Hsync | Hsync |
Pin 14 | Vsync | Vsync |
Pin 15 | I2C clock | Monitor ID bit3 |
電気的にはPin 1,2,3は0~+0.7V、それ以外の信号線はすべてTTLレベル(0 or +5V)で伝送されます。
I2C data、I2C clockはパソコンなどの機器とディスプレイとの間で通信を行うための信号線です。
具体的にはVESAが規格化したDDC(I2Cベースのシリアル通信)でディスプレイの型番や利用可能な画面モードなどの情報(EDID)を得ることができます。
DDCやEDIDの規格書はVESAのサイトのオーダーフォームから注文できます。とても個人で買うようなものじゃありません。
英語版WikipediaにEDIDについての説明があるのでそちらを参照するといいでしょう。
Windows上ではEDID Viewerでバイナリだけでなく詳しい情報も、Debian系OSではread-edidパッケージでバイナリのみですがEDIDを取得できます。
オリジナルのIBM PS/2では4本の信号線(Monitor ID)とさらにHsync、Vsyncを組み合わせて16ビットのディスプレイIDをディスプレイから取得できることになっています。
ここからディスプレイの種別を判断して画面解像度、モノクロ・カラーや信号タイミングなどを切り替えることができたのでしょうが、積極的に利用されることはなかったようです。
Pin 9の+5Vは、ディスプレイの電源オフ時でもEDIDが取得できるように機器側から+5V電源(50mA)を供給することになっています。
○信号タイミング概略図
見易さを優先しているためこの図は正確ではありませんが、これを使って簡単に説明します。
PixelDataはライン1行分の画素データで、水平同期信号がGNDレベルになると次の行に移ります。
CRTディスプレイで言えば電子ビームを画面左端に戻して少し下に移動させ、次のラインの描画作業に入ります。
そして垂直同期信号がGNDレベルになると電子ビームを画面最上部の左端に移動させます。
つまり次の一コマの描画作業に移るわけです。
これが高速で行われると人間の目には画面全体が点灯しているかのように見えます。
図のVSync、HSyncは解像度640x480の時の極性(H-負、V-負)で、他の解像度では極性が異なることがあります。
図中のBP、FPはそれぞれBack Porch、Front Porchの略で、この間CRTディスプレイは走査しながらも描画は行いません。
H Sync Time、H Back Porch、H Front Porchを合計した時間(オレンジの矢印)が水平同期信号の周期で、その逆数が水平同期周波数になります。
詳細なタイミングはVESAのDMT、CVT、CEA-861などの規格を参照してください。
こちらのページも参考になるでしょう。
VGA端子はCRTディスプレイで利用しやすいように設計されているため、デジタル制御の液晶ディスプレイでの表示には適していません。
うまく同期をとれないと画面の端が切れたり文字や線がにじんで見えたりします。さらに状態が悪いと画面を全く表示できなくなります。
(CRTディスプレイでもこれらの問題は起こりますが。)
これらの問題はディスプレイの電源を入れなおしたり、ディスプレイの「AUTO(自動調整)」ボタンを押して再度同期を試みることで直ることがあります。
また、RGB信号はアナログ信号であるためグラフィックカードのDAC(デジタル/アナログ変換器)の特性や、極端にいえばケーブルの質が悪いと、画面が暗くなったり発色が悪くなったりします。
○VGA端子関連の標準化規格と技術文書
VGA端子そのものについての規格というのは存在しませんが、VGA端子に直接または間接的に関係する技術文書をいくつか挙げておきます。
発行元 | タイトルまたは規格の略称 | 内容 |
IBM | IBM Personal System/2 Hardware Interface - Technical Reference Common Interfaces |
Video Graphics ArrayのI/Oポート、ビデオメモリの配置についての解説、 画面モード、信号タイミング、VGA端子のピン配列の定義 |
オーム社 | IBM PS/55 ハードウェア・インターフェース技術解説書 | 上記資料の日本語翻訳本。 |
Philips | The I2C Bus Specification | I2C(シリアル通信)の仕様書 |
VESA | E-DDC(Enhanced Display Data Channel) | I2Cを利用したEDID取得の通信プロトコル、VGA端子のピン配列の定義 |
E-EDID(Enhanced Extended Display Identification Data) | ディスプレイ固有情報のデータ構造の定義 | |
DDC/CI(Display Data Channel/Command Interface) | 機器-ディスプレイ間のデータ伝送やMCCSのためのDDCプロトコル追加定義 | |
MCCS(Monitor Command and Control Set) | 機器側からディスプレイの設定を行うためのコマンドセットの定義 | |
VSS(Video Signal Standard) | アナログRGB信号の電気的な要求定義 | |
DMT(Display Monitor Timings) | PC用ディスプレイの画面モード、信号タイミングの定義 | |
CVT(Coordinated Video Timings) | RGB信号、同期信号のタイミング公式の定義 | |
CEA | CEA861 (A DTV Profile for Uncompressed - High Speed Digital Interfaces) |
AV関連のインターフェイスのための画面モードやEDID拡張ブロックの定義 |
○関連
- PCディスプレイの信号タイミング基準
https://diarywind.com/blog/e/g13_147_pc_1.html - PCディスプレイ出力端子のピン割り当て [IBM互換機]
https://diarywind.com/blog/e/g13_162_pc_ibm.html