Image: IBM PS/55 ディスプレイ・アダプターⅡについて

今週はPCについて色んな目論見を立てていたのですが、やってみると思った通りには上手くいかず。まあ、こんなことはしょっちゅうあります。おまけに体調も外の天候とかみ合わず、遠出は厳しい。暇になってしまったので、PS/55について調べたことをメモしておきます。

以下、IBM PS/55独自の日本語表示機能、ディスプレイ・アダプターについて。

概要

PS/55は米IBMから発売されたPS/2の日本語対応モデル。これが基本理念です。PS/2互換の英語モードの表示にVGA、PS/55独自の日本語モードの表示にディスプレイ・アダプターという二重の表示システムを搭載し、モードに応じて排他的に使用します。ディスプレイ・アダプターという名称は資料によっては「表示装置アダプター」「日本語ディスプレイ・アダプター」「Display Adapter」などと呼ばれますが、ここの説明文では「ディスプレイ・アダプター」で統一します。

表示モード

よくPS/55の特徴として「1024x768ドットの画面解像度で24ドットフォント表示」と挙げられますが、これは正確ではありません。FMR-70やPC-98のハイレゾで採用された1120x750ドットはテキスト画面とグラフィック画面が同じ解像度ですが、PS/55のテキスト画面はグラフィック画面との重ね表示ができない上に、そもそも画面モードと信号タイミングが異なります。

ディスプレイ・アダプターⅡ型には以下の画面モードがあります。

モード 画面タイプ 画面サイズ
0x08 モノクロテキスト 80桁x25行
0x0A モノクログラフィック 1024x768ドット
0x0E カラーテキスト 80桁x25行
0x0D 16色グラフィック 1024x768ドット
0x0F 256色グラフィック 1024x768ドット

肝心なテキストモードは表示文字数で定義されていて、画面解像度については特に規定されていません。全角フォントは空白やカーソル表示の領域を含むと横26x縦29ドットのフェイスで表示されるので、文字数を掛け合わせると計算上は1040x725ドットということになります。0x0F以外の画面モードは5550のディスプレイ・アダプターと互換性があるようです。5550の仕様に合わせるなら82桁x25行なので1066x725ドットになりますが、PS/55の技術解説書では80桁x25行という記述しかありません。

Image: MIFES for PS/55

実際にテキスト画面を表示させてみましたが、やはりPS/55では80桁x25行のようです。

256色表示はPS/55の一部モデルではオプション(表示装置記憶拡張キットを取り付けると対応)になっています。5550-S/Tでは全モデルでVRAM 1MBのフル実装です。262144色中256色表示と言う数字は、DACのパレットレジスタにおいてパレット1色に対して6x3(RGB)=18ビットが割り当てられていて、それがVRAM上の1ビットx8プレーンに対応するためです。

ディスプレイ・アダプターの種類

PS/55 MCA機前期モデルに搭載されたものとしては少なくとも次の種類が存在します。後期モデルはDA-B2とかDA-Jになるようですが、関わりが無いので解説は他の人に任せます。

製品名 P/N E/C 搭載モデル EC番号→代替部品
DISPLAY ADAPTER 94X0968 ? 5570S ECC13008→38F4650
DISPLAY ADAPTER II 79F0114 C13008A-C13008C 5570S ECC64642H→C13008F
DISPLAY ADAPTER III 79F0116 C13008A-C13008E 5570S ECC64642H→C13008F
DISPLAY ADAPTER III 79F0116 C13008F 5570S  
DISPLAY ADAPTER II 94X1649 341648A-341648E 5550S/T/V,5570T/V ECC64642E→C27285C
DISPLAY ADAPTER II 38F4650 341964A-341964C 5550S/T/V,5570T/V ECC64642E→C27285C
DISPLAY ADAPTER III 64F8907 C27285A-C27285B 5550S/T/V,5570T/V ECC64642E→C27285C
DISPLAY ADAPTER III 64F8907 C27285C 5550S/T/V,5570T/V  
DISPLAY ADAPTER IV 38F7016 C13500A-C13500B 5530S/T ECC64642G→C13500C
DISPLAY ADAPTER IV 38F7016 C13500C 5530S/T  
DISPLAY ADAPTER V 56F7520 ? 5550S/T/V,5570T/V  

それぞれの特徴について説明します。

DISPLAY ADAPTER(初代)

PS/55 MCA初代機にあたる5571-S0Aに搭載。このモデルは発表当時、シリーズ唯一のMCA機にして、システム最小構成223万円!半年遅れの出荷開始であったことに加え、肝心のOS/2は翌年に発売。売れないであろうことは誰の目にも明らかでした。

このモデルだけ英語版のDOS(およびDOS/V)やOS/2がサポートされていません。その点から推測するに、VGAとDAとの切り替えに何か問題があったか、そもそもVGAが搭載されていなかったのか。このDAではDOS J4.0およびOS/2 J1.1以降がサポートされていないため、1989年6月にEC(Engineering Change)対象としてDA-2(P/N 38F4650)への交換サービスが実施されました。DA-2への交換後に英語OSに対応していたかどうかは不明です。

DISPLAY ADAPTER Ⅱ/Ⅲ

PS/55 MCAモデル2代目の5550-S/T/V等に搭載。アダプターを外さなくても、ソフトウェアからの日本語表示(PS/55 DA)⇔英語表示(PS/2 VGA)との相互切り替えに対応しました。また、新たに256色モードが追加されました。この表示モードはDOS K3.4以降およびOS/2 J1.2以降でサポートされています。これより後の「DISPLAY ADAPTER」は全てこれと同じ機能を持っています。

ボードにはカスタムLSIが6個とフォントROM、BT453KPJ-66というDACが載っています。VRAMは1MB。ドーターボードを取り付けるコネクターっぽいものが付いていますが、用途は分かりません。当時の開発者のインタビュー記事で、PS/2とのソフトウェア互換性を持たせるために論理設計に非常に苦労した、ようなことが書かれていました。

DA-2/3間の違いについて正確なことは分かりません。基板の部品が結構入れ替わっているので、動作安定性の向上か、あるいは米国輸出モデル(5551-SU9など)のUL/FCC認証対策か。DA-2/3/4についてはBitBlt機能にグラフィックデータが破損する不具合があり、1991年4月にEC対象として不具合修正済み品への交換が実施されました。

Image: PS/55 Display Adapter III

DISPLAY ADAPTER Ⅳ

個人ユーザーを対象に投入されたPS/55Zモデル5530に搭載されていたDA。VRAMが512KBに削減され、256色グラフィックモードが削除されています。オプションの表示装置記憶拡張キット(P/N 38F7075)でVRAMを増設することでサポートされます。VGAがアダプター側に実装されていることも特徴です。

DISPLAY ADAPTER Ⅴ

現物を見ていないので詳しくは分かりません。5551-S1x/T1x/V1xなどに搭載され、同時発表の低価格ディスプレイ 8515-A01、5574-C05カラー表示装置に対応しているようです。外観はディスプレイ・アダプターⅢとほとんど同じのようです。実際、DA-3にはDA-2にはなかった2個のOSCが追加されているので、機能的にも同等なのかもしれません。

DISPLAY ADAPTER-J/DBCS

5530-L0Cなどに搭載。同時発表の「PS/2日本語サポート機構」によって、米国英語仕様のPS/2でもPS/55同様の日本語表示が可能になったようです。

DISPLAY ADAPTER-J/NI

画面出力がノンインターレース表示になり、PS/V、PCシリーズ用のディスプレイが使えるようになりました。

ディスプレイ端子 信号ピン割り当て

次のページを参照。

PS/55 モデル5550-S/T/V 各種ピン割り当て - Diary on wind

信号タイミング

DA-J/NI以外の出力はインターレース信号なので最近のほとんどの液晶ディスプレイでは表示NG。業務用モデルに表示できるものがあるかもしれないが、数十万円の世界はよくわからん。

解像度 H Freq V Freq ピクセルクロック H極性 V極性 画面モード
1024x768i 46.08kHz 116.2Hz 58.000MHz PS/55 テキストモード
1024x768i 46.51kHz 114.9Hz 58.000MHz PS/55 グラフィックモード

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