210921 じんるいのみなさまへ (PS4) [2]DLCが本編で本編がトゥルーエンド?
PS4用ADVソフト『じんるいのみなさまへ』(制作:アクワイア、発売:日本一ソフトウェア、2019年発売)をプレイ。
色々文句垂れながら、なんやかんやDLC入れて2周目の最後までプレイした。
ゲームプレイ
このゲームは目的地探索ゲーだ。ストーリーイベントを進めるには3Dマップ上に黄色く表示されるポイントへ移動する必要があるのだが、これが透過していて微妙に見づらい。クソみたいな被写界深度で景色の見通しが悪いし、ストーリーイベントの目的地が全て同じマーカーで表示されているならまだしも、定位置のアイテム収集ポイントで新たなイベントが発生することもあるので、探すのが余計に大変。散々探し回ったあげく、一度通ったはずの場所にマーカーが表示されていることもある。最初は自分の見逃しかと思っていたが、そういうことが何度もあると、どうも見逃しには思えない。イベントの発生順序だけでなく、探索回数や移動距離、時間経過の条件があるのだろうか。そもそも、マップでピンポイントに目的地を表示してくれれば大方解決する話なのだが。
目的地探索の問題が解決しても、ゲームプレイの大半を同じ場所の往復に時間を割かれる。ダッシュで使うR1ボタンが酷使され、人差し指で押し続けるのが疲れてくる。自転車が欲しい。収集活動の効率化のためにも、まずは自転車を作るべきだろう。車は直すのも走らせるのも難しいだろうが、自転車ならいくつでも走れるものあるだろう。
本来サバイバルゲームの構想があったのだろうが、このストレスフルな仕様の場当たりな対応か分からないが、自足自給生活はやってもやらなくてもゲームの進行に影響ないものとなっている。
シナリオ
内容には深く触れないが、本作がコロナ禍に陥るわずか半年前に発売されたことに不思議な因縁を感じる。我々はここまで楽観的にいられないだろうが…
シナリオはさすがラノベ作家が書いているのか、ゲーム説明から期待できるとおりには良かった。ただ、1周目の本編をプレイしただけだとふわっとして終わるので、カジュアルゲーマーでなければストーリーに納得できない人が多いだろう。1周目で回収されていない伏線や「思いつきでそんな道具作れるはずないだろう」という発明は、実はDLCを入れて2周目をプレイすることで解明される。そもそもこのDLCを入れた状態が完全シナリオとも言えるが、キャラクターバランスとしては作品のゆるゆるなサバイバル生活というコンセプトから遠ざかるので、2周目の真相編として作られたのかもしれない。だが、こんな重要なストーリーを本編から省いてDLCありきの作品にしてしまったのは色々損している。あるいは最初から何か意図してDLCありきの作品に仕立て上げたかもしれないが、どちらにせよこのゲームの出来では、2周目の最後までにアドベンチャーパートでどれほどのプレイヤーがふるい落とされることか。
コンセプトやキャラクターから察し付くとおり、ガチではないが百合っぽい展開はある。その需要層に配慮してか分からんが、作中に男性や男性を直接想起させる要素がほとんど登場しない。ロッカーにあるノートも明らかに女性が書いたものは分かるがその逆はない。性別の判断が付かないものは幾つかある。一応、日記をノートに残すのは女性が多いだろうことは作中で弁明されている。
ロッカーにあるノートの大半はかつてそこにいた人類の感情を書いたもので、読めばその時の時代背景などが何となく見えてくる程度のものだが、DLCを入れているならNo.46, 50, 51, 57, 58, 59, 60は読んだ方が良い。同人ショップの品揃えやホテルに備えられている時代錯誤な石炭ボイラーの謎はそこで明かされている。ロッカーは開けた時点で開放した記録がゲーム共通のセーブデータに残るので、100円コインを数枚用意しておいてロッカーを開けたらコイン使用前の時点にロードし直せばいい。取れるか確証もないコインを60枚探すより断然早い。
DLC追加キャラ:スハーヤ朱香
1周目プレイ時、ある場面で6人目のキャラクターの存在が匂わされるが、睡眠から目覚めさせる方法が分からないまま主人公たちはその存在を忘れ、以後ストーリーに全く登場しない。実はこのゲームソフト唯一の有料DLC「朱香Сухая」を入れることで、2周目の同じ場面で仲間入りすることになるのだが、ゲーム中に何もアナウンスがないのにそんなの気付くだろうか。ネットで調べればすぐ分かることではあるが、Amazonのレビューを見るにDLCを知らない人は多そうだ。
そしてこのDLC、2周目の要所要所での小さな変化に始まり、後半から変化が大きくなり、第8章以降は1周目と違った展開を迎える。1周目のストーリーでは京椛は主人公でありながらも活躍の場やピックアップに乏しかったが、この2周目のストーリーの中で京椛は中心的な立ち位置になる。
1周目も2周目(DLC)も過去の出来事より未来を見据えて前に進んでいこうというメッセージは同じだが、主人公らの取り組み方に違いを見ることができる。特にエンディングでその違いが端的に表れている。1周目では過去や未来への不安を感じながらもひたむきに前へ進み、寄せ集めの資材で船を作り上げ、行き先の見えない旅立ちに期待と希望を抱いている。2周目では現実を見据えた末で課題と目標を掲げ、それに向かって取り組んでいる。
謎がきれいさっぱり解決するのは2周目なのだが、2周目を見た後でも私は1周目が本来意図したとおりのシナリオだと思っている。まあタイトルが既に物語っているが。もし2周目がDLCでなかったら、2周目を本編として1周目をトゥルーエンドにするのもありだろう。ただ、1周目はトゥルーエンドにするにはやや強引な部分があって頼りないし、5人組の中で京椛が浮いてしまってイマイチ。この点さえ工夫して改善すれば、どちらの構成にしてもシナリオでもっと高評価を得られただろうに。
私は百合要素に特に思い入れはないが、それを抜きにしても、人為的に作られた信頼関係が本物に変わっていくシナリオは良かった。(2021/09/22完了、No.94)
10月発売の新作「こちら、母なる星より」
本作のDLCで追加されるノートから、アキバ以外にも日本だけで20若干名が何箇所かに分散し、同じ境遇のグループがいるであろう事が分かる。新作は同じ世界観を共有していると思われ、今度は池袋が舞台になっている。こちらは「テキストアドベンチャー」と明言されており、公式サイトのシステムを見ると3Dマップではなく選択式になっているように読める。
どんなメッセージ性があるか何とも予想できない。キャラクターのカップリングが明記されていることから百合の要素は本作よりも前面に出ている。本作は何だかんだ、読み物としては面白かったから、気になっている。