キーボードの黄ばみ取り(ABS樹脂の漂白) 実施記録(2009年)
ABS樹脂(プラスチック)の漂白について話題に上がったので、キーボードの黄ばみ取り(Retr0Brite/レトロブライトと言うらしい方法)について私の経験を書いてみます。と言っても6年前に実施したときの話です。今は特にリストアの対象になるものがないのでやっていません。
当時、中古で入手した98のキーボードが真っ黄色だったので、何とかならないかとウェブを探っていたところ、こちらの方のページに出遭い、ここに記載されている通りに実施しました。
→ 古いプラスチックの黄変を戻すRetr0brite 実践 - かもめ~る通信
このページには黄変についての原理も書かれています。プラスチック(ABS)に含まれる難燃材(ブタン)が酸化することによって黄ばんで見えるようになる。それを過酸化水素を使って酸化した難燃材(ブタン)から余分な酸素を除去すると、元の白さを復元できるようです。黄変は日に当たっていると早いペースで進行しますが、化粧箱未開封品でも年数が経っている物は黄色い状態で出てくることがあるので、空気に触れているだけで進むものなのかもしれません。
過酸化水素あるいは過酸化水素水を入手するのは容易ではないので、代わりにこれが多く含まれていて手軽に入手しやすいワイドハイターEX(商品名)を漂白液として使うことにします。
手順の要点は次の通りです。
- 漂白対象の部品の表面を綺麗に掃除します
- 密閉可能な容器に部品を入れます。
- 漂白面にキッチンペーパーを当てると液で蒸らすことができるので、効果が上がるようです。特にキートップの場合は上面だけが黄色くなっていることが多いので、漂白した時に全体を見ても違和感ない仕上がりになります。
- 漂白液を入れます。部品を液に完全に浸ける必要はなく、数日おいてもペーパーが乾燥しない程度であれば十分です。
- 容器を密閉し、日光が長く当たるところに3日~1週間(冬場は2週間)ほど置きます。
密閉容器はジッパーでは不十分で、隙間からどんどん液が漏れていきます。容器の下にキッチンペーパーや白い布などを敷いておくと良いでしょう。日光がないと漂白は全然進みません。晴れ日が続きそうな時期を選んでなるべく短期間で済むようにします。あまり長い間漂白液に浸けると、キートップ上部の黄ばみを残したまま部品全体の色が抜けていって、元の色からかけ離れてしまいますし黄ばみも残っていて不格好になります。印字も白くなってしまいます。
実施結果とその経過
いずれも2009年12月から翌年1月頃の実施です。天気は良い日が続いたものの、日の当たる時間は長くなく、時期も設置場所もあまり良くありません。
PC-9801Rキーボード
最終的には、最もうまくいった例です。次の写真は元の姿。工場で使われていたのか、真っ黒い汚れがこびりついています。
キートップを全て外したところ。この後石けんを溶かしたぬるま湯に浸けて丸洗いしました。
フレームも黄色、というか茶色に近いです。
合う容器が見つからなかったため透明のビニル袋に詰めました。口の隙間から液が漏れてくるのでお勧めしません。キーボードのフレームは45Lの透明なゴミ袋に入れていたと思います。
12日後の写真がこちらです。床が白くないのでカメラのせいかもしれませんが、漂白されていることは確かです。2週間を超えるとキートップの印字がいよいよ白くなってくるので、もう取り出していい頃合いでしょう。クリップは液に浸かって錆び錆びですw
漂白直後の写真はありませんでした。こちらは3年後くらいの写真です。
vfキーの透明カバーが少し黄ばんでいるのが分かります。その違いが分かる程度に、キートップもフレームも良い感じに仕上がっています。ただ、写真ではわかりにくいのですが、パームレスト側に少し黄色が残ってしまっているのが惜しいところです。
こちらは最近の写真です。パームレスト側の黄ばみは相変わらずですが、キートップの白さも維持できています。
PC98 RDFキーボード
漂白前。こちらは汚れはあまりありませんでしたが、色はほぼ茶色と言って良い状態でした。
漂白直後。全体の写真はありませんでしたが、Rキーボード以上に良い仕上がりだったと記憶しています。
3年後くらい?ちょっとまた黄ばんできたなあ、と思いながら写真を撮っていた気がします。
最近の写真。キートップが徐々に黄色くなってきました。漂白前に比べれば随分マシですが、これが茶色に近づいていくのも時間の問題かもしれません。なぜRキーボードとこのような差が生じてきたのか、わかっていません。
PC-8801mkIIFR ベゼル
漂白中の様子。
こちらはおそらく2年後の写真。RDFキーボードよりも早いペースで黄変が進んでいったと記憶しています。現在モノは処分してしまったのでありません。
失敗例
太陽光に当てずに漂白液に1週間ほど浸けてみました。日光に当てた場合と比べて漂白の進行は明らかに鈍く、キートップの色抜けや印字が薄くなっていたので、中断しました。
こちらは見た目が酷くなった例です。もともとの色がグレーで、Retr0brightを実施した結果不自然に白くなってしまいました。しかも色むらが出ています。大失敗の一例です。
今はよりよい案、工夫方法が上がっているかと思いますので、そちらを参照してもらった方が良いと思います。さすがに5年越しで経過を書いている記事は無さそうですが。こういう実験結果がありましたというお話でした。